迷惑ってかけてはいけないものですか?「現場の声」から老いをみる<前編>

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「老いの価値を考える」をテーマで討論を行う「常識のカベ」。その第3回が8月5日に実施されました。前回の常識のカベでは「老後2000万円問題」という具体的な問題から、「老い」と「お金」に関して議論。非常に白熱した議論になり、今回はその続きを行う運びとなりました。前回の主な参加者は学生でしたが、今回は学生に加え理学療法士、介護士のほか、地域包括ケアといった「老いに直面する現場」で活躍されている方々が参加。そこでは抽象的な議論に具体性を与える、生々しい「現場の声」が語られていました。では、どのような議論がされたのでしょうか?当日の様子をレポートします。
 
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――若者から見た「老い」
 
まず、老いに対する価値観は年代によって様々である、ということから、まずは今回の「常識のカベ」に参加した20代の若手僧侶4人が「老い」に対する自身の考えを語り合いました。
 
学生
「ぼくは自分を客観視することができるのが仏教の教えだと思うのです。『常なるものはない』と説く仏教の教えと出会い、老いたくないと思っている自分を客観的に見つめなおした時に、自身が苦しんでいることを俯瞰して知ることができる。変わらないものなんてないと頭ではわかっているのに、自分は変わらないと思ってしまう驕りのようなものが若者にはあるのではないでしょうか。」
 
学生
「今日、法務で二人のご高齢のお婆さんとお話する機会がありました。一人目のお婆さんは、最近墓地に行くとなんだか気持ち悪い気分になってしまい、『このまま死んでしまおうか』なんて考えてしまうらしいのです。どうしてかと思い色々とお話を伺うと、どうやら最近一人でいることが多く、楽しいことが減ったとのこと。しかし、そのまま墓地でしんでしまうと周りに迷惑をかけてしまう、だから頑張って生きようと思っているんだけどね…とのことでした。
一方で、二人目のお婆さんは、とてもあっけらかんとした雰囲気で『死んだらどうなりますんやろうか?私アホやからわかりゃあしまへんねん(笑)でも、阿弥陀さまに救って頂けるのは本当にありがたいですわ』とおっしゃっていました。
簡単にお二方を比較するべきではございませんが、お二方にはなにか違いのようなものを感じます。二人目の方の語りに「阿弥陀さまの救い」とあったことから伺うに、『老い』を考えることにおいて『宗教性』が重要な意味を持つのではないでしょうか。」

 
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――今を100パーセント生きる。そして、いつ死んでも良いと思えるということ。
 
若手僧侶たちのお話から伺うに、若い方のみならず現代を生きる人々の価値観において、「変わらないでいること」だったり「迷惑をかけないようにすること」に重点が置かれているようです。そういったことから、今回の議論ではそのような現代人の価値観を揺さぶるような提案が出されました。
 
 
30代男性(鍼灸師)
「人間の一生は人間個人の視点で見れば長いものであるように見えますが、例えば樹齢何百年とか生きるような大樹から見れば、その一生は儚いものでもありますよね。そのように考えると、死までの時間が短くても、仮に明日死ぬとしても、個人にとって死において価値はないように思えるのです。
しかし、例えば家制度や国家といったものによって、私たちは長いスパンで残さなくてはならないという価値観に支配されてしまっているのではないでしょうか。前回話題に上がった、アリとキリギリスのお話の3つの結末でいうところの3つ目の結末、つまり冬にアリと出会った時にキリギリスが『もう夏や秋に歌うべき歌もたくさん歌ったし、心残りなことは何もない』と言い、いのちを終えていった、というような生き方を今の世の中では許容されていないと思うのです。」

 
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また司会の菱川さんは、「生き物は今を100%生きるように出来ているんですね。だから、そのように生きるといつ死んでもいいと思えるようにもなると思うのです。つまり、両方の自分を生きていくということです。〈生きたい=死にたくない〉となってしまうと、ずっと安全圏に閉じこもってしまい、ほんとうに生きているような実感が無くなってしまってしまう。そうではなくて、〈生きたい=いつ死んでもいい〉となることが大事だと思います。」とお話しくださいました。
 

常識のカベ実行委員会スタッフ 足利大輔

 
 
後編へと続きます。
 
 

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迷惑ってかけてはいけないものですか?「現場の声」から老いをみる<後編>
 
 
 


 
<次回の常識のカベ>
 
2019年9月2日(月)18時半〜21時
場所:龍谷大学大宮学舎
参加費:無料
詳細・お問い合わせ:
メール:zyoushikinokabe@gmail.com
facebookページはこちら
 
・参加対象
テーマに興味がある方・高齢者支援に関わる方・終活関連の企画に関わる方・今後の生き方へ不安がある方・まちづくり/地域包括ケアについて考えたい方など
 
常識のカベは、2017年より京都市下京区で活動を開始。世の中で問われないような、そもそも論を展開し、少し立ち止まって見ながら今ある”常識”を考え直すような時間をつくっています。昨年までに、20名以上の各種分野の専門家をお招きして、様々な視点をいただきました。(医療・自然農・東洋医学・環境問題・エネルギー問題・AI・介護・仏教など)
今年は「老」をテーマに議論を進めていきます。
 
どうすれば幸せに生きられるのか?幸福度、QOL等、新たな豊かさのモノサシが議論されています。経済成長や物質的豊かさの果てしない追求。
の先に本当の幸せがないことに、多くの人が気づきはじめています。「常識」とは一体何なのでしょうか。
共に語り合い、学び合う中で、混迷をきわめる社会において、一人ひとりの「常識」とは一体何なのでしょうか?
一人ひとりにしずかな革命がおこるような時間となれば嬉しいです。
 

主催:常識のカベ実行委員会・龍谷大学実践真宗学大学院生有志メンバー

 


 

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