「四方八方、十方丸く」JIPPO_第1回

四方八方、十方丸く

NPO法人JIPPOの支え合い

 

【第1回】
 
「平和構築」、「貧困問題」と「環境問題」の解決、「災害支援・復興」の目的完遂、これらに向けて各種事業活動を展開しているNPO法人JIPPOは、「すべての存在と営みは互いに関係しあい支えあっている」という仏教の縁起の教えにのっとり、親鸞聖人の「世のなか安穏なれ」という願いのもと、浄土真宗本願寺派の社会事業活動の一環として、2008年に設立されました。
 
同法人の専務理事の中村尚司氏は、日本有数のアジア研究者でもあり、社会問題にも取り組む活動家でもあります。アジアの社会問題やJIPPOの活動について教えを請います。
 
このコンテンツの記念すべき冒頭テーマは、適正価格での輸入、商品提供をするフェアトレード事業を実施しているスリランカを巡る話です。5回に渡って紹介します。
 
スリランカの概要
 
JIPPO画像①
人口 2033万人(2012年)面積 65,610㎢
※人口、国土とも日本の約6分の1。面積は北海道よりも小さくて、九州と四国を合わせたよりも大きい。
 
 

「世界の中村尚司」

 
インタビュアー(以下、イ):中村先生、本日は宜しくお願いします。かねてより、先生の噂は聞いておりまして、一度お話を聞かせていただきたい、学びたいと思っておりました。
 
中村尚司(以下、中):どんな噂?(笑)
 
イ:スリランカ政府軍用機で反政府軍の本拠地に行ったとか、和平交渉の準備をしたとか、日本では数名しかもらっていない賞を受賞されたとか。そんな方が浄土真宗本願寺派(以下、宗門)の社会活動に関わっているなんて、信じられないんですけど…本当なんですか?
 
中:あはは。嘘じゃない。(笑)26年間に7万人以上の犠牲者をだし、2009年に終結宣言がされたスリランカの内戦をおさめたっていうのは言い過ぎで、シンハラ人とタミル人の和平を斡旋したというぐらいかな。
 
イ:スケールが大き過ぎます。あと、外国の大学でも教鞭をふるった経験をお持ちだと聞きました。
 
中:スリランカのコロンボ大学、南アフリカ共和国のステレンボシュ大学、メキシコのコレヒオ・デ・メヒコ大学などで講義をしました。それと、キューバ共産党に招かれて、ハバナのアジア・オセアニア研究所でも集中講義を行いました。
 
イ:そんなに多くの大学で!!
 
中:期待を超えられて、よかったです。(笑)
 
イ:日本有数の社会活動家である中村先生と、公益法人である宗門との奇跡的なコラボレーションがJIPPOなんですね。
 
中:そう言われると奇跡的なものかもね。たまたま色々なタイミングが重なって起こった活動だね。
 
イ:そもそも先生はJIPPOに関わる前は何をされていたんですか?
 
中:京都大学を卒業して、最初は通産省の研究所に勤めて、南アジアの経済調査を担当しました。その後、スリランカに留学して、龍谷大学経済学部に勤めるようになりました。そして、JIPPOを立ち上げました。
 
イ:龍谷大学では経済学部の教授だったんですね。先生の多様な活動を考えると、ちょっと想像できません。
 
中:色々やってきたからね。(笑)経済学については、国家や国民経済の枠組みにとらわれない地域経済が重要だと考えています。学生には、本を読み考えるよりも、フィールド・ワークに出かけ現場を観察することが大切だと教えます。原則は「歩く・観る・聴く」です。
 
イ:経済学でフィールド・ワークとは意外です。
 
中:もちろん、全く書物を読むな、統計を見るな、というわけではありません。「まず書物を捨てて、村や町へくりだそう」という感覚です。現場で問題を見つけて帰ってきたら、それを検討するためには、本も統計も使わなくてはならない。なんといっても、最初が肝心だからね。
 
イ:何だかワクワクします。楽しそうです。何故、中村先生はフィールド・ワークをすすめるんですか?
 
中:それは、私自身が「書物にだまされた」という思いがあるからです。話すと長くなるから、詳しくは『地域自立の経済学』(日本評論社/1993年)をお読みください。
 
イ:中村先生、まさか宣伝ですか…。(笑)
 
中:あはは。この本ね、最初は全然売れなかったんです。ところが、韓国の民主化運動をリードし、ノーベル文学賞候補ともいわれる、金芝河(キム・ジハ)さんが獄中生活の時に、私のその本を誰かが韓国語に翻訳して金さんに渡してくださったようなんです。金さんはすごく感銘してくださって、「生きる希望を失いかけていたときに、中村先生の本を読んで、活力がみなぎってきた」と絶賛してくれました。
 
イ:生きる活力を与える本…先生、凄すぎます。
 
中:それがきっかけで、韓国でも書籍化され、序文は金さんが書いてくださりました。日本でも韓国版の金さんの序文を使わせてもらい、第二版を出版しました。おかげで、少し売れるようになりました。(笑)
 
 
<次回へ続く>
 
中村尚司(なかむらひさし)
1938年生まれ、京都市出身。京都大学卒。アジア経済研究所の研究員を経て、龍谷大経済学部教授。現在は同大学名誉教授、NPO法人JIPPO専務理事。
 

掲載日: 2015.05.01