お寺だからこそできる支援とは。迷ったときは仏さまの願いに立ち返る

特定非営利活動法人おてらおやつクラブ。お寺に供されるおそなえを子どもの成長を支援する各地の団体を通し、経済的困難のなかにある家庭におすそわけする。この、お寺の「ある」と、社会の「ない」をつなぎ、子どもの貧困問題解決に向けて活動に取り組む代表の松島さんにお話をうかがっています。

特定非営利活動法人おてらおやつクラブ。お寺に供されるおそなえを子どもの成長を支援する各地の団体を通し、経済的困難のなかにある家庭におすそわけする。この、お寺の「ある」と、社会の「ない」をつなぎ、子どもの貧困問題解決に向けて活動に取り組む代表の松島さんにお話をうかがっています。
 
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第1回 お寺の「ある」と社会の「ない」を繋ぐ。子どもの貧困問題に取り組む、おてらおやつクラブの活動
 
おてらおやつクラブの様子
困っていても、地域の支援団体や相談窓口へ行けない理由を知っていますか?
 
ーー先日、私たちは安養寺さん(松島さんが住職をつとめるお寺)で、おさがりの発送会に参加させていただきました。そのときはダンボールに詰めたおさがりを、直接各ご家庭に発送していたようでしたが、支援団体を通さず直接ご家庭にお送りすることもあるんですか?
 
おてらおやつクラブ代表、松島靖朗さん(以下:松島):はい。私たちの基本的な活動は、地域のお寺と地域の支援団体をつなげることです。その団体さんの先に、支援を必要とするご家庭があり、子どもたちがいるという構造ですね。この仕組みを全国のいろんな地域で確立していこうとしています。
 
けれど、私たちの活動が知られるようになるにつれて、支援団体さんとつながりを持たない親御さんが直接問い合わせてこられることが増えてきました。内容はシンプルで、「うちの子どもにもおやつをおすそわけしてもらえませんか?」というものです。続いて、みなさんが抱えているさまざま事情を書いてくださっています。
 
このような問い合わせを受けて、私たちは最初、その地域の支援団体さんを紹介する対応を取っていました。「まずは最寄りの支援団体さんとつながってください。そのうえでおすそ分けを受け取ってください」と。けれど、問い合わせをくださる親御さんに話を聞いているうちに、そのやり方では通用しない事情があるとわかってきました。
 
紹介した支援団体には、子どもさんの同級生のお母さんがいて、ちょっと行けないです……と。支援団体があるのも知っているし、行政の窓口があるのも知っているけど、行けないんですという場合がほとんどだったんです。
 
ーーそれはなかなか行けないですね。
 
仏さまがいらっしゃってこその活動。僧侶の社会活動
 
松島:こういったご家庭に直接支援をするという決断までには、事務局内でもたくさん議論をしました。私たちの役割は、支援団体の後方支援や、各地のお寺と支援団体との橋渡しだったのに、そういう立場を飛び越えていくことは妥当なのか、責任を果たせるのか、またきちんと継続することができるのか……。
 
けれど、それでもやろうと判断した根拠は阿弥陀さまです。誰一人として取り残さないという誓いをたてられた阿弥陀さまのみ教えをよりどころとする私たちが、支援を求めてきた方を取り残すようなことをしてはいけない、と考えたんです。
 
この決断をしたころから、私たちは「仏助」という言葉を使うようになりました。公助、自助、共助なんて言葉がありますが、私たちは仏助だと。
 
お寺だからこそできる活動ってなんだろうってことを考えると、当たり前ですが最終的には仏さまの願いにつながっていくんですよね。大切な決定や、活動指針のよりどころはそこだし、仏さまの存在があってこそ続けられている活動だということが改めて共有できた出来事でした。現在は約870世帯に直接支援を行なっています。
 
ーー発送会では、それぞれのダンボールにお手紙も添えられていましたね。
 
松島:はい。継続してお送りしているご家庭なので、「お身体に気をつけて過ごしてくださいね」など、その都度メッセージを添えています。それぞれのケースを見ながら手探りでやっていますね。継続的な支援は大切ですが、やはり最終的にはそれぞれの課題を解決する方法を持った行政や支援団体とつながってもらうことが必要です。各ご家庭が抱える課題を解決するまで伴走させていただくということが大事ですね。
 
ずっとお送りしていたご家庭でも、お母さんに安定したお仕事が見つかったとか、資格が取れて仕事が見つかったから今後は他のお家に送ってあげてくださいと言われる方も少しずつ出てきています。
 
ーー「仏さまの存在があってこその活動」という言葉についてもう少しお聞きしたいです。僧侶やお寺の宗教活動と社会活動をどうバランスを取るべきかという議論がよくされますが、松島さんのお話をうかがっていると、そこはもう一体化しているのだなと感じます。
 
松島:はい、本当によく言われますけれど、そこは一緒ですね。私たちの活動でおろそかにしてはいけないことはたくさんあるけど、なにより「お布施、おそなえものを受け取るに足る存在でありつづけなければならない」ということはよく言っています。おそなえがなくなったら、この活動を続けられませんからね。
 
活動内容で大切なことや、気をつけることはたくさんあるけれど、一番はお坊さんとしてのお勤めをきちんと果たすことです。浄土宗で言えば、掃除、勤行、学問、この3つをしっかりとやっていく。その積み重ねの先に、活動の未来もあると思っています。
 
ーー僧侶としての基本をおろそかにしないこと、仏さまの願いを心に据えて活動すること。その先に社会問題の解決への道筋がある。それらを繰り返し確認しあいながら活動を続けてこられたんですね。

 

おやつが詰まったダンボールと共に、おやつを詰めた担当者がメッセージを添える。

 

NPO法人になって見えた希望と、行政の支援から漏れ落ちるもの
 
ーー2年前には、おてらおやつクラブをNPO法人として登録されていますが、「お寺さんの活動」が「NPO法人の活動」へと肩書きが変化したことで、社会との繋がり方に変化はありましたか?
 
松島:まず、NPO法人にしたきっかけは、私が入院してしまったことでした。私がいなくなっても活動が止まらないようにしておかないといけないと思ったことがNPO法人になった理由のひとつです。
 
もうひとつは、活動に賛同してくださる方のお金での寄付や応援が増えてきたので、きちんとした受け皿を用意する義務があると考えたこと。
 
あとは、「お寺さんの活動」から「NPO法人の活動」という肩書きになることで、いろんな企業さんや行政とも話がしやすくなるというメリットも考慮しました。
 

ーーNPO法人になると、行政や企業との関わり方はやはり違いますか?
 
松島:違います。NPO法人になってからは、自治体での講演依頼が増えたり、行政と共催の企画もできるようにもなりました。
 
あとは社会福祉協議会さんや、行政の母子一時避難のシェルターなど、あまり知られていない支援先を共有していただいたり。
 
前回、子どもの貧困は見えにくいというお話をしましたが、この貧困家庭を最も把握しているのって実は行政なんです。生活保護や児童扶養手当を支給したり、控除の提供をするにあたって、必要な情報なので。
 
いま、一部試験的に行なっているのは、そういった家庭に行政から案内を送るときに、おてらおやつクラブの資料も同封してもらったり、市役所の窓口におてらおやつクラブのカードを置いてもらう取り組みです。それをきっかけにつながりが得られた例もあります。
 
ーーなるほど。行政とのつながりが持てることの効果は大きそうですね。
 
松島:ただ、行政が把握しているのはあくまで情報であって、実態は把握されていません。どこか貧困家庭かは把握していても、どれくらいの困窮度で、なぜそういうことが起こっているのかは知らない。だから、私たちが中間に立って機能していければというのは思っています。
 
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支援の方法はさまざまです
・お金をおくる
・古本をおくる(古本勧進)
・おやつをおくる
・お寺・周りの方に広める
・ふるさと納税の返礼品をおてらおやつクラブ宛てにする
 
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第3回 それは本当に求められているお寺の姿か?本質は今までと変わらず、泥臭く続けていくこと

掲載日: 2020.11.11