生活視線の違いが生み出すモヤモヤ。害虫駆除の仕事?|鈴木健司さんインタビュー①

マンション暮らし。
マイホームで掃除をしながらパートナーの帰りを一人待つ。
 
暑すぎる夏が過ぎ、生活しやすい季節になりました。気になってくるのは、虫の存在。マンションのワンルームの部屋を掃除していたら、窓も開いていないのにどこからともなく出てくる虫や家のリビングで子どもと一緒に遊んだり、ペットと一緒にゴロゴロと寝ていると、見えてきたのは床や天井を動くちいさな虫。
 
害虫駆除を始め、遺品整理や生前整理、そして特殊清掃と様々な事業を展開されている企業が滋賀県大津市にあります。「有限会社美鈴環境サービス(以下、美鈴環境サービス)」の代表取締役である鈴木健司さんは、同社の経営をする傍ら、「一般社団法人 社会整理士育成協会」の代表理事も務められています。
 
多岐にわたる取り組みをされている鈴木さん。どのようなきっかけで害虫駆除や生前整理の事業をされておられるのでしょうか。3回にわたってインタビュー記事をお届けします。

 
インタビューに応じる鈴木健司さん
 
父親の仕事がきっかけで始めた害虫駆除
 
ーーこの会社を立ち上げるに当たり、きっかけなどはありましたか?
 
鈴木:私が大学を卒業し就職という時期に特に就きたい職業もなく、ハウスクリーニングと害虫駆除の仕事に携わっていた父に相談したところ「一緒に働こか」となったんです。
ところがゴキブリが大っ嫌いで、最初はかなりきつかったんですけど、日々の作業をこなしている間にいつの間にか慣れていました。
 
ーー虫嫌いから、始められたんですね。それはすごいです。
 
鈴木:元々は美鈴環境サービスとは違う父の働いていた会社で4年ほど働いていましたが、理由あって会社を離れることになったんです。その後大手の会社から、「鈴木さん、会社作らないか」という話になりまして、この美鈴環境サービスという会社を設立することになりました。
 
当社では、企業相手の異物混入を防ぐ仕事を行っております。これは異物が混入して商品を回収しないといけないとか、そういう問題が起こらないようにする仕事です。
そのたくさんある異物の中でも、虫であったり小動物関連の異物混入を防ぐ担当をさせてもらっています。また、一般家庭に於いても害虫駆除や掃除も承っています。
仕事をするなかで、お片づけの需要もどんどん高まってきまして、一般家庭のお客さんから相談を受けたりとか、「これを持って帰ってくれる?」等そうしたニーズを受けて遺品整理を始めたわけです。今は時代的な需要から生前整理を前面に出して活動しています。
 
ーー害虫というのはシロアリとかですか?
 
鈴木:当社はお客様が困った虫に対しては全て対処しています。対応できない虫は基本ありません。
 
近代的な家が生み出したものとは?
 
ーー害虫駆除の現場はどんな感じですか?古い家とかに虫は多そうなイメージがありますが……
 
鈴木:現場に関しては、綺麗な家でも虫はいます。特に、昔の家ではなく床下がコンクリートの現代風の家に住んでおられる方からのお問い合わせが多いです。
 
昔の家は床下が土でしたから、そこが虫の居住空間だったわけです。ところがコンクリートになったので、外部から基礎を上がり床下に侵入します。
しかしコンクリートなので棲みにくく、適した場所を探し歩き回ります。その隙間を見つけて出てきたところが皆さんが生活されているリビングやお風呂場などになるのです。
 
ーーそうなんですね。新しい家にこそ、虫が入ってくる。なるほど……。確かに、今まで住処だった土がなくなったら、虫たちの行き場はなくなりますもんね。
 
鈴木:害虫駆除に関しては、若い奥様からの問い合わせが非常に多いです。というのも小さいお子様がおられるご家庭や、ペットを飼われているご家庭では、低い目線で暮らされています。だから虫を見つけるのが非常に早い。ところが世の旦那様は家にいる時間がほとんどないですよね。床を見て生活することがないですよね。
 
だからその気持ちが全く分からず、夫婦の意見がぶつかり合って今までやったこともない大げんかということも多いのです。小さな虫が原因で、です。
でも旦那様の気持ちもわかるんですよ。疲れて帰宅したら、いきなり虫の話をされるわけですよ。嫌じゃないですか。
 
 
鈴木:今まではアパートで暮らしていて、子どももできて綺麗な家に住むわけです。ところが新しいマイホームになった途端、虫に悩まされるんです。でも旦那さんは「そんな何もせーへんのやから気にしすぎや」と片付けてしまいます。
それで奥様は最終的には「アパートの方がよかった」なんて言うわけです。この言葉が旦那さんには言い表せないような怒りになって、最終的には離婚話に至ることも多いんです。
 
しかし、その虫が咬むのか刺すのかということが問題ではなく、奥様は見ること自体が苦痛なのです。だから奥様も旦那様が聞いてくれなくなるから、友達にも相談するけど、何回も話していたら、友達もだんだん聞いてくれなくなるんですよ。そうしていると、ひとりぼっちになってしまう。もう心が病んでしまうんですよ。
そして、最終的に困って、うちにお問い合わせが来るんです。だから遠方からのお問い合わせも多いです。
 
ーー困り果てた形で問い合わせが来るということですか?
 
鈴木:今お話ししたようなことを伝えて、「実は同じお悩みの方(虫に悩んでおられる方)はたくさんおられます」ということを言ってあげると安心されます。最終的には「少しは楽になりました」と言って電話を切られます。
 
 
ーー連絡される方は、思い詰められているんですか?
 
鈴木:ものすごく思い詰められてます。
先にお話ししたように、旦那様に理解してもらえないことや駆除業者に相談しても断られることがあり、どんどんお悩みを抱え込まれてしまいます。
 
ーーそれを断られる理由ってあるんですか?一見、断る理由がなさそうな感じもありますが……。
 
ご相談者の方にとっては「嫌なものは嫌」という虫でも、駆除業者からすると、いわゆる「害虫」と呼ばれない種類の駆除は必要がない場合も有ります。
又、「害虫」と呼ばれる虫でも駆除をするのが困難な虫もいます。この虫自体を建築物の隙間や、玄関、窓枠から侵入させないとか、外にいる虫をゼロにするということは出来ないので。侵入させないために、隙間を閉塞するなど、防虫工事の仕事になってしまうのです。
作業内容や訪問回数によって、結果的に見積り以上の作業内容になってしまうこともあります。
 
ーー経済的にメリットがないのと、リスクが高いんですね。
 
鈴木:リスクは高いですね、でも私の方では問題ないので受けています。もちろんリスクは高まりますけど技術力も高まります。失敗する可能性もあります。でも、もしその失敗を生かして成功すれば当社の得意分野に変わるので逃げることはしないです。
 
数か月前も関東地方に行った際に過去に経験したことのないことが起こりました。忌避剤で対策できると思っていた虫が全く効果がなかったのです。数日経っても効き目がなかった。「もう少し様子をみてください」とお話をしましたが、結局結果が出なかったので返金しますということになりました。でも、お客様は「どこの業者も来てくれなかったのに、来てくださったので。交通費を半分お支払いします。」と仰ってくださいました。
 
鈴木:困っている人があれば、遠方であってもなんとかしてあげたいなという思いがあります。お繋ぎできる同業者もいますので、仕事を紹介することもあります。でも、その同業者が受けられない場合、どこにもすがるところがなくなります。僕には放っておけないです。正直なところ大変ですけどね。
 
でも本当に良いお客様でした。お向かいの方にもお声かけくださって、作業をさせて頂いたのですが、その家も返金しないといけなくなって(笑)
それでも、失敗も、「効果がなかったです」と言っていただいたことが私にとっては非常にプラスなんですよ。この虫には効かなかったという一つのデータとなりますので。
 
よく飲食店でもアンケートがあったりしますけど、書いてくれる人はありがたいと思いますよ。何も書かずに、「あのお店はダメだ」と離れていってしまったら、二度と来てくれないし、何も改善できない。経営者にとっては一番つらい。悪いことが広がって行く可能性があるわけですから。正直に言ってくださった方がありがたいです。
 
 
害虫駆除の業務を始められた鈴木さん。当初は害虫が苦手だったそうです。「仕事をやっていくうちに慣れた」と話されていましたが、その背景には人のために活動したいという鈴木さんの強い思いがあるのではないでしょうか。それはその後のインタビューから読み取ることができます。リスクを取ってでも技術力やデータを積極的に追い求め、失敗も今後の糧にする姿勢に心打たれます。
 
では、害虫駆除から遺品整理や生前整理へと事業を拡大されたのは、どのような経緯があったのでしょうか?次の記事では、遺品整理と生前整理、そして特殊清掃について伺いました。

 
 
鈴木さんへのインタビューは全3回にわたってお届けします。第二回、第三回はこちらをご覧ください。

 

生前整理と特殊清掃、明暗分かれる2つの仕事|鈴木健司さんインタビュー②
 
〜素晴らしい活動を世の中へ発信〜社会整理士育成協会|鈴木健司さんインタビュー③(近日公開予定)

 

Interviewee’s profile

 

 

鈴木健司(すずき けんじ):有限会社美鈴環境サービス代表取締役、一般社団法人 社会整理士育成協会 代表理事。1972年、京都市生まれ。父の仕事がきっかけで、害虫駆除に携わる。1999年に現在の会社を立ち上げ、2006年より同社代表取締役。2015年に遺品整理士・遺品査定士の資格を取得し、遺品整理事業に参入。2019年、一般社団法人 社会整理士育成協会 代表理事、一般社団法人 相続診断協会 京都相続診断士会 副会長に就任。

 

掲載日: 2019.11.11