みまもりあいからまちづくりへ 問われるのは「寺院の役割」?

前回に引き続き、社団法人セーフティネットリンゲージ「みまもりあいプロジェクト」代表 高原達也さんからお話を伺っています。
日本人に根付く助け合い、互助の精神を根幹として地域の見守りあいを促進する、これまでにない形のアプリを開発された高原さんですが、最終回となる今回は、見守りからまちづくりへという、「みまもりあいプロジェクト」の今後の展望についてお話を伺いました。
 
インタビュー第1回 日本人の優しさ アプリで始める「みまもりあい」
インタビュー第2回 地域やお寺から発信!みんなで取り組む「互助」
 
 
 
見守りからまちづくりへ
 
高原:ここまでお話してきたのは見守りに関してですが、今後は日常支援の活動もやろうと考えています。
この日常支援を、京都でお寺と一緒にできないかと考えているんですよ。例えば日常支援として「地域の情報が循環できるようアプリでサポートできないか、また「災害時にアプリで連携が取れる」といった態勢を京都府と準備しているところなんです。
 
――なるほど。寺院も災害時に中心となって支援したという例は多くあります。そういった活動を支援するツールなんですね。
 
高原:「見守り」に関してはそもそも捜索依頼がそんなに頻繁に発生するものではない。そのためアプリの画面はいつも情報が配信されていない状態です。広告掲載もしないため。そこで考えたのが、地域の情報がこのアプリに配信されて、地域情報が循環する仕組みを作って使ってもらおうかと。
 
そうなると、高齢者だけでない全世代が対象になり、世代ごとに違う悩みが出てくると思います。
 
その悩みの解決策は「地域」にあると思うんです。
 
しかし、実際にNPOや個人が地域の課題解決に取り組むとき、地域イベントや訓練の呼びかけのチラシを作っても「地域の人に見てもらう仕組み」が十分とは言えない状況があります。さらに今はコロナが発生しており、集まることもできないため、チラシも配ることができない。
 
――企画が素晴らしくても広報がうまくいかないと人が集まらないという問題ですね……。お寺から何かお知らせする場合も、そこに悩むことが多いです。
 
高原:その「地域の人に見てもらう仕組み」……つまり、よりわかりやすくダイレクトにお知らせができる環境づくりを、みまもりあいアプリが補完する構図です。
現在この基盤を準備中です。
 
――地域の人がみまもりあいアプリをダウンロードすると、地域の情報が見られるようになるという仕組みを作られる予定なんですね。自分の住んでいる地域で何か活動したい、発信したい、またどんな活動があるのか知りたいという方にはもってこいの取り組みですね!
「人々にもっとお寺に来てほしい」という思いを持ったお寺も、そういったツールを使って発信することで、より地域とかかわることができそうです。

 

 
――これからこのプロジェクトがどんどん進化すれば、「何かしたい」という人の数だけ地域が豊かになっていきますね。
新たな基盤づくりという今後の展望をお聞かせいただきました。最後に、寺院がこのアプリを活用することによっての期待や、寺院にとってのメリットは何でしょうか?

 
高原:そうですね……このまちづくりという新たな基盤ができたら、このアプリを活用してもらって、お寺あるいは僧侶なりの地域課題の解決方法を出していってもらいたいですね。どんな方法を提案していくのか?……そういった期待を持っています。
 
またこのアプリによってできることであり、かつ最大のメリットは、やはり互助の育成ではないでしょうか?これから、高齢者もスマホを利用する状況になっていったとき、情報連携できる環境があれば安心ですよね。その中心にお寺はなりやすいと思います。
 
――確かに、寺院は地域の人々の中継点となってきた歴史があります。お寺でコーラス教室をしたり、ゲートボールをしに来た方がお参りしていったりと高齢者を中心とした集まりが多いことを考えると、こういった既にあるご縁を活かすという型で取り組めるかもしれません。
 
このプロジェクトとお寺との共通点は、「利他」の精神であるように感じました。利他は他の幸せを願うものです。自分だけでなく他人の幸せも願う……つまり「困っている人がいれば助けよう」とすることと似ています。
この観点から見ても、このプロジェクトのコンセプトと寺院の役割には親和性が高いのかもしれません。この「みまもりあいプロジェクト」は、そういった精神が社会の大きな資源になりうることを示唆するプロジェクトでもあるんですね。

 
 
問われるのは寺院の役割
 
互助、という昔から日本人の心に根付いたものを基盤とした見守り合いのシステムから、さらにまちづくりへと発展させていく……。
高原さんのお話から、少子高齢化が進む日本社会においてもう一度、互助の持つ力が大切な資源になってくること、それを基盤にして高齢者の見守り合いやまちづくりなどが広まること、そこに信念を持って「みまもりあいプロジェクト」を続けられていることなどが伝わってきました。
 
これから、人と人とのつながり……見守り合いをより考えていかなければならなくなるでしょう。もちろん過度なつながりは束縛になりかねない側面があります。
 
しかし、社会の中につながり合いや見守り合いが完全になくなると、一体どうなるのでしょうか?
弱ったとき、困ったときに助けを求められない、とても寂しい世の中になるのではないでしょうか?
 
そうならないためにお寺は、人々のコミュニケーションを取りもち、地域にはたらきかけていく力や役割が問われていくと思います。
それは、実際にお寺とご門徒とのコミュニティに見られるように、互助を育んできたお寺だからこそできることかもしれません。
 
「みまもりあいプロジェクト」の根幹となっている日本人の互助の精神は、お寺、ひいては仏教の持つ、「縁起」や「利他」の考え方が大きくかかわっています。
互助が日本の未来を支えるカギとなるならば、その起源であるお寺と「みまもりあいプロジェクト」が協力していくことは大いに意義があることとなるでしょう。
高原さんの「みまもりあいプロジェクト」は、経済だけではなく、人の互助の精神で社会を回していこうという取り組みです。またそれは、お金のためだけではなく、自他ともに生きる社会を支えるための取り組みでもあります。
 
もちろんお金は大事ですし、お金が暮らしを豊かにするのも事実ですが、あえて「そうではないところ」に着目し、生活することが、心豊かに生きることのできる社会の実現につながっていくのかもしれませんね。
 

 
高原さん、ありがとうございました。
   

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掲載日: 2020.07.26

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