6のつく日、ハチドリ舎でコーヒーと共にじっくりと戦争体験をきく。

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大きな窓から太陽の日差しが差し込む明るい店内、素敵な家具や食器が並び、木のぬくもりやランプの温かさを感じられるカフェ。広島市内にあるSocial book cafe ハチドリ舎(以下。ハチドリ舎)では、カフェの営業と毎日さまざまなイベントが行われています。
 
今回は、広島にある素敵なカフェで、語り部の方とお茶をしながら、戦争の話を聞かせていただく企画、ハチドリ舎さんの「Talk with A-bomb Survivors in English『6』のつく日 語り部さんとお話ししよう!」(以下、「6のつく日 語り部さんとお話ししよう!」)をご紹介します。
 
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小学生の頃、学校の体育館や図書館などの電気を暗くして、戦争の映像を見たり、暗い雰囲気の中で戦争体験を聞いた記憶はないでしょうか?
大人になってからは特に、戦争について考えたり、勉強したりすることは、心のどこかで大切なんだろうなぁと思いつつ、戦争体験の話を聞くことは、身構えてしまったり、どうしてもハードルが高いように感じます。
ハチドリ舎のイベントは少しちがいます。
 

—カフェで戦争について対話の時間を。

 
74回目の原爆の日である、2019年8月6日(火)ハチドリ舎さんにて、「6のつく日 語り部さんとお話ししよう!」が実施されました。
本企画は毎月「6」のつく日の11時〜17時の間、戦争体験者である語り部の方にカフェに滞在いただき、大勢に対して語る証言会ではなく、小さな規模で直接お話しすることで、原爆について知ってもらうような機会をつくっています。
 
今年の8月6日の広島市の平和記念公園で開かれた、広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式には、被爆者や遺族ら約5万人が参列されていました。
 
お昼時、平和記念公園から徒歩5分程歩いたところにあるハチドリ舎さんにお邪魔すると、語り部さんと30名程度の参加者の方が少人数グループに分かれてお話しされていました。
 
参加者は20代、30代の方が多く、遠くは鎌倉から来られた方もいらっしゃったました。他には、県外の大学に通っているが、地元の広島に帰るたびにハチドリ舎に来ているという学生さん2人も語り部さんのお話を聞いていました。
 
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—店内を見渡すと、語り部さんの中にはお坊さんが!

 
浄土真宗本願寺派の僧侶・登世岡浩治さんは、旧制崇徳中(現崇徳高)4年生、15歳の時に、被爆されました。
戦争中は学校の授業はほとんどなく、爆心地から約4キロ離れた工場で鉄をガスを使って切断する作業に動員されていました。
 
1945年8月6日のあの日も工場で作業をしていた登世岡さん。
朝礼後に異様に明るい光を見て、「今日のお日さんはやけに明るいなぁ」と思った瞬間、バーンッ!と大きな音が鳴り響き、煙が上がりました。
 
「立っておれず、這うようにして外へ出た。その時はその光を爆弾だとは思っていなかった」
そのあと、大人たちに「防空壕へ入れー!」と言われ、入っていったが、中にはブルブル怖くて震えている人もいたといいます。
 
ピカッドン!と眩しい光の直後に大きな音がした、約20分後には帰宅するように言われて、帰路に着きました。沿道の家は燃えていたり、すでに吹き飛んでいたりする家を通り過ぎ、歩いていると、向こうから両手を前に突き出してまるでゾンビのような人たちが歩いてきた。火傷をすると手が焼けて、皮がむけるので、体にふれないようにと手が前に出ていたと知ったのは後のこと。
 
 

「あの日は非常に良いお天気で、快晴でした。けど、ゴロゴロと空から音が聞こえて、上を見上げてみると空は真っ黒になってました。煙が上空に上がり、雨雲が発生していたようです。その時、手を出してみると黒い雨がポツリポツリと手に落ちてきて、ザーッと雨が降り始めましたね」

 
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なんとか家に帰り着いたものの、12歳の弟さんが家にまだ帰っていないことに気がつき、探しにいかれました。火傷した人やすでに息絶えている人もいる中、なんとか弟さんを見つけられましたが、その時には顔もわからないほど重い火傷を負っていました。
 
その後、家で弟さんを懸命に看病していると、「あと何メートルある?」とポツリポツリをつぶやきます。登世岡さんは「あと100メートル」と返したそうです。そうしているとまた弟が「あと何メートルある?」と小さな声でつぶやきます。「あと1メートルだ」と応えることしかできませんでした。1メートルと言葉を聞いて安心したのか、弟はまた眠りにつきました。

その後、危篤状態になった弟さんの枕元に家族が集まりお経を読んでいると……「弟はあの時、声にならない声で口をあけて一緒にお経を読んでいるようでした」
そして、一人ひとりの家族を見て「ありがとう」とみんなに言って、亡くなられたそうです。
 
8月15日には戦争が終わりをむかえましたが、弟さんを奪われ、日本が負けたことが悔しく、恨みをつのらせていた、と語られました。しかしその後、京都・龍谷大学で仏教を学ばれ、その心を学ぶうちに、日本の過ちや本当の平和を考えるようになり、今、平和の大切さを伝えておられます。
 
 
登世岡さんは、最後に
「実はこんな戦争の話ができるようになったのは、終戦から50年ほど経ってからなんです。それまでは恐ろしくておそろしくて、話なんてできんかった。戦後に同級生とあって、同窓会をしてもその時の具体的なことや、感情が入ってしまうような話はできなかったですね」
と、話してくださいました。
 
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戦争体験を聞く側である戦後生まれの私たちは、話をしてもらうことが当たり前、という感覚がどこかにあるように思います。後世に、戦争の悲惨さやつらさを伝えてもらうためには、体験者のお話は重要となります。戦後、74年が経ち、戦争を語ってくれる方も少なくなってきているのが現状です。語りをしてくださる方の一言一言を丁寧に感じていきたいと思いました。
イベント中も、20代、30代の参加者の方たちが身を乗り出して、語り部さんのお話を聞いている姿が印象的でした。
そして、ハチドリ舎さんのやすらぎのある空間が、戦前生まれの語り部のみなさま、戦後生まれの私たちをあたたかな心にさせてくれたのかもしれません。
 
 
戦争について気にはなっていたけど、こわくて聞きにいけなかった、誰に話をしていいかわからなかった。そんな方はぜひ、ハチドリ舎で、戦争体験者の語り部さんとお茶をしながら、お話を聞きに行ってみてはいかがでしょうか?
 

ハチドリ舎さんは「人と人 人と社会 広島と世界をつなげる ブックカフェ」としてオープンされています。通常のカフェ運営はもちろんのこと、毎日様々な企画が実施されています。http://hachidorisha.com/event
 
「ハチドリ(想いを持つ人)がつどい、つながれる、社会のことを気軽に語り合えるカフェ。
私たちは社会で起こるできごとに無関心ではいられても、無関係ではいられません。
これからの社会を生き抜く大切な知恵を身につけられるよう、講演・映画の上映会・お話会・音楽イベントなどを開催。本棚には、社会課題を知るきっかけとなってくれる本が並び、ハチドリの樹の元にあるチラシ棚では、イベント情報を発信受信できます。
広島県産材をつかった小上がりや、椅子、本棚などの内装、珈琲カップや座布団まで、ハチドリ舎は手づくりでつくっています。つくる楽しさ、自ら行動する大切さを、ごはん・おかずは皆さん自身でカスタマイズできます。珈琲もミルで挽くところからドリップまで。ハチドリ舎は未完成。みなさんとつくっていくことを楽しみたいと思っています。ぜひ一緒に!」

 
 

Talk with A-bomb Survivors in English『6』のつく日 語り部さんとお話ししよう!
・毎月6のつく日(6日・16日・26日)、11時~17時に開催
・事前申し込み不要
・要ドリンクオーダー
・毎月6日は英語で証言を聞くことができます。(13時~、15時~に証言会を予定)
・場所:Social Book Cafe ハチドリ舎
 〒730-0854 広島市中区土橋2-43-201
・連絡先:hachidorisha@gmail.com / 082-576-4368
・ウェブサイト https://hachidorisha.com/about 

 
 
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掲載日: 2019.09.05

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