農業×芸術×仏教 〜昔の知恵に尋ねる今を生きるヒント〜第1回 導入・ゲストとホストの紹介

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—ご縁ラボとは

ご縁ラボ(70億人の井戸端会議)は、経済発展による物質的な充実に偏った豊かさとは異なる心豊かなあり方「自他共に心豊かに生きる」ことについて業種を超えて共に考え、行動するコミュニティです。浄土真宗本願寺派の僧侶がホストとなり様々なテーマに精通したゲストを招き会場の参加者とともに対話の時間を設けます。今回は「農業、芸術、仏教」をテーマとした前年秋に開催した会について、その様子をそのままに、お伝えできればと思います。

 

<目次>
第1回 導入・ゲストとホストの紹介
第2回 悲しみが好き
第3回 社会に反して
第4回 敵と味方その1
第5回 敵と味方その2
第6回 あいまいな対話・最後に一言

 

—テーマ「農業×芸術×仏教」〜昔の知恵に尋ねる今を生きるヒント〜

司会:今回のご縁ラボのテーマは「農業、芸術、仏教」です。農業、芸術、宗教とは人間の文明が成立するずっと昔から必要不可欠なものとして存在していました。そう考えてゆくと、都市化情報化した現代において今一度「生きる原点」を見直す格好のテーマとも言えるのかもしれません。今回はそんなテーマについて、会社で働きながらも自ら自然農を営まれ、芸術活動に携わってきた菱川貞義(ひしかわ さだよし)さんを招き、一人ひとりの生活に取り入れられる「生きる力」を育むヒントを得られる様な時間にしたいと企画しました。まずは、ゲストの菱川さん、ホストの浄土真宗本願寺派研究所の丘山願海所長とは一体どんな方か話を伺っていきたいと思います。まずは菱川さん、自己紹介をお願い致します。

 

image003菱川貞義(ひしかわ さだよし)さん
1957年京都生まれ。立命館大学、講談社こども美術学園講師、デザイン会社を経て、1989年広告会社(株)大広に入社。プロモーションプランニング局から始まり様々な局を経て、2008年から「275研究所」を社内ベンチャー組織として立ち上げ所長に就任(2017年に大広を定年退職するも、275研究所を継続)。社会課題の解決を目的に社会の多様な主体をつなぎ、プラットフオームづくりからコーディネート、プランニング、クリエイティブ活動に取り組んでいる。最近の活動としては、2012年に京都で、農村再生に寄与する協働ビジネス開発をミッションとするNPO法人いのちの里京都村を設立し、理事長に就任。
滋賀では、滋賀県の地域ブランドづくりの調査・コンサルティング業務を受託、2014年からは 大学生による地域づくりを支援するプラットフオーム「シガシャカ」の展開をはじめている。(2016年10月現在)

 

—話すのが苦手だった子ども時代

菱川:皆さん、よろしくおねがいします。菱川貞義といいます。私はとてもしゃべるのが不得意で、苦手なんです。子どもの時は、特にひどくて、誰ともしゃべらない子どもだったんです。だからこうして、こんな役を仰せつかるのはとても考えられません。まずは、生まれてからの経緯を話した方が、話が分かりやすいのかもしれないので、そうさせていただきますね。
小さい頃、しゃべれない、しゃべらない中で、絵を描くのが好きだったんです。今考えると絵を通じて何らかのコミュニケーションをしていたんだと思っています。今の小学生って、僕らが小学生だった時に比べて絵を描くのが嫌いな子が増えた様に思います。美術の時間が嫌だという子が。どうしてかなぁと考えていくと、とても数学的な教え方をしているみたいなんです。本来の美術ではなくて、セオリーみたいな。なので、絵を描きたいとはいったいどういうことなんだろうって考えだしたりしました。私はただとにかく絵が好きで描いていただけなんですけどね。

 

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菱川さんが描かれたイラスト

 

—環境問題をきっかけに、変わると直感したコミュニケーションの在り方

私は絵が好きだから仕事に出来たらいいなと思って、広告会社に入ったんです。でも、広告会社なので、絵だけではなくて、コピーをかいたり、プランニングしたりとか、イベントをしたりしました。特にイベントが多かったんですけれども、その時、言いたいことは決まっていて、「商品を買ってほしい」ということだけなんです。しかし、それが1990年代に環境問題がとりざたされるようになって、その時にこれからのコミュニケーションの在り方が変わると思ったんです。
例えば今まで、洗剤のコマーシャルをやると、大切にされていたのは汚れが「落ちるか」、「落ちないか」なんです。汚れが落ちる洗剤はいい洗剤で、落ちない洗剤はよくない洗剤。だけど、環境問題になると、そういう図式は成り立たないんです。琵琶湖関係の仕事をしていたんですけれど、生態系を破壊する洗剤、環境を汚染する洗剤が問題になっているのを見て、コミュニケーションの手法が変わるなと思ったんです。顧客さえ満足すればいいということではなく、お客様は正しい、とは限らず、お客様は正しくない、という判断の元でのコミュニケーションも生まれてくる。
ここが大事だと思ったんですね。それで、会社の中で地球環境プロジェクトチームを立ち上げたんです。環境問題というのは、コミュニケーションしづらくて、何がいいのか、何が悪いのか分からなくなるんですよね。その中で広告会社を活かそうと思ったんです。

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—環境問題から農業へ。農業からもう一度芸術へ。

洗剤のこともそうですけど、原発等色々な問題があります。まぁ原発についてもいいって言う人もいるし、悪いっていう人もいる。それが全然分からなくて。それで、環境問題で言われる「環境」、まずは、「農業」について聞きかじりながら、インタビューを始めたんです。有機農法や、減農薬がいいんだといわれる中で、本当は何がいいのだろうかと突き詰め、援農といって農業を手伝いながら実践で勉強しました。減農薬とか、有機農法とか、合鴨農法とかいろいろある中で、結局、自然農※に行き着いたんです。
しかし、それをみんなに言っても、「そんなもの全然だめだ。大体、生産性がわるいし、自然農をやっていたら、食べられなくなる。全然ビジネスにならない」と。でも、実際にされている方もいらっしゃったんですね。私は第三者なので何も言えなかったんです。だから、私もやってみようと思いまして、自然農を11年前に始めたんです。最初10年やろうと決めていたのですけど、今年で11年目になりました。10年やってみたら、人にものが言えるかなぁと。そして、やった中で、いろんなことが分かってきたんです。芸術から農業にいって、農業から芸術をみると、芸術のことが色々分かってきました。それは後ほど色々お話をさせていただけたらと思います。
※ 自然農とは、耕さず、肥料・農薬を用いず、草や虫を敵としないという三原則のもと行う農法。鎌が一本あれば誰でも出来て、命の営みに寄り添う自然農は永続可能な農の在り方として注目されている。

司会:ありがとうございます。後に詳しくお話を聞かせていただけることを楽しみにしております。では、今回ホスト役である丘山所長にも自己紹介いただきたいと思います。

 

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丘山願海(おかやまがんかい)
1948年東京生まれ。京都大学・理学部・物理学科卒業。76年東京大学大学院・人文学研究科・印度哲学・修士課程修了。79年財団法人東方研究会専任研究員80年中国・北京大学留学、86年日本大学文理学部専任講師、90年東京大学東洋文化研究所助教授、92年ミュンヘン大学客員研究員、94年より東京大学東洋文化研究所教授を、経て現在浄土真宗本願寺派総合研究所所長。主な著書『アジアの幸福論』、『定本 中国仏教史』、『菩薩の願い』。(2016年10月現在)

 

—自己紹介とは

丘山:みなさんこんにちは。今日は会の直前まで、いらしてくださっている方々が、何を考えて来てくださったのか、ずっと考えていました。せっかく来てくださったのだから、お一人おひとりが、なんか来てよかったなぁと思っていただくにはどうしたらいいのか考えていたのですけれど、これはテクニックでは仕方ないという結論に至りました。でも、最近よく、講演なんかでも来てくださった方に僕は何を与えられるんだろうと、最近そこらをまじめに悩むんです。
で、自己紹介させていただきます。僕は自己紹介っていうのは、「何をやってきたのか、職業はこれ。」っていうのは、自己紹介にならないのではないかとて思っているんです。僕なりにいうと「自分は、こうやって生きているんだ」というのを語れたらいいなぁと思っていてます。でも、僕は菱川さんみたいに色んなことをやっている訳ではないので、今の話を聞いていてうらやましく、いい人生を送ってらっしゃるなぁと思ったんです。

 

—職業は「生きることの意味って何なのだろう」を考えること

僕は本当に何もやってはいなくて、じゃあ、何をやっていたかというと「生きることの意味っていうのは何なのだろう」と考えるのが自分の生き方で、仕事で、趣味だ、と思っています。ただ、自分っていう存在は何なのだろうという考えはあまりないんです。生まれて今ここに生きている。その自分がどうやって生きていこう、というところに関心があって、自分自身を見つめているっていうよりは、こんな自分がどうやって生きていくかっていうところをずっと考えていきたいと思っています。だから、そういった意味で「自分がどうやって生きていくか」っていうことを考えるのが自分の職業だって思っています。
一応、大学でいろんな研究をしてきたけれど、「生きることの意味っていうのはなんなんだろう」ということを考える為に仏教とか思想を勉強したりしているので、すごく偏っていて、自分の好きなところしか学んできていないんですよね。

 

—挫折することが好き

あと、好きなことは「挫折をする」こと。挫折とか、苦しみとか悩みとかって、自分の人生を豊かに、面白くしてくれる気がしていて、だから挫折っていうのがすごく好きなんです。すごく天才的な後輩がいて、彼が僕のことを尊敬しているってことで、ある人に「どうして丘山さんのことが好きなの?」って聞かれたら、彼は「丘山さんはいくら年をとってもしょっちゅう挫折して生きている。挫折しながらも生きている姿を見たら、自分も安心して挫折できる。」ってそう言ってくれたんですよね。

 

—趣味は、人と出会うこと

もう一つ、僕の趣味は、人と出会うこと。僕は今日、この一瞬会えただけでも、もう一生の何かに出会えたことだと思っているので、すごく楽しみにしているんです。皆さんに出会えて、生きることを語り合える。世間話はあまり好きではないです。生きることを話すならなんでもよい。そんな出会いができればなと思っています。

司会:丘山所長らしい自己紹介をありがとうございます。では早速今回のテーマに移っていきたいと思います。

 

次回はいよいよ「農業×芸術×仏教〜昔の知恵に訪ねる今を生きるヒント〜」について登壇者のお二人に、お話をうかがっていきます。次回のテーマは「悲しみがすき」(4/28更新予定)。どうぞお楽しみに。

2017.4/21 更新