わたしに「ある」ものを知る。わたしに「ない」ものを知る。

特定非営利活動法人おてらおやつクラブ。お寺に供されるおそなえを子どもの成長を支援する各地の団体を通し、経済的困難のなかにある家庭におすそわけする。この、お寺の「ある」と、社会の「ない」をつなぎ、子どもの貧困問題解決に向けて活動に取り組む代表の松島さんにお話をうかがっています。
 
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第1回 お寺の「ある」と社会の「ない」を繋ぐ。子どもの貧困問題に取り組む、おてらおやつクラブの活動
 

慢心が生まれたら、たちまち自己中心的な活動になる。ミスも生まれる
 
ーーおてらおやつクラブの活動のなかでの共通認識として、特に意識していることはありますか?
 
おてらおやつクラブ代表、松島靖朗さん(以下:松島):お寺もおてらおやつクラブも一緒ですが、嘘を言わない。わからんことをわからんと言える人でいたいですよね。結局、私たちは貧困問題の専門家ではありません。大したことはできないし、私たちだけで成立する活動でもありません。専門的に研究・活動されている人があってこそです。
 
その事実を見落として、ある種の慢心が生まれてしまったら、もうただ単に現場をかき乱しているだけの自己中心的な活動になってしまいます。
 
そういう失敗もたくさんしましたよ。おすそわけを届けて良い気分になっていたけど、実は賞味期限が切れていたとかね。だから、目の前にあるものを届けてそれで完結みたいに思ってはいけない。
 
ーー先日の発送会でもかなり入念に賞味期限をチェックされていましたね。
 
松島:そうですね。でも、その賞味期限という流通の仕組みのなかで決められただけの数字を絶対的な基準にするのはどうなんだろうという気持ちもあります。実際、賞味期限が過ぎても食べられるものって多いじゃないですか。本当は食べられるものを排除してしまうのもどうかと思うし。
 
でも、どこかでルールを決めておかないと、全国で同じ活動をしていくことはできないので。それが絶対正しいとは限らない、といつも思いつつ、今は2週間以上賞味期限があるものだけをおすそわけとしてお送りするルールを徹底しています。
 
ーー送る側と受け取る側で同意ができていれば問題ないことですからね。
 
松島:フードロスの問題はまさにそこで起きているわけですしね。
 
ーー社会で常識とされていることを疑ったり、問い直すことが、いまある課題の解決につながっていくような気もしますね。賞味期限以外に、答えの出ない問いというか、課題だと感じておられることはありますか?
 
松島:意識を変えられたのは、アレルギーに関する問題でした。私たちはお送りする食品に含まれるもののなかに、アレルギーがあるものがないかを親御さんにチェックしてもらうようお願いしています。
 
最初は、この段取りになんの疑問も持っていませんでした。けれど、あるお母さんが自分の子どもにどんなアレルギーがあるかわからない、とおっしゃったんです。これはかなり反省しました。そもそも食べることに困っているんだから、何にアレルギーがあるかなんて知らなくて当たり前なんですよね。
 
私たちは当然のようにアレルギーチェックをお願いして、そこを守ってもらわないとこちらは責任取れません、みたいなスタンスだった。想像力の欠如です。
 
現段階ではそこに私たちができる対策というのはなくて、ただただ専門家との連携が重要になってくるのだと再認識するばかりでした。ただ、現場の深刻さはそういうレベルなんだということを、きちんと前提に置かなくてはいけないと教えられた出来事です。
 
ーーできるだけ正確に現状を認識するからこそ、誰かを傷つけないための想像力も働きますしね。
 

それぞれの地域で広がるつながり
 
松島:最近は、地方のローカル新聞から、その地域の登録寺院を紹介してほしいという問い合わせをよくいただきます。
 
だいたいの場合、おてらおやつクラブの活動の紹介は2〜3行くらいなもので、そのあとは地域に貧困問題があることや、実際に活動に取り組む地域のお寺のことなどについて詳しく書いた良い記事が、できあがるんです。それが地方紙だと一面に載ることが多い。そうすると、記事を読んだ地域の方々から、応援したいっていうお申し出があったりするんです。そういう流れができつつあるのはとても嬉しいことです。
 
ーーひとつのお寺だけで活動するのではなくて、各地の寺院がつながっていくことで見えてくるものもあるんですね。
 
松島:なかには、こういう活動を大々的にすることに否定的な方もおられます。確かに「陰徳」という「そういうことは黙ってするもんや」という考え方は仏教においても、日本の文化としても尊ばれてきました。しかし、こっそりやるだけでは解決しないこともあります。やはり社会問題を解決するには、多くの人に知ってもらい、一人ひとりの行動を喚起していくことが大切ですから。
 

支援する側からの景色、される側からの景色。それぞれの「ある」を持ち寄って
 
ーー地域とのつながりに関連して、災害時の対応についてお聞きしたいと思います。実際におてらおやつクラブのネットワークを生かした災害対応のご経験があるとか。
 
松島:日々の備えがあって、それを発送する仕組みにも慣れているという点で、災害時には比較的早く動けるとは思います。いつもと同じ作業で、送り先が被災地になるだけなので。物流がまわっていれば、すぐに活動できます。
 
実際に台風15号(令和元年房総半島台風)、19号(令和元年東日本台風)のときには、いろんなことができました。体制が整っているかといえばまだまだですが、災害時に担っていける役割があるとは思っています。
 
ーー各地に登録寺院があるからこそ、被災地にも被災地以外にも拠点がある。それは強みですね。実際にはどのような対応をされたのですか?
 
松島:まず被災地のお寺に状況を確認して、かなり大変なことになっているとわかった。その時点で被災地以外のお寺からも「なにかできることはありますか」と問い合わせが届いていたので、そのお寺同士をマッチングして支援物資を送ってもらいました。こうして離れた土地、異なる宗派のお寺同士のつながりができていきました。
 
被災したお寺の方は、普段はおすそわけを送る側として参加していたけど、ひとつの台風によって突然支援される側になったわけです。けれど「立場が変わっても支えてくれる方がいる、支え合うってそういうことですよね」と被災されたお寺さんが話してくださいました。
 
ーー私たちは、どうしても支援する側とされる側、分けて考えてしまいがちですね。
 
松島:実は、おてらおやつクラブの活動でおすそわけを受け取った子どもたちが、お寺の掃除をしたいですって言いにきてくれることも自然と起きたりするんです。そういう意味では、それぞれの「ある」を持ち寄って、自分にできることを相手にすることで、なにか想定していなかった関わりが生まれてくるのかもしれないですね。
 

<編集後記>

 
お寺の「ある」と社会の「ない」をつなぐ活動、おてらおやつクラブ。新しくて古い、その活動の真ん中には、仏さまのみ教えが太い幹のように伸びている。幹がしっかりしているからこそ、そこから生える枝葉もしなやかで色濃いものになるのだろう、何度もそう感じたインタビューでした。
 
お寺にあって、社会にないものについて、松島さんはこんなことも話してくれました。
 
「おさがりもそうだし、仏法もそうですよね。いま社会には仏法があまりない。けれど、お寺にはちゃんとあります」
 
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掲載日: 2020.11.18