大人も子どもも、若者も!みんなが集う高齢者福祉施設が京都にある!
年を取るってどんな感じだろう?
若いときに想像していたのと、どんなふうに違うだろう?
「高齢者」という言葉でひとくくりにされたり、
「最近の若者」という言葉でひとくくりにされたりすると、
どうも見えなくなってしまうものがある気がする。
今回のインタビューでは、そんな大人も、子どもも若者も、みんなまぜこぜな場所で働く方々にお話を伺います。さまざまな世代の人たちが集う、みんなの居場所づくりに取り組む、高齢者福祉施設西院の河本さんと田端さんです。
京都の西!多彩な取り組みを行う高齢者福祉施設がある!
ーーまずは高齢者福祉施設西院の基本情報を教えていただけますか?
河本さん(以下:河本):社会福祉法人京都福祉サービス協会という法人が運営している施設です。ホームヘルプサービス事業から始まった法人で、いまでは京都市内でのホームヘルプサービスのシェアがすごく広いです。
現在は、京都市内の各行政区に事務所を構えるくらいの規模になっていて、ヘルパーさんだけでも約1,000人は所属しています。法人全体でいうと3,000人弱くらいの職員がいます。
ーーとても大きな規模なんですね!ホームヘルプサービスも含めて5つのサービスを展開されているとお聞きしましたが。
河本:そうですね、大きくわけて5つの分野になるかと思います。
・在宅福祉サービス(障がい者支援含む)
・相談支援サービス
・施設福祉サービス
・訪問看護サービス
・児童館
この在宅福祉サービスのなかにホームヘルプサービスやショートステイ、デイサービスが含まれます。
ーーそのなかに河本さんたちの取り組みも含まれるということですね。具体的にはどういった活動をされているんでしょうか?
河本:京都の西側に位置する西院と山ノ内に事業所がありまして、そこの担当をしています。
山ノ内は「地域密着型サービスセンターwelcome やまの家」として、民家を改修した施設で、収入の柱は小規模多機能型居宅介護という事業です。通いと訪問と泊まりがパッケージ化されたものです。ここには、「Café e-ばしょ」というコミュニティカフェもやっていて、様々な機能を合わせ持つ本当に小規模多機能な施設なんです。
(https://www.kyoto-fukushi.org/office/detail/ynu/)
西院の施設には、デイサービスセンターや、京都市からの委託事業で地域包括支援センターを運営しています。ほかに、ケアマネジャーが常駐していている居宅介護支援事業所もあります。西院でも、コミュニティカフェを運営したり、地域の居場所づくりの取り組みをしています。
ーーいま、注目されている取り組みだとか。
河本:一応いろんなところから評価はいただくんですけど、やっぱりそれは社会福祉法人が地域貢献や公益事業を多様にすることが珍しいんでしょうね。なんでだろう?って。うちは社会福祉法人としては京都で一番大きな法人になるんですけど、そのわりに「よくそんなに自由にやってるよね」って言われます。
みんなの居場所をつくりたくて始めた取り組み
ーー河本さんたちの取り組みについて詳しくお聞きしても良いですか?
河本:西院と山ノ内、2つの施設にまたがって、さまざまな取り組みが行われています。職員も西院と山ノ内で連携して、同じ方向を向いて取り組めるように研修も一緒に受けたりしています。
<地域密着型サービスセンターwelcome やまの家(以下、やまの家)京都・山ノ内>
(https://www.kyoto-fukushi.org/office/detail/ynu/)
・小規模多機能型居宅介護事業所
・コミュニティカフェ 「Café e-ばしょ」
・配食サービス
・保育ルーム運営と、子育てサロン「事業所内保育所(PALパル)」
<高齢者福祉施設西院(京都・西院)>
(https://www.kyoto-fukushi.org/office/detail/sin/)
・コミュニティカフェ「@~カフェ」
・フリースペースの開放
・配食サービスのお弁当づくり
・多世代交流食堂「おいでやす食堂)」
ーーやまの家の施設はどのような取り組みですか?
河本:やまの家の方では「Café e-ばしょ」というコミュニティカフェを運営していますが、こちらは毎日型で運営しており、本格的なカフェになっています。カフェの名前は「いい場所」の「いい」と “e” をかけています。笑
ほかには、配食サービスもやっています。西院の厨房でお弁当を作っていて、それを登録されている方に配達しています。
やまの家の売りの1つとしては、事業所内保育ということで、保育ルームがあります。もちろん保育士が常駐していて、職員の子どもたちをお預かりします。それだけではなく、地域の方に向けたサロン活動も行っていて、親子で集まってきてもらって、カフェのランチを食べたり、交流をしたり、保育士からの保育のアドバイスをもらったり、ということができます。
ーーそれは素晴らしい取り組みですね。本当にいろんな世代の人のための場所なんですね。
河本:はい。保育ルームにやってくる子どもたちや、高齢者の方々の間で自然なかたちで交流が生まれるよう、いろいろな仕組みを作っています。
ーー西院の施設の方ではどんな取り組みをしていますか?
河本:西院もコミュニティカフェをしています。これは、地域のみなさんの居場所づくりとしてやっています。水曜日・木曜日のみの営業で、午前9時〜午後2時までやっています。これはデイサービスに来られる方だけではなく、地域のどなたでも来ていただけます。
運営は、ほぼボランティアの方にお任せしています。もちろん担当職員1人はついていますが、こういった場所で活動してみたいと言ってくださる方にボランティアとして各曜日3人くらい来ていただいています。コーヒーなどのドリンクと、あとはモーニングセットをお出ししています。
あとは、施設の2部屋をフリースペースとして無料で開放する取り組みもしています。ちょうどいまは体操教室の最中だと。一階に予約表があるので、それに早い者勝ちで書いてもらって。けっこうご利用される方は多いんですよ。
ーーいまは体操教室中なんですね。フリースペースは、ほかにどんな団体の方が利用されるんですか?
河本:体操教室は、介護予防推進センターが開催しています。高齢者の介護予防のための体操教室ですね。ほかにもいろんなサークルさんがいて、ママ友の会をしたり、踊りの稽古をしているサークルもあります。本当にさまざまな形で利用していただけています。
大人も子どもものんびり過ごす、多世代交流食堂「おいでやす食堂」
ーー高齢者の方に限らず、いろんな世代の方が来られるんですね。
河本:できるだけ、この建物にいろんな人が入ってきてくれたらなと思っています。ここが、みんなの集い場であったり、誰かの居場所になるように、いろいろ活動を進めていきたいんです。
多世代交流といえば、西院では多世代交流食堂「おいでやす食堂」という活動もあるんです。これは地域向けの活動でして、もう4年目になるんですが、毎月第3金曜日に夕方5時からやっています。一回につき120名くらいの方が来られるんですよ。
ーー120名ですか!それはすごいですね!
河本:子どもから大人までたくさんの方が集まります。子ども、大人、おじいちゃん、おばあちゃん……小学生や中学生も来たりしますよ。
ーーそういう若い人たちがくるのは、なぜでしょう。彼らにとって、どんな魅力があるんでしょうか?
河本:う~ん、なんで来るんでしょうねぇ?笑
一同:(笑)。
河本:なんででしょう。内容にすごく工夫があるということもなくて、ただただ自由なんですよ。
食堂といっても、食べ物はカレーライスとハヤシライスがメインです。それをもう鍋ごとドーンと置いてある。あとは、ボランティアさんとかが作ってくださる副菜……おかずとかサラダとかを置いておく。副菜と言いつつ、餃子や唐揚げが置いてあることもありますが(笑)。それをバイキング形式で好きなだけ取ってください、という形式にしています。
他になにかプログラムがあるわけではありません。食事をしたあとは、みんな好きな場所でのんびり過ごしています。フロアでは高齢者の方々が座っておしゃべりをしていて、和室は小さい子ども連れの親子さん、別の部屋には読み聞かせサークルの方が来られていたり、ベビーカステラを焼いている部屋もあります。
ーーそれはとても魅力的ですね。「こうしないといけない」がない場所なんですね。
河本:あちこちコーナーだけは設けているので、あとは好きに過ごしてください、という。
ーー1回でかかるコストってどのくらいになるんですか?
田端さん(以下:田端):食材とか場所代とかで、もろもろ3万円くらいですかね。参加費を少しもらっています。中学生までは無料、高校生以上の学生は100円で、大人が300円。3万円のうち、半分くらいは参加費でまかなうことができるのですが、残りはまだ助成金に頼っている感じです。
ーー助成金はどういったところが出してくださるんですか?
河本:企業さんはいま「子ども食堂」っていうと、けっこう助成金を出してくださるところが多いので、そういうのに頼っていますね。
ーー最初はどういったきっかけで始められたんですか?
河本:うちの食堂は、セカンドハーベスト京都さんっていう、フードバンクに声をかけていただいて始まりました。京都で広く活動されていて、市内に子ども食堂を増やしていきたいということでした。近隣の大学の先生を通じていただいたお話でしたが、時流にのって「やろか」ということで始めました。
ーーそれが4年も続くだなんて、すごいことです。運営は職員の方だけですか?
河本:職員は有志を募りました。職員本人の意思を無視して勝手に役割をつくってしまうと、どうしても負担感が出るし、正直たくさんの取り組みをしているので、本当に「やります」と手を上げてくれた人に。彼(田端さん)もその一人です。
あとは、京都光華女子大学の学生さんにボランティアとして、いろいろと手伝ってもらっています。
ーーなるほど。
河本さんや田端さんが手がける高齢者福祉施設でのさまざまな取り組みをご紹介しました。「高齢者」と冠した施設ですが、そこには子どもから大人までが集まります。次回は、河本さんたちが「多世代交流」や「居場所づくり」をキーワードに活動している理由や、そこに生まれた変化についてもお話いただきます。
多世代交流食堂を運営した結果、地域に安心が生まれた