現代で仏教を伝えるには?|龍谷大学シンポジウムレポート①

合掌する直林先生ら
2019年11月21日、龍谷大学大宮学舎にて実践真宗学研究科の公開シンポジウムが行われました。今年のテーマは「伝道を考える」。浄土真宗のみ教えをいかにして伝えるかを考える場となりました。
 
龍谷大学文学部教授の貴島信行先生、葛野洋明先生のほか、ゲストとして、相愛大学客員教授の直林不退先生、節談説教研究会理事の杉本光昭先生、そしてテクノ法要を手がける福井県照恩寺住職の朝倉行宣先生が登壇。それぞれの立場から伝道について提言していただきました。
 
今回は、「節談説教」と「テクノ法要」という、寺院における新たな取り組みやこれまでの取り組みを中心に取り扱っていることから、「お寺でできる100のこと」特別編として実践真宗学研究科シンポジウムの様子をレポートします!
 
鍋島直樹先生
最初に、龍谷大学実践真宗学研究科 研究科長の鍋島直樹先生より挨拶がありました。実践真宗学研究科とは、2008年に創設された龍谷大学大学院の修士課程で、主に浄土真宗の教えの伝え方、寺院の運営、社会との連携(社会実践)といった、より実践的な手法を研究する学問です。
 
鍋島先生は「みほとけの光を受けて、私たちがそれぞれを照らしあおう」とコメント。その後、登壇者の活動だけでなく、院生らが自主的に行なっている活動を紹介。12月には院生らによる新しい取り組みも始まったとのこと。今後の展開が非常に楽しみです。
続けて、コーディネータの葛野洋明先生も挨拶。登壇者の紹介をした上で「非常に特徴のある伝道について、ぜひ興味を持って欲しい」と、参加者へ投げかけました。
 
浄土真宗における伝道の目的と課題
 
つづけて、同大学教授 貴島信行先生より「浄土真宗における伝道の目的と課題」と題した提言が始まります。伝道とは、浄土真宗の教えを伝えるということです。
 
社会構造の変化に伴い、人口減少や高齢化が進み、人と人とのつながりが希薄化した結果、宗教における周辺状況も変化しました。宗教的な文化や慣習が次代に継承されにくくなり、寺院への参詣者の減少などが顕著となりました。このような現実に対し、わたくしたちはどのような手を打つべきでしょうか?
 
実践真宗学研究科においても、「グチコレ」「ジッセンジャー」「ライフソングス」といった様々な伝道の試みがこれまでに実施されてきました。しかし、「実践さえしていれば伝道となるのか、など様々に心の揺れが生じ方法論の選択にも戸惑う」と貴島先生は述べられます。今日まで継続されてきた伝統的な方法、現代に相応した方法を含め、伝道や儀礼を改めて考える必要があるのではないかと投げかけられました。
 
貴島信行先生
現代における伝道の課題とは?
 
貴島先生は、「伝道の課題」に関して、先行研究の「現代における真宗伝道の課題」(上山大峻先生著、 浄土真宗教学伝道研究センター所長=当時、『真宗研究』第50輯、2006年)にて指摘されている、
 
①伝道力の低下の問題
②専門用語、言葉の問題
③布教および宗教儀礼とわれわれの実生活の隔たり
④マンネリ化した伝道方法の打破

 
という4つの課題を紹介しました。また、同研究では「教学的課題」として信心の智慧、衆生利益、利他行、社会的実践をすすめる内容に言及し、今後は多角的な実践をすすめるべきと方向性を示しています。
 
これについて貴島先生は、「教学的な意向を反映してか、次第に社会貢献を果たす実践的課題が注視されるようになってきましたが、やはり同じ課題をかかえながら、社会も激しく変化する中で課題がより山積みになっていく傾向がある」と指摘されました。
 
わが国全体における人口減少に伴って、仏教婦人会や子ども会といった伝道活動の実施もだんだんと難しくなってきています。今後はこれまでの「家単位」への布教から「個人単位」への布教へとシフトしていくとともに、孤独や生きづらさをかかえる人への対応も迫られています。
 
近頃は「若者の宗教離れ」という言葉がある通り、若年層の宗教に対する関心が薄れているとされていますが、一方で「本当に心のよりどころとしての仏教・真宗に救いを求めてこられる方がいらっしゃる」と貴島先生。
 
その背景には、特に死生観について大人が若年層に対して誠実に対応していないのではないかと疑問を投げかけました。死生観に対して、真正面から向き合うことのできる宗教者が求められているでしょう。
 
伝道には3つのステージがある?
 
続けて、貴島先生は伝道を考える上では、3つのステージがあると説明されました。
そのステージとは
①伝道活動による寺院の可視化
②宗教的情操の涵養
③聴聞を中心とする法座の継続

の3つです。
 
寺院の「可視化」とは、教えと出会うきっかけとして「見る」、「聞く」、「知る」、「感じる」といった、人々の興味や関心に着目し、教えに導くための玄関的な要素となる活動です。先ほどの「ジッセンジャー」や「ライフソングス」もこのステージにあたりますね。
 
そして、宗教的情操の涵養とは、宗教的な関心をよびおこしていくステージ(法要、行事、勉強会など)のことです。最後に、③の信仰につながる要素となるステージ(法座や対面による相談)へと続きます。
 
貴島先生は、「自分はどのステージに位置しているのかを把握しながら、たえず目的に向かうための実践であることを強く意識するべき」と説かれました。
 
最後に、貴島先生は浄土真宗の教えの「わかりにくさ」についても言及。浄土真宗の教えは聞いてもよくわからない理由として「言葉が難しい」「教えの表現自体が理解しがたい」、「教えと現代人の人々の感覚、意識、価値観が大きく離れている」との調査結果(『浄土真宗に関する実態把握調査』真宗教団連合、2017年度)を引用し、現代においては特に「わかりやすさ」が求められていると指摘されました。
 
ただし、単に言葉をわかりやすく置き換えたからといって、教えが伝わるわけではありません。言葉の意味を詳しく検討した上で、相手に通じる表現を選ばなければならないでしょう。
 
貴島先生は、改めて伝道の基本について振り返り、今後の伝道の方針を示されました。特に、若年層の伝道については単に「若者の宗教離れ」と片付けるのではなく、よりミクロな視点に立ち、生の声を聞き取るという努力が求められるのではないでしょう。
 
また、浄土真宗の教えをわかりやすい形、親しみやすい形で表現する必要がある一方で、それが「薄い」解釈にならないような工夫が必要です。昨今では様々な試みがなされていますが、それらが窓口にとどまることなく、今後にわたってのご縁となるよう努力しなければならないのではないでしょうか。
 
実践真宗学研究科シンポジウムのレポートは全4回にわたってお届けします。次回は、直林不退先生による節談説教の提言、杉本光昭先生による節談説教の実演について取り上げます。
 

龍谷大学シンポジウムレポート記事
第1回|現代で仏教を伝えるには?(当記事)
第2回|これまでの伝道を捉え直す 〜節談説教〜
第3回|これからの伝道を考える〜テクノ法要〜
第4回|大切なのは、とらわれないこと。

 
Profile
 

 

貴島 信行(龍谷大学文学部教授)
【経歴】龍谷大学大学院文学研究科真宗学専攻修士課程修了。文学修士。龍谷大学非常勤講師、浄土真宗本願寺派教学伝道研究センター委託研究員を経て、現在は龍谷大学文学部教授、中央仏教学院講師、本願寺派布教使課程専任講師、本願寺派布教使、大阪府真行寺住職。
【著書】『やさしく語る親鸞聖人伝』(共著・本願寺出版社)、『み仏の声を聞く』(百華苑)など。
掲載日: 2019.12.24