介護はチームプレイ?超高齢社会における介護のあり方を聞く<後編>

介護はチームプレイ?超高齢社会における介護のあり方を聞く<後編>

 
「宇治市介護者(家族)の会」副代表 中野 正子さんへのインタビュー後編。
悩みを共有しづらいことから、介護者は孤独に陥りがちだといいます。そんな状況を救うべく立ち上がった「宇治市介護者(家族)の会」。孤独な状況に陥ることを防ぐためにも、介護者間での情報共有や、同じ介護者としての横のつながりを特に大切にされているといいます。
後編では、「宇治市介護者(家族)の会」の主な活動や今後の展望、介護における僧侶の役割についてお伺いします。
 

 

中野正子さん

 

 

イベントを通して得られる横のつながり

 
ーー介護者(家族)の会は、どのような活動をされていますか?
 
中野 正子さん(以下、中野):現在は、情報発信や相談を中心に行っています。主な活動は以下のとおりです。
 

「宇治市介護者(家族)の会」が行っている主な活動
①会報での情報発信(年4回)
②集いのイベントの実施(年2回)
③滋賀県の温泉での交流会(年1回)
④定期的な終活イベントの開催
⑤宇治市や社協のイベントで介護相談
⑥他団体との交流

 
ーー様々な取り組みをされていますね!どれが一番人気ですか?
 
中野:特に、③の滋賀県の温泉での交流会は人気ですね。毎年1回行っていますが、この日を楽しみにされている方もいらっしゃいます。気持ちよくお風呂に浸かったあと、美味しい食事をいただきながら日々の介護体験や介護にまつわる情報を交換しています。慰労と情報交換を兼ねたイベントですね。
 
ーーやはり、横のつながりは大切ですね。運営をされる上でのご苦労はどのような点になりますか?
 
中野:イベントの内容も毎年同じでは飽きてしまいますので、企画も考えていますが結構大変ですね。会報も年4回の発行となるとネタ探しに苦労します。ですが、会報は正会員さんや賛助会員さんをはじめ、市会議員の方にも読んでいただいています。なので、会報は私たちの生の声を行政へ届けるのに役立っていますね。
 

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介護の会が抱える課題

 
ーー「生の声」とのことですが、現状で抱えている問題はありますか?
 
中野:いま一番困っているのが、団体の後継者の問題です。一時は「ケアマネジャーさんが居るから我々は不要ではないか」との声があり、また会員数も減少してきたので団体の解散を検討したこともありました。
ところが、ある会員さんから「たとえ会員数が2人、3人になっても、この会は残してほしい」と強く要望され、存続へと舵を切ったのです。
 
おかげで、現在は40名そこそこの正会員でなんとか続けることが出来ています。
私も介護者の立場になって、心細くなることもありました。でも、そんな時に同じ介護者どうしの横のつながりがあることは大きな安心につながりました。その意味で、あの時諦めず続けてよかったと思いますね。
 
最近はケアマネージャーさんも人手不足が続き、1人につき50人も担当しているそうです。そうなるとひとりひとりの悩みを聞くのはどうしても難しくなりますよね。ですが、私たちがいることによって、自分自身がかつて介護で困ったときの気持ちや経験も交えて相談に乗ることができます。後はケアマネージャーさんと連携しながら私たちの役割を全うしたいです。
 

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僧侶が介護者と携われることとは

 
ーー僧侶が何か介護において役に立ちそうなことはありますか?
 
中野:例えば月参り(=毎月、故人の命日に行う法要)の時に、介護の悩みや愚痴を聞くといったことをしてもらえたらとても助かりますね。在宅の看取りに関しても、僧侶が関われることは多いのではないでしょうか。生前から僧侶が悩みに寄り添い、老いてゆく姿を宗教者の目線から見守るのは非常に大切だと思います。
 
ーー確かに、月参りを活かしたアイデアはたくさんありそうですよね。お話以外にも例えば、買い物や電球交換、重たいものを運ぶといった生活支援も考えられます。
 
中野:そういったことを僧侶の方に頼むのはなかなか恐縮してしまうかもしれません(笑)。ですが、そうした想いを持っていただけるだけでもとてもありがたいです。
僧侶に限らず、介護される立場になったときに、リラックスした状態で介護を受けられるような社会になってほしいですよね。ひとりが何人もの方の介護を担当するような状態ではギスギスしてしまいます。これからも、介護への理解がより進んでくれると嬉しいです。
 

<編集後記>

 
介護のお話をうかがう中で気づいたのは、「一人にしない、させない」ことの重要さです。中野さんが介護をされていた1980年当時と比べて、介護のための設備は良くなりました。しかし、それでも介護が大変な負担であることには変わりません。「介護は一人で行うもの」という固定概念から脱却し、介護者同士で情報や知恵を共有し、悩みを互いに聞くことで、つらさや心細さが和らぐのだと話す中野さん。僧侶にも、月参りと行った場を通して、介護にまつわる悩みや愚痴を聞くことは出来るのではないでしょうか。そうしたことも、立派な支援のひとつと言えるでしょう。また、そうした思いやりが、介護者の心豊かな生き方へとつながっていくのかもしれません。中野さん、ありがとうございました。

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掲載日: 2021.06.11

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