他者との関わり方がわからない。それでも人間は関係性に生きている|株式会社LITALICO<後編>

 

LITALICOという会社が目指す世界とは

 
ーーLITALICOの理念「世界を変え、社員を幸せに」にも、未来への視座、支援者側の充足といった意思が現われているように思うのですが、LITALICOという会社はどういう社風なんでしょうか?
 

LITALICO のHPより引用

 
田中:2005年設立で、現在社員が2000名ほどおりますが、ビジョンを非常に大切にする社風なんです。売り上げももちろん大事だけど、それより現場などでいかにビジョンに沿った実践が行われたかという方が重要視されます。社長は新卒2年目でLITALICOの社長に就任した人なのですが、彼自身もADHD傾向があるんです。自分が目指す世界はこれだと思ったらぐんぐんそこへ向かっていこうとする方で、逆に周囲がちょっと待てと社長を抑えるくらい(笑)。
 
ーー新卒2年目で社長就任ですか!?すごい……。ビジョンの実践の方が重要視されるというのはどういうことでしょうか?
 
田中:現場でこういう事例があったという報告があると、それは素晴らしいということで本社に呼ばれて表彰されたりとか、社内でコンセプトカップが開催されていて、LITALICOのビジョンや理念に即した実践事例を全国コンペにかけるとかですかね。
 
ーーそれはモチベーションも上がりそうですね。
LITALICOさんの理念である「世界を変え、社員を幸せに」について、田中さんご自身はどのように捉えておられますか?

 
田中:そうですね……、関わる全ての人たちが最大限力を発揮できるような社会を築いていくということでしょうか。「社員を幸せに」という部分は、働く人が幸せになることによって、そこに関わる他の人々にも幸せが伝播していくようなイメージですね。
 
ーーそれはLITALICOさんの社名の由来である「利他(りた)」「利己(りこ)」という言葉にも重なりますね。HPではこのような思いが掲げられています。
 

LITALICO のHPより引用

 
ーー自利利他という仏教の言葉は、自らの悟りを得ていくこと(自利)と他の人の救いのために尽くすこと(利他)を表していて、仏教徒の理想的な生き方として語られたりもします。
 
田中:先日事前打ち合わせでお会いしたときにそのお話を伺ってから、僕も改めてうちの会社の精神について考えてみたんですが、本当にこの自らの幸せと他者の幸せを実現していくっていうのは切り離せないことだなと思いました。
私たち社員が充足感を持って仕事をしていくことと、関わる方々の充足感って密接に関連している。
 
ーー難しいのは利己の「己」をどこまでの範囲で見ていくかではないでしょうか?「他」はわかりやすいですが、「己」の認識は人それぞれですよね。
 
田中:なるほど。うちの入社研修では会社のビジョンなどを読み解いていくんですけど、これって明確な着地点はないんですよね。「己」を「自分」と捉える人もいれば「家族」という単位で認識する人もいるし、僕なんかは同じ職場で働くスタッフも含めて「己」と見ます。
 
ーー仏教でも、問い続けることの大切さは語られます。自分の中に答えがあるんじゃなくて、ずっと問うていく営みに大切さがあるとも言えますよね。
 
田中:明確にこれだ!っていうものがあるとそれっきりになっちゃうけど、答えがないとなると問い続ける悩み続けるという営みが生まれますね。
 
ーーLITALICOさんはそういった「生きることを考える」会社という印象を受けます。人間は社会的な生き物である以上、社会のことも考えていかないといけない。自分の生き方だけではなく、そこを切り離さずに考えることには大きな価値があるんですね。
 

ーー他人との関わりを無視して自分は成り立ちません。「個性」や「あなたらしさ」という言葉をよく聞きますが、場合によってはそれも社会との関わりを断ち切っているという見方もできるのかもしれません。
 
田中:そうですね。本来「個性」とか「あなたらしさ」みたいなものって様々な人との関わりのなかで浮かびあがってくるものですもんね。他者との関わりのなかで初めて「あなたらしさ」が際立ってくる。
 
ーー「個性」や「あなたらしさ」が見出されていくことは尊いことですが、そこで痛みと悦のバランスが崩れて、悦の方に寄りすぎてしまうと、いびつなことになってしまう気もします。社会の求める自分と、こうありたいという自分の間で、ただただ自分が心地よいだけのものに寄っていくと痛みを知らないまま、よくわからないうちに孤立の道を歩んでしまうような……。
 
田中:僕の個人的な意見ですが、バランスは本当に重要だと思います。人って痛みを避けて快楽をとりがちになるじゃないですか?それはもうそういう性質ですが、でも、本当に痛みの経験が少ないと、ちょっとしたことで挫折や孤立に繋がってしまう。支援を考えるうえでも、心に置いておきたいことかもしれません。
 

ーーそう考えるとLITALICOという社名が先にりた(利他)で後がりこ(利己)という順になっているところも深読みできそうですね。利他……社会が求めることや、他者を支えるといった自分の外にあるものに自分を反応させていく、そしてそれが利己、自らの喜びとなっていく。
 
田中:確かに、必要とされているところに対して自分の強みが生きた瞬間っていうのは最高なんじゃないかなと思います。自分のためだけに、自分のやりたいことだけをやっていると、いずれ目的を見失ってしまう気もしますし。
 
ーー仏教には菩薩行といって、利他を極めていくところに悟りを見ていくという修行があるんです。そこには本当の意味での快楽があるといいます。真理に触れた快楽というか。
もちろん我々人間は限りある存在ですが、LITALICOさんの活動の先にはそういった景色が開けてきそうな気持ちがしてしまいます。他者のために自分の強みや思いが活かされているところに快楽を覚えるというか。

 
田中:利他の精神と利己の精神がつながりますね。本当の快楽か……。
 
ーー人間は独立して存在しているのではなく、関係性に生きる生き物ですよね。だから、関係性が良くなれば自分も良くなるというのは当然のことなのかもしれませんね。
 
田中:そうですね。自分だけの喜びではなさそうですもんね、本当の快楽とか喜びって。答えの出ない問い、もっといろいろ考えてみたくなってきました!
 
ーー関係性の良さといっても、じゃあ何が良い関係性と言えるのかとか……簡単に答えの出ることではないですしね。いろいろな分野の人で集まって頭を悩ませてみたい大切な問いを今日はたくさんいただきました。
 
田中さん、今日はありがとうございました!
 
 
 
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この記事は2018年6月に掲載されたものです。

 

   

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掲載日: 2021.06.18

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