【尼僧酒場】お寺はコミュニティデザインの原点?「気づき」を与える人の役割とは


2020年3月26日、「尼僧酒場」の第3回目が尼崎市のカフェ「パイナワーフ」(同市南武庫之荘2)にて行われました。尼僧酒場とは、尼崎市在住の女性僧侶 唐溪 悦子さんが今年1月より始められたイベントで、飲食をしながら参加者同士で異なる価値観を共有し、新たな気づきや学びを得ながら交流を深めるコミュニティイベントです。
 
尼僧酒場や唐溪さんのプロフィールについては、こちら(アマでアマと自分を見つめ直す。|尼僧酒場 兵庫県尼崎市でスタート)をご覧ください!
 
今回の会場は、尼崎市南武庫之荘にあるハワイアンカフェ「パイナワーフ」。「人が集まる」という意味の「パイナ」と「船着き場」を表す「ワーフ」が由来で、忙しい毎日にふらっと立ち寄れる船着き場になってほしいという願いが込められています。尼僧酒場のイベントコンセプトともぴったりですね!
 
今回は、はるばる山形より来られた佐々木朱里(ささき あかり)さんをゲストに迎えて、唐溪さんとトークセッションを行いました。
 
山形県出身の佐々木朱里さん(19)は、東北芸術工科大学でコミュニティデザインを学んでおり、長期休暇を利用して、尼崎の地域コミュニティを学びに来ているそう。地域での場づくりに興味を持っており、実際にファシリテーターを経験することで、コミュニティデザインを学ばれました。
 
今回の尼僧酒場では、「コミュニティデザイン」をテーマに参加者の方々と会話を楽しみました。コロナウイルスが猛威を振るう中、尼僧酒場の開催も心配されましたが、「このイベントが日常の一部となり、誰かがちょっと一休みできる居場所であってほしい」という唐溪さんの思いから、手洗いやうがい、定期的な換気といった対策を行った上で実施に踏み切ったとのことです。当日は、11名が参加されました。
 
佐々木朱里さん(写真左)と唐溪悦子さん(写真右)
 
コミュニティデザインって何だ?
 
まちづくりに関連するワードとして最近は時折聞く「コミュニティデザイン」。これはどういうものなのでしょうか?
「簡単に言えば、まちづくり、地域をどうすれば盛り上げることが出来るかがコミュニティデザイン」と話す佐々木さん。
 
日本の地方では、人口減少が進んでおり、今後もその流れは加速すると予想されています。伴って、過疎化や地場産業の衰退、商店街の衰退といった「地域課題」が発生しました。
かつては行政にその解決を任せていましたが、それも困難に。そこで、地域の人が課題を解決出来ないか?と自分たちが地域の課題を解決するのが「コミュニティデザイン」の始まりでした。
 
では、コミュニティデザインの面白さはなんでしょうか?
佐々木さんいわく、コミュニティデザインの分野では、人と会うことが多く、コミュニケーションの難しさもあるが、関係性づくりがとても面白く、一番興味がある部分だそう。
コミュニティデザインは単なる人と人の関係だけを学ぶだけではなく、例えば祭やイベントのチラシといった、デザインの分野も関係するそうです。
 
「語べた」と自称する佐々木さん。尼崎に来ておよそ2週間、知り合いもいない状態でしたが、得意の音楽を通じて地域の方々と交流を深めたそう。彼女にとって「歌」は、一つの表現方法でした。嬉しいときや悲しいときも歌で表現しているという彼女。「歌」はいろいろなものを表現する、彼女の軸になっているということです。
歌も、コミュニティデザインを考える上でのキーワードとなるかもしれませんね。
 
お寺はコミュニティデザインの原点?
 
「お寺はもともと地域の拠点であった」と話す唐溪さん。僧侶の役割は、仏教を伝えるのみならず、人々の苦しみに共に向き合い、気づきを与えたり、ときにはなにもなくても寄ってみたりする「地域とともにある存在」であったといいます。
 
続けて、唐溪さんは「キサーゴータミーの物語」を紹介されました。キサーゴータミーの物語とは、よちよち歩きができるようになったばかりの一人息子を失った母親が、息子を生き返らせる薬を求めて釈尊のもとを尋ね、「死」が生きる者にとって逃れられない定めであることに気づく物語です。
(キサーゴータミーの物語についてはこちらもご覧ください。)
 
釈尊は、直接解決法を与えたのではなく、「気づかせた」というところに大きなポイントがあります。仏教には人々の苦しみに共に向き合い、気づきを与える、いわば「地域とともにある存在」という側面があるのです。
 

尼僧酒場では、参加者同士での談笑を通して自身の悩みや苦しみが和らぐきっかけになればとの想いから始まりました。
コミュニティデザインにおいても、地域の課題を解決するには多くの方々の知恵が必要でしょう。そして、人々のつながりの中心に僧侶が立ち、気づきを得られるきっかけを用意する。尼僧酒場は、現代における僧侶と地域のあり方に気づきを与える、一つのモデルかもしれません。
 
   

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掲載日: 2020.04.22

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