街の新聞屋さんが!?高齢者が抱える「困りごと」をお手伝い|MIKAWAYA21株式会社「まごころサポート」①
「終活」という言葉を聞くようになって、ずいぶん経ちます。
字面から、人生を終えていくための活動、と認識している人も少なくないでしょう。またシニアが主な対象であることが多いため、若い人には関係のない話とも考えられていると思います。
しかし、この終活を「終えるための活動」ではなく、「これから生きていくための活動」と定義して、新たな生きがいや繋がりを生もうと活動する会社があります。
なんとその会社は、街の新聞屋さんの「お手伝い」からはじまりました。今回は、サービスのはじまりについてお伺いします。
<MIKAWAYA21>
少子高齢化が深刻化する日本で、「子供からシニアまで安心して暮らせる社会」の実現を目指し、人々の暮らしのすぐそばで手助けができるビジネスを展開する。
さまざまな地域密着型の企業と連携し、サービスを全国の人々に届けようと取り組んでいる。
シニアの「困った」をお手伝い!まごころサポートとは?
今回は、シニアの生活や健康のサポートに関わる事業や、終活への新たな取り組みを行うMIKAWAYA21株式会社の青木さんと清水さんにお話をお伺いします。
ーーまずは、まごころサポートの内容について簡単に教えていただけますか?
青木さん(以下:青木):「ちょっと困った」のお手伝いから「本当に困った」のお手伝いまでお任せください、ということでやっています。
まず「ちょっと困った」のお手伝いは、シニアの方の暮らしで生じる、ちょっと困った出来事をサポートするものです。本当に簡単な軽作業、たとえば草むしりや電球交換から、家に溜まった古本の処分、大きな家具の移動、あとはエアコンの掃除などの簡単なハウスクリーニングもお手伝いできます。まごころサポートでは、これらのサービスを全国で行うことができるよう、研修制度を整え、多くの方にご参加いただいています。
(MIKAWAYA21 ウェブサイトより)
つぎに、「ずっと元気」のお手伝い。現代は、平均寿命が伸びたことで、平均の寝たきり年数が増えたり、認知症の問題も大きくなっています。そのなかで僕たちは特に認知症に焦点を当てて、予防の運動教室を各地の公民館などで開くことができる仕組みを作りました。マニュアルを整備して、ビデオ教材やテキスト、簡単なストレッチをしていくという内容です。この教室は、地域のコミュニティづくりにも一役買っています。
(MIKAWAYA21 ウェブサイトより)
そして「本当に困った」のお手伝いは、終活に関するものです。終活というと、ご興味のある方は多いのですが、じゃあ具体的にどうしたら良いのかとなると難しい。でも本当に困った部分って、家族にもなかなか相談しづらいんです。そこを僕たちがサポートさせていただくことで、遺産や相続のトラブルを防いだり、これからの人生をより良く生きていくためのお手伝いにもなるかなと思っています。
あとで詳しくお話しますが、「終活式」という新しい取り組みも始めることにしました。 (「終活式とは?より良く生きるための再スタート!どんな内容?」)
(MIKAWAYA21 ウェブサイトより)
ーーなるほど。終活のサポートを中心としたサービスはよく見かけますが、MIKAWAYA21さんでは、シニアのより良い生活の延長線上に終活もある、という印象を受けます。
はじまりは街の新聞屋さんが始めた、ちょっとしたお手伝い
ーーどのような経緯で、これらのまごころサポート事業は始まったのですか?
青木:はじまりは、新聞屋さんです。僕は最初、読売新聞を売っている街の新聞屋さんにいたんです。そこで営業のお仕事だけをしていたんですが、しばらくして自分でも新聞屋さんを一件経営してみないか?と声をかけていただきました。
ーーいろんな街に新聞屋さんがあって、そのうちのひとつを任された、ということですね。いつごろのことですか?
青木:2000年くらいから15年ほど新聞屋さんをしていました。最初の10年は絶好調で、どんどんお客さんを増やしていくことができましたが、やがて勢いが落ちるようになりました。若い人が新聞を取らなくなったんです。
ーー若い人は新聞取らないですよね。
青木:はい。読者数が伸びなくなってきたころ、読者の年齢調査をしました。すると、新聞を取っているのはもう50歳以上がほとんどでした。特に一番コアな層は、60代や70代の方々でした。
そうなると、この年齢層の方々に、野球チケットをあげますとか、洗剤をあげます、という風な販売促進をしてもあまり意味がないというか……みなさん喜ばれないんですよね。
そこでじゃあ、この方々が喜んでくださることってなんだろうと考えるようになりました。
生の声を聞いてみたくて、20人の読者さんを会社にお呼びして、グループインタビューをしてみたところ、やっぱり「野球チケットをもらって嬉しいよ!」なんて方は一人もいなくて(笑)。
ーーグループインタビュー!面白いですね。ほかにはどんな発見があったんですか?
青木:そこで、僕たちに望むことってなんですか?とお尋ねしたところ、出てきた答えは、「灯油の一斗缶を運んでほしい」とか「高いところの電球交換を頼みたい」とかそういうことだったんです。
子どもたちが成長して家を出ると、とても小さな困りごとがたくさん家のなかには出てくるんです。電球を一個交換してほしいだけのことで、市役所に電話するわけにもいかないからということで、子どもが帰省するまで暗い部屋のまま過ごしている方も少なくないことを知りました。
ーーそうなんですね。暗い部屋でずっと過ごすのはちょっと……怪我のもとにもなるし、気分的にもあまり良くなさそうですね。小さなことが一つできないだけで、生活の質って落ちてしまいかねないんですね。
青木:そうなんです。ほんの小さなこと。それなら僕らはすぐに駆けつけることができるから、ということで「まごころサポート」という名前で、サービスを始めることにしました。
ーーお代はどのくらいで始められたんですか?
青木:最初は無料だったのですが、お客さんの方から、「無料は頼みにくい」とか「借りができてしまうようで、新聞をやめさせてもらえなくなるんじゃないか、と怖い」といった声が出まして。では、お代をいただこうということで、30分500円で始めました。
※現在のまごころサポートは20分500円、1時間1500円です。
ーーイーブンな関係の方が遠慮せずにお願いできそうですもんね。効果はどうでしたか?
青木:このまごころサポートを始めてから、読者数はどんどん増えていきました。他社さんから乗り換えてくださる方もずいぶんいらっしゃって。
ーーそれはなぜでしょう?
青木:たとえば他社の新聞を30年50年取り続けておられる方にとっては、特に読売新聞に変える必要ってなかったんですよね。でも口コミでまごころサポートのことを知って、実際に利用してくださると、それをきっかけに乗り換えてくださる方が多かったんです。
ーー読売新聞を取っておられない方も、まごころサポートは利用できるんですか?
青木:はい、そうです。
ーーでも、青木さんたちは大変になるんじゃないですか?20分500円は、それだけで利益になるような値段設定ではないですし。
青木:それはそうなんですが、ただ一方で、今まで会社が使っていた5000万円とか7000万円とかの販売促進費としての、野球のチケットや洗剤を仕入れるコストが全くいらなくなったわけです。
営業をしていた従業員も、今までは「飛び込み訪問営業行ってこい!」って言われていたのが、「困っているおばあちゃんやおじいちゃんのところへ行ってお手伝いしておいで」と変わっていって、従業員満足度も上がってきたんです。
「新聞取ってくださーい!」と訪ねても嫌がられるばかりだったのが、「ちょっと手伝って」と呼ばれて行くと、「ありがとう」と言ってもらって帰ることができるんですからね。
ーーサービスを受ける側、提供する側、両者にとって嬉しい仕組みですね。
その街に住む人のためのサービスを
青木:このサービスを始めてから、改めて自分たちがその地域で商売をしていることの意味が出てきたと感じました。ただ新聞を配るだけが僕たちのミッションじゃないね、ということを共有できて、社内の組織も強くなっていきました。
ーーなるほど。その街に根を張っている新聞屋さんだからこそできたことですよね。しかも、よくわからない業者に頼むよりも、街の新聞屋さんに頼めるならその方が、利用者の方も安心でしょうし。青木さんが担当していた地域はどこだったんですか?
青木:大阪の寝屋川市と、奈良の生駒市にお店を持っていました。
ーーなるほど。生駒なんかは高齢化してきているイメージがあります。
青木:高齢化もそうなんですが、生駒という地域は富裕層が多いんです。大きなお家を持っておられるのだけど、もう一人で住むには大きすぎるんですよね。それで、マンションに引っ越そうか、となる。でも、なかには、本当は思い出のつまった家にこのまま住んでいたいという人も多いみたいです。
(MIKAWAYA21 ウェブサイトより)
そういう方たちにお話を伺ってみると、そのお家に住み続けられない原因ってそんなに大きなものではないんですよ。少しサポートしてあげられれば……たとえば1か月に2回お訪ねして、1〜2時間ほどのお手伝いで、変わらずに住んでいけるんです。
ーー大きい家を持て余すシニアの方は多いでしょうね。
青木:はい。家を維持するっていうのは大変なことです。そういった事情を抱えた方々へのサポートが、口コミで広がって多くの方にご依頼いただくようになっていきました。
シニアの小さな困りごとを、街の新聞屋さんがお手伝い。新聞を配る人、受け取る人というだけの関わりに、「ありがとう」の繋がりが生まれたきっかけについて、MIKAWAYA21の青木さんにお伺いしました。
次回からは、健康や終活分野にまで及ぶ、まごころサポートのさらなる展開や、そのミッションについてお伺いしていきます。
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