介護はチームプレイ?超高齢社会における介護のあり方を聞く<前編>

介護はチームプレイ?超高齢社会における介護のあり方を聞く<前編>

 
「介護」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。「大変な仕事」、「自分の時間が無くなる」、「3K(きつい、汚い、危険)」といったイメージが思い浮かぶ方も多いかもしれません。
実際に「介護は大変」と話されるのは、「宇治市介護者(家族)の会」会長の中野 正子さん。宇治市介護者(家族)の会とは、1986年に介護者のつらさや心細さを少しでも和らげ、介護者を取り巻く環境を改善することを目指して立ち上げられた団体です。
 
今回は、「宇治市介護者(家族)の会」へインタビューを行い、昨今の介護事情や介護のコツなどを聞かせていただきました。
 

インタビューに応じる中野正子さん

 

 

「宇治市介護者(家族)の会」立ち上げのきっかけ

 
ーー「宇治市介護者(家族)の会」を立ち上げられたきっかけをお聞かせください。
 
中野 正子さん(以下、中野):1980年ごろの在宅介護は過酷なものでした。というのも、当時は長男の嫁が義理の親や実親の介護をすべて担うという暗黙の了解があり、しかも介護は隠れて行う風潮があったので、その鬱憤(うっぷん)を近所の人に話すことすらできなかったのです。
行政も介護については今ほど関心がなかったので、当事者同士の悩み事を話し合う、「宇治市ねたきり老人介護者(家族)の会」を1986年に発足させました。
その後、当時の委員長である田島さんが発起人となり、「寝たきり介護老人」の現状を把握するためのアンケート調査を行い、深刻な実態を行政に訴えました。
 
ーー昔は介護に対してある種の恥ずかしさがあったということでしょうか?
 
中野:そうですね。かつては介護サービスを受けるときに、そうした「暗黙の了解」を破る恥ずかしさゆえ、介護サービスの車両を家の前から少し離れたところに止めてもらうといったこともよくありました。
 
ーーやはり、周囲の理解がないのは心細いですよね。
 
中野:そうですね。親族の方から介護のしかたに関する不平不満をぶつけられて悩んでいるという声を多く聞きました。かといって、そうした方が介護を手伝ってくれるわけでもない。こうした悩みを泣きながら介護者の会に打ち明けられる方もたくさんおられました。今思えば、当時は今以上に大変な環境で介護をされていたのだと思います。
 

介護を取り巻く環境の変化

 
ーー今はどうでしょうか?
 
中野:現在は周囲の不理解に関して、悩みを聞くことは少なくなりましたね。
 
ーーそれはどうしてでしょうか?
 
中野:まず、介護を取り巻く環境が大きく変わりましたね。介護保険制度が出来てから、それまでは隠れて利用されていた介護サービスが、世間に知られるようになりました。介護が世間に知られるようになったことで、気兼ねなく公的なサービスを受けられるようになりましたよね。選択肢が増え、隠す必要もなくなったことで、心のゆとりができたのだと思います。
 
ーー介護の環境が変わった現在では、具体的にどんな悩みが寄せられるのでしょうか?
 
中野:一番多いのは経済的な悩みです。いろんな介護サービスが受けられるようになりましたが、その分経済的な負担も増えてしまいました。特に、国民年金のみで暮らされているような方は経済的な余裕が少ないので、受けられる介護サービスも限られてしまいます。サービスを受けられない分、代わりにご自身で介護をしなければいけませんので、体力的な負担は他の方に比べて増えますよね。
介護だけでなく、日常の買い物も大変です。よく「買い物難民」という言葉も聞きますよね。最近では自動車の運転免許を返納される方も増えてきましたので、移動手段はどうしてもタクシー等に限られてしまいます。となると、そうした部分でも経済的な負担は避けられませんよね。
 
ーー経済的に苦労されている方がたくさんいらっしゃるのですね。お仕事をしながら介護をされる方もいらっしゃるのでしょうか?
 
中野:経済的に厳しい方はパートで働きながら介護を行っています。ですが、働きながら介護を行うのは本当に大変です……。私もかつては両方行っていましたが、身体を壊してしまいました。
なんとか両立できたとしても、介護をする側に心の余裕が無いと、介護をする側とされる側がお互いにギスギスしてしまいます。経済的に余裕があるのであれば、無理をするよりは公的サービスを活用したほうが良いのではないでしょうか。
 
ーーつまり、働くのであれば公的サービスの活用、そうでないなら在宅でつきっきりとなるのですね。公的サービスを活用する他に、介護をする上でのコツはなにかありますか?
 
中野:何か趣味を持つことは大切ではないでしょうか。例えば美術館巡りとか。空いた時間に楽しみを作っておくことで、気分転換はできますよね。
ただ、介護でいちばん大事なのは「横のつながり」を作っておくことです。ひとりで苦しみを抱えるのはとてもつらいです。介護者同士のつながりを作っておくことで、つらい気持ちの発散にもなりますし、介護の情報や知恵の共有もできますね。
 

<編集後記>

 
「宇治市介護者(家族)の会」の発足から35年あまり、介護を取り巻く状況は大きく変わりましたが、それでも、介護が大変な負担であることには変わりません。
そんな中、介護で一番大切なのは「横のつながり」であると話す中野さん。横のつながりがあると、お互いに介護に関する悩みや情報を共有しやすくなります。
次回は、「宇治市介護者(家族)の会」の主なご活動や、今後の展望についてお伺いしました。
 

 
記事作成:他力本願.net
掲載日: 2021.06.01