企画するってどういうこと?色んな人からのアドバイスで成り立つ|平井万紀子さんインタビュー③
京都・まぁいいかcafe(注文をまちがえるリストランテ)を企画されている、平井万紀子(ひらい・まきこ)さんのインタビュー3回目をお届けしています。
2018年より始められた活動「まぁいいかcafe(注文をまちがえるリストランテ)」は、平井さんのお母さまが認知症になり、同居されたことをきっかけに、認知症の方や高齢者が働くこと、生活を豊かにしていくことを支援したいと考えられ、始められました。京都市の各地のお店やホテルを会場として、認知症の方が接客をされるカフェとして企画・活動されています。
今回は、具体的にどうやってこの企画が進んでいったのか?企画する上での工夫、また今後の展開をお聞きします。
目次
――「まぁいいかcafe」を開催するカフェを選ばれる基準のようなものはありますか?
平井さん(以下、平井):基準はまだほとんど決めていないんですが、おしゃれで便利なところということでしょうか(笑)。
――便利というのは?
平井:駅から近い、もしくは駐車場があるかどうか。あと必ず見ているのは、できるだけ段差がないところ。またトイレが使いやすいところでしょうか。何回か開催させてもらい、感じたことを踏まえてこれからもお店選びも検討したいと思っています。
まずは、私たちの活動に共感してくださっている方の協力が必要です。
もしお店を「まぁいいかcafe」として使わせていただくにあたって不安に思われている方がいらっしゃっても、開催当日までに話し合いを行うようにしています。それで理解が得られれば開催させていただけます。
――「まぁいいかcafe」開催当日のスタッフには、もともとそのお店の店員として働かれている方もいらっしゃるのですか?
平井:給仕するのは私たちだけですが、お店の方は厨房で料理を作ったり、注文と厨房のつなぎの役割をしてくださいます。
一番大変なのが、キャスト(「まぁいいかcafe」で働く認知症の方)がお客さまから伺った注文を厨房に伝える間の役です。
それは、慣れておられるお店の人にやってもらっています。私たちボランティアは、キャストが困っていたら少し助けたり、「あそこ行ってください」と促したりする役割です。
一人だけの力でない、いろんな人からのアドバイスを受け入れて、成り立ってきた企画
――会場を貸してくださるお店は、社会貢献として活動をされている認識なのでしょうか?もしくは、お店の知名度を上げる意味もあるのでしょうか?
平井:社会貢献したいと思ってやってくださっているお店だと認識しています。結果的に、実施したことによってたくさんのお客さんが来てくださいます。新規のお客さんも来られ、宣伝効果もあることがわかり、お店の方にはかなり喜んでいただいています(笑)。
もちろん、お店によっては「社会貢献がしたい」というのが前提ではなく、宣伝になるからしてくださる方もいるかもしれません。ですが私の中では、いつも「WIN-WIN」を考えています。私たちが「まぁいいかcafe」をすることで、そこのお店の知名度が上がったり、売上が上がるのは嬉しいことです。
――まさに営利企業が社会貢献する形の素晴らしいマッチングだと感じました。
ちなみに「まぁいいかcafe」を開催するにあたって、運営費はどうされているのですか?
平井:特別メニューを作ってそのほんの一部をいただいたり、ランチの値段に少しプラスアルファしていただいたりして、そのお金を運営費としています。
世界アルツハイマーデーがある9月は大きい規模で開催するのですが、その時は協賛金や助成金で運営したりしています。
後援を取ったら協賛金を出してくれる団体などがあることを知ったのですが、当初は、後援ってどうやってしてもらうの?というところから始まりましたよ(笑)。
最初は後援のみで協賛金はいただいていませんでしたが、京都市、京都府、公益社団法人認知症の人と家族の会京都府支部、日本認知症グループホーム協会さんなど、本当にいろんな方が協力してくださるようになりました。ホテルグランヴィア京都で開催した時は、後援が12団体、協賛企業が14社、協力企業が3社でした。
――本当にいろんな方が協力されているのですね!
平井:はじめの頃はボランティアの人に対するお金は交通費も含めて0円でした。けど、やっぱり継続的に実施したいので、そのための仕組みを考えています。色々お金もかかるので、どうしたらいいかなって。
――公益性のある活動をやりたい企業は多いのではないでしょうか。「まぁいいかcafe」は社会的メッセージも強く、企画名から期待値調整もされてますよね。企業として怖いのはクレームだと思うのですが、ネーミングから期待値が調整されているのは安心だと思います。