終活が私たちにもたらすものとは?| MIKAWAYA21株式会社④
街の新聞屋さんが始めたシニアのお手伝いサービスは、新たに「終活式」という取り組みにも発展しました。具体的な内容や予算についてお伺いした前回。最終回の今回は、現代社会において終活が私たちにもたらすものや、まごころサポートの今後の展望についてお聞きします。
<インタビューを最初から読む>
街の新聞屋さんが!?高齢者が抱える「困りごと」をお手伝い|MIKAWAYA21株式会社①
終活のお手伝いが引き出したものとは?
青木さん(以下、「青木」):終活サービスを始めて感じるのは、終活がみなさんに与えるメリットです。シニアのみなさんは、先延ばしにしていた終活に取り組み、最後までやりきったとき、「こんな気持ち良いものなのか」とおっしゃいます。頭のなかがすごく整理されるし、ありがとうを伝えたい人に対して、ちゃんと生きているあいだに自分の言葉で伝えられたことに満足感があると。
ーー死に関することをきちんと見つめることで、「生」が輝き出したんでしょうか。
青木:「これからやりたいことがたくさん湧いて来た」とおっしゃる方もいますから。もう年金も少ないし、いつ死んでもいいわって思っていたのが、また元気が湧いてきたし、これからアルバイトでもしようか、とか旅行もしてみようか、とかですね。
ーーなるほど。
青木:終活サービスを通して、自分たちのミッションが見えました。「高齢化社会の課題をまごころと『ハレ』の日で解決していく」ことです。ハレとケの「ハレ」ですね。※日常と非日常。
終活式の様子は想像していた以上に華やかで、明るくて、参加者のみなさんが「また10年先にもみんなで集まりたいね」と言うほどでした。
高齢化社会、少子高齢化に関連したニュースって、すごくネガティブに報道されやすいけれど、そこに「ハレ」の日を持ち込めたことにすごく意義を感じます。これまでの活動を続けてきて、最後のピースが埋まった気がしています。
ーー7年間の集大成のような。
青木:7年前にまごころサポートをスタートして、軽作業のお手伝い、健康のお手伝い、そして最後は終活のお手伝い。終活のお手伝いが一番難しかったですけどね。
しかし、終活に「終活式」という「ハレ」の日を持ち込むことによって、終活に取り組むシニアのみなさまに、目的をひとつ提示できたかなと。友だちを呼ぶ、終活式の日までに、きちんと終わらせるぞ!という動機付けというか。
ーーそれは終活のネックになっていることですね。シニアの方々自身のイメージを変え、取り組み動機付けを提示したのは大きいことだと思います。
青木:あとは、ミスマッチを防ぐこともできているのではないかと思っています。ときどきシニアが葬儀などで悪徳業者の被害に遭ったという報道を見かけますが、これはやはり準備しておくことである程度防げます。
なにも勉強していない状態で、いきなりいろんなことを決めなければならない状況になると、正常な判断ができないですよね。相手が悪徳業者じゃなかったとしても、「あれでよかったんだろうか……」という不信感みたいなものが残ってしまう。これは完全にミスマッチです。あらかじめ必要なことを考えておくことができれば防ぐことができる部分もあります。
ーー業者も利用者もお互いに気持ちのすれ違いがないようにしたい場面ですよね。
青木:はい。そして、すれ違いを防ぐという意味では、ご家族のトラブルもそうです。家族のなかでも、お金がからんでくるとトラブルになってしまう例も少なくありません。できるうちに終活に取り組めば、事前に信託しておくとか、遺言をきちんと作っておく、生前贈与しておく、という選択肢があります。専門家の力も借りながら、少しずつ進めれば、無用な揉め事を避けることができます。
ーー大切なことですね。
まごころサポートのミッション
(MIKAWAYA21のウェブサイトより)
青木:僕たちは、高齢者の課題は大きくわけて2つあると考えています。
ひとつは「さびしさ」です。高齢者は口には出さなくても、いろんな意味でさびしさや不安を抱えておられるなと感じています。まずはそれを解決できるところは解決していきたい。
もうひとつは「信じることのできる人がそばにいない」ということです。
ーーああ、それはありますね。
青木:この「さびしさ」と「信じられる人がいない」という2つの課題を、なんとかまごころサポートと終活式というハレの日で解決してきたいんです。だから、僕たちは終活の分野だけでやっていこうとは思わないんです。
ーー素晴らしいことだと思います。
青木:やっぱり草むしりであったり、電球交換であったり、網戸の張り替えのお手伝いをしたりしながら、地域に根を下ろして、最後までそばでお手伝いするっていうかたち。最後だけ出てきて終活だけをいきなりやろうとする業者さんって多いけれど、僕たちはそういうのはしたくないので。
そこだけじゃないよ、と。終活も良いけど、その手前がものすごく大事なんだよ、ということを思っているので。
これからの「終活式」展望
ーー終活式に関しては、まだ始まったばかりのサービスですが、今後考えていらっしゃることがあればお教えいただけますか?
清水さん(以下、「清水」):「みんなの終活式」については本当にまだ構想段階なのですが、いろいろ考えていることはありまして。たとえば、どのようなキーワードやくくりでみなさんに集まってもらうかとか。
ーーキーワードですか?
清水:最初の提案としては、たとえば「今年お仕事をリタイアされた方」という共通項のキーワードで集まってもらうという案。年齢というよりは、仕事をやめたばかりという境遇/状況であるとかをキーワードにして集まっていただくのも面白いかなと。けれど、今はやはり年齢でくくるのがまずは良いかなと思っています。
ーー生まれ年が一緒だったら、共通の話題も多そうですしね。
清水:これまでの人生を振り返る、というワークなどもできそうです。
ーーどういう形態での開催をお考えなんですか?
清水:私たちは新聞販売店からの出発なので、これもやはり新聞社がやる価値があるんじゃないかと思っています。新聞社のホールを借りたり、新聞に広告を載せたりということもできますし。
あとは、これは終活というよりも、その前段階ですが、地域で新たな共通項で人々が集まれるような機会をつくりたいと思っています。
ーーさきほどは「仕事をリタイアしたばかり」という共通項の案もお聞きしましたが、前段階ということは、もう少し若い世代も視野に入れていらっしゃるということでしょうか?
清水:たとえばですが、子育てが終わったあとのお母さん世代に集まっていただくのも良いのではないかと思います。
大人になってから身の回りで新たに友人をつくるというのは難しい部分があります。自治会とか老人会といった地域の集まりは、すでに組織ができあがってしまっています。それ以外にも、なにか集まりが形成されるようなきっかけがあれば、仲間もできるし、終活への取り組みハードルも下がるのではないかと。
ーー子育てが終わった世代ですか。
清水:はい。これは私自身の経験でもあるのですが、子どもが手を離れるって、親にとってはかなり大きな区切りなんです。ここからは自分の人生ですよ、とか言われても戸惑ってしまうというか。趣味もそんなにないし、これで仕事まで退職したら自分はどうなるんだろう……って思ってしまいます。
ーーなるほど。
清水:空の巣症候群※とも言うらしいです。仕事をしていると、特に地域でのつながりは希薄になりがちですが、かといって今の段階で私たちがジョインできるような集まりってないんですよね。老人会でもない、ママさんサークルでもない……ってなったときに、受け皿になれるようなものがあればと思うんです。
※空の巣症候群:子どもが就職や結婚で家を出たときに、親が喪失感や憂鬱や不安を抱える反応のことを一般的に空の巣症候群と呼ぶ
ーー地域に対してなにかできないか、というのがまごころサポートですもんね。
清水:はい。そうなると、終活式の年齢的な対象というのは定まってないんです。高齢の方が比較的多くはなるのかもしれませんが。
若い年代の人にも、実際に終活まではいかなくても、終末期医療の話を伺うとか、自分が死ぬときのイメージを持ってみるワークとか、そういったことを体験できる機会があっても良いのではと。
ーー死は、いつ誰に訪れるかなんてわからないですからね。なかなか40代50代だと「終活」との距離感も掴みにくいかもしれないですが。
清水:自身の死は遠いものに思えても、ご家族全体の問題と捉えていただければもう少し身近かもしれません。終活の対象になるのはシニアの方々である場合が多いのは確かですが、本当は何歳の方にやっていただいても良いんです。
ーーー
死は誰にでも平等に訪れるものです。普段は、どこか遠くに置いておきたくなる事実。しかし、いつかやってくる自分の死に目を向けてみることは、今生きている人生について考えることと地続きなのです。
より良く生きるための「終活」。少し立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか?
<インタビューを最初から読む>
街の新聞屋さんが!?高齢者が抱える「困りごと」をお手伝い|MIKAWAYA21株式会社①
終活のお手伝いが引き出したものとは?
青木さん(以下、「青木」):終活サービスを始めて感じるのは、終活がみなさんに与えるメリットです。シニアのみなさんは、先延ばしにしていた終活に取り組み、最後までやりきったとき、「こんな気持ち良いものなのか」とおっしゃいます。頭のなかがすごく整理されるし、ありがとうを伝えたい人に対して、ちゃんと生きているあいだに自分の言葉で伝えられたことに満足感があると。
ーー死に関することをきちんと見つめることで、「生」が輝き出したんでしょうか。
青木:「これからやりたいことがたくさん湧いて来た」とおっしゃる方もいますから。もう年金も少ないし、いつ死んでもいいわって思っていたのが、また元気が湧いてきたし、これからアルバイトでもしようか、とか旅行もしてみようか、とかですね。
ーーなるほど。
青木:終活サービスを通して、自分たちのミッションが見えました。「高齢化社会の課題をまごころと『ハレ』の日で解決していく」ことです。ハレとケの「ハレ」ですね。※日常と非日常。
終活式の様子は想像していた以上に華やかで、明るくて、参加者のみなさんが「また10年先にもみんなで集まりたいね」と言うほどでした。
高齢化社会、少子高齢化に関連したニュースって、すごくネガティブに報道されやすいけれど、そこに「ハレ」の日を持ち込めたことにすごく意義を感じます。これまでの活動を続けてきて、最後のピースが埋まった気がしています。
ーー7年間の集大成のような。
青木:7年前にまごころサポートをスタートして、軽作業のお手伝い、健康のお手伝い、そして最後は終活のお手伝い。終活のお手伝いが一番難しかったですけどね。
しかし、終活に「終活式」という「ハレ」の日を持ち込むことによって、終活に取り組むシニアのみなさまに、目的をひとつ提示できたかなと。友だちを呼ぶ、終活式の日までに、きちんと終わらせるぞ!という動機付けというか。
ーーそれは終活のネックになっていることですね。シニアの方々自身のイメージを変え、取り組み動機付けを提示したのは大きいことだと思います。
青木:あとは、ミスマッチを防ぐこともできているのではないかと思っています。ときどきシニアが葬儀などで悪徳業者の被害に遭ったという報道を見かけますが、これはやはり準備しておくことである程度防げます。
なにも勉強していない状態で、いきなりいろんなことを決めなければならない状況になると、正常な判断ができないですよね。相手が悪徳業者じゃなかったとしても、「あれでよかったんだろうか……」という不信感みたいなものが残ってしまう。これは完全にミスマッチです。あらかじめ必要なことを考えておくことができれば防ぐことができる部分もあります。
ーー業者も利用者もお互いに気持ちのすれ違いがないようにしたい場面ですよね。
青木:はい。そして、すれ違いを防ぐという意味では、ご家族のトラブルもそうです。家族のなかでも、お金がからんでくるとトラブルになってしまう例も少なくありません。できるうちに終活に取り組めば、事前に信託しておくとか、遺言をきちんと作っておく、生前贈与しておく、という選択肢があります。専門家の力も借りながら、少しずつ進めれば、無用な揉め事を避けることができます。
ーー大切なことですね。
まごころサポートのミッション
(MIKAWAYA21のウェブサイトより)
青木:僕たちは、高齢者の課題は大きくわけて2つあると考えています。
ひとつは「さびしさ」です。高齢者は口には出さなくても、いろんな意味でさびしさや不安を抱えておられるなと感じています。まずはそれを解決できるところは解決していきたい。
もうひとつは「信じることのできる人がそばにいない」ということです。
ーーああ、それはありますね。
青木:この「さびしさ」と「信じられる人がいない」という2つの課題を、なんとかまごころサポートと終活式というハレの日で解決してきたいんです。だから、僕たちは終活の分野だけでやっていこうとは思わないんです。
ーー素晴らしいことだと思います。
青木:やっぱり草むしりであったり、電球交換であったり、網戸の張り替えのお手伝いをしたりしながら、地域に根を下ろして、最後までそばでお手伝いするっていうかたち。最後だけ出てきて終活だけをいきなりやろうとする業者さんって多いけれど、僕たちはそういうのはしたくないので。
そこだけじゃないよ、と。終活も良いけど、その手前がものすごく大事なんだよ、ということを思っているので。
これからの「終活式」展望
ーー終活式に関しては、まだ始まったばかりのサービスですが、今後考えていらっしゃることがあればお教えいただけますか?
清水さん(以下、「清水」):「みんなの終活式」については本当にまだ構想段階なのですが、いろいろ考えていることはありまして。たとえば、どのようなキーワードやくくりでみなさんに集まってもらうかとか。
ーーキーワードですか?
清水:最初の提案としては、たとえば「今年お仕事をリタイアされた方」という共通項のキーワードで集まってもらうという案。年齢というよりは、仕事をやめたばかりという境遇/状況であるとかをキーワードにして集まっていただくのも面白いかなと。けれど、今はやはり年齢でくくるのがまずは良いかなと思っています。
ーー生まれ年が一緒だったら、共通の話題も多そうですしね。
清水:これまでの人生を振り返る、というワークなどもできそうです。
ーーどういう形態での開催をお考えなんですか?
清水:私たちは新聞販売店からの出発なので、これもやはり新聞社がやる価値があるんじゃないかと思っています。新聞社のホールを借りたり、新聞に広告を載せたりということもできますし。
あとは、これは終活というよりも、その前段階ですが、地域で新たな共通項で人々が集まれるような機会をつくりたいと思っています。
ーーさきほどは「仕事をリタイアしたばかり」という共通項の案もお聞きしましたが、前段階ということは、もう少し若い世代も視野に入れていらっしゃるということでしょうか?
清水:たとえばですが、子育てが終わったあとのお母さん世代に集まっていただくのも良いのではないかと思います。
大人になってから身の回りで新たに友人をつくるというのは難しい部分があります。自治会とか老人会といった地域の集まりは、すでに組織ができあがってしまっています。それ以外にも、なにか集まりが形成されるようなきっかけがあれば、仲間もできるし、終活への取り組みハードルも下がるのではないかと。
ーー子育てが終わった世代ですか。
清水:はい。これは私自身の経験でもあるのですが、子どもが手を離れるって、親にとってはかなり大きな区切りなんです。ここからは自分の人生ですよ、とか言われても戸惑ってしまうというか。趣味もそんなにないし、これで仕事まで退職したら自分はどうなるんだろう……って思ってしまいます。
ーーなるほど。
清水:空の巣症候群※とも言うらしいです。仕事をしていると、特に地域でのつながりは希薄になりがちですが、かといって今の段階で私たちがジョインできるような集まりってないんですよね。老人会でもない、ママさんサークルでもない……ってなったときに、受け皿になれるようなものがあればと思うんです。
※空の巣症候群:子どもが就職や結婚で家を出たときに、親が喪失感や憂鬱や不安を抱える反応のことを一般的に空の巣症候群と呼ぶ
ーー地域に対してなにかできないか、というのがまごころサポートですもんね。
清水:はい。そうなると、終活式の年齢的な対象というのは定まってないんです。高齢の方が比較的多くはなるのかもしれませんが。
若い年代の人にも、実際に終活まではいかなくても、終末期医療の話を伺うとか、自分が死ぬときのイメージを持ってみるワークとか、そういったことを体験できる機会があっても良いのではと。
ーー死は、いつ誰に訪れるかなんてわからないですからね。なかなか40代50代だと「終活」との距離感も掴みにくいかもしれないですが。
清水:自身の死は遠いものに思えても、ご家族全体の問題と捉えていただければもう少し身近かもしれません。終活の対象になるのはシニアの方々である場合が多いのは確かですが、本当は何歳の方にやっていただいても良いんです。
ーーー
死は誰にでも平等に訪れるものです。普段は、どこか遠くに置いておきたくなる事実。しかし、いつかやってくる自分の死に目を向けてみることは、今生きている人生について考えることと地続きなのです。
より良く生きるための「終活」。少し立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか?