★PICK UP|お寺で作る、オーダーメイドのお葬式|株式会社きあら<後編>
(写真提供:株式会社きあら)
前編では株式会社きあらさんに寺院葬を始められたきっかけと、寺院葬に特化することで見えた寺院の可能性についてお聞きしました。後編では前編に引き続き、寺院葬について詳しくお話をお聞きします。
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お寺でお葬式という選択│株式会社きあら<前編>
お寺って、こんな場所なんです
宮澤:実は寺院葬をするとき、お寺さんにしていただきたいことがあるんです。
――どういったことでしょうか?
宮澤:お葬式のとき、説明をしていただきたいんです。
ついこの間法事で、「説明してもらったことで家族も理解できてよかった」とおっしゃった方がいらっしゃいました。訳もわからずにしてきたお葬式の意味が、お寺でご住職に教えてもらってよくわかったと。私たちが少しかみ砕いてお話しする場合もありますが、やはりご住職に説明していただくと説得力が違うと感じました。
――お葬式の意味がわかることで、よりご自身の事として受け入れやすくなる側面があるのかもしれませんね。またそのためには葬儀会社さんにかみ砕いて説明していただくという連携も必要なことかもしれません。
齋藤:あとはお寺=お葬式や法事をする場所というイメージが強いですが、本来は生きている間に、一生懸命生きるために自分を見つめなおす場所であったり、悩み苦しんだ時にご住職に相談できたりする場所が本来のお寺だと思っています。そういったことも説明していただきたいですね。
お寺は結婚式もできます。結婚式は教会で行ない、子どもが生まれたら神社にお宮参りや七五三に行き、お葬式はお寺でという流れが多いですけど、全部お寺でもできることなんですよね。
――確かにお寺でできる儀式はお葬式だけではありません。
結婚式や初参式*1など人生の節目の儀式をお寺で行えることは、もっと皆さんに知っていただけたらありがたいですね。
宮澤:例えば、仏前結婚式のお写真が本堂に貼ってあると、それを見て「お寺で結婚式もいいね」と言いながらご覧になる方もいます。そういうところからお葬式以外のお寺の儀式に触れることができる。一地域からでも増えていけば仏前での儀式は案外広まるんじゃないかとは思います。
――年齢を重ねるごとに自分のいのちやご先祖のことを考える時間が増えるという人もいらっしゃるのではないでしょうか。そのためにはそういった場所が大事になってくるのかもしれませんね。
*1 初参式:生まれて初めてお寺にお参りする儀式のこと。
あなたに合ったお葬式にするために
――先ほどの話にもあった「葬儀会社と僧侶の連携」は、とても重要だと思うのですが、きあらさんは実際どのようにご住職と役割分担などをされているのでしょうか?そのなかでの気づきなどもあればお教えください。
齋藤:基本的にご住職には儀式に集中していただいて、我々は打ち合わせの中で知り得た情報で、必要だと思うことをご住職に共有します。ご住職も門徒さんのすべてを知っているわけではありません。情報を共有し、ご住職と我々葬儀会社スタッフがご遺族に寄り添い故人を送るために同じ方向を向くことが大切だと思っています。
宮澤:故人の人となりや戒名(法名)についてなどいろんなお話を聞きますね。葬儀会社と僧侶の連携という点では、戒名を一緒に考えないかと持ち掛けてくださったご住職もいらっしゃいました。
――葬儀会社と僧侶の連携によって、お葬式がオーダーメイドに近いものになっていきますね。情報面以外の連携についてはどうですか?
齋藤:寺院葬をするにあたっては、我々の仕事はハード面の用意や段取りをすることですね。ご住職やご遺族の都合を聞いて日程の調整や式場の飾りつけを行います。
宮澤:あと儀式の中での簡単なお手伝いでしょうか。司会をすることもありますが、ご住職によっては自分のペースで進行される方もいるのでケースバイケースです。
――連携があってこそお葬式が円滑に進みやすくなりますね。
齋藤勇人さん
宮澤昌也さん
――ちなみに、お寺でなくホールでお葬式をしたいという方のご意見にはどのようなものがあるのでしょうか?
宮澤:ホールだと全部決めてくれて、こちらは何もしなくていいから楽だというイメージもあるかと思います。
齋藤:人って多分「普通」を選びたがるんですよ。寺院葬とホール葬では、ホール葬が今のところ「普通」です。例えば我々が祭壇のご提案をするときも、「どれが普通ですか?」と聞かれます。そこを崩して、その人に本当に合ったお葬式にしていくことが課題ですね。
宮澤:昔と逆ですよね。昔は自宅葬が一般的だったのが、一度ホール葬の便利さが広まってしまうと、今度はみんなホール葬を選ぶようになってしまいました。選択肢が増えるだけならよかったのですが。
齋藤:ですが寺院葬を広めていくには、今がチャンスだと思っています。今は感染症の影響で大人数のお葬式ができず、家族葬が大変増えています。その家族葬を寺院ですると、厳かで、珍しくて、さらに費用も抑えられるとひろまって、そこから寺院葬が増えるといいなと思います。そしてこれから寺院葬専門の葬儀会社を起業してくれる仲間が増えてくれたら嬉しいですね。
――この感染症の影響でお葬式の状況も変わってきています。そんな状況下でこそ寺院葬の魅力が広まる可能性を感じました。
では、より良いお葬式をするために、葬儀会社の視点で僧侶はどのようなことに気を付けたほうがいいと思われますか?
宮澤:ケースバイケースですね。あのご当家様は慰めたほうがいいとか、叱咤激励したほうがいいとか。そこをご住職だけで考えると難しいので、我々葬儀会社も汲み取って、ご住職と共有することでやりやすいようにしています。
――叱咤激励となると、ある程度僧侶とご門徒との関係ができあがっていないと難しいかもしれませんが、僧侶という立場だからこそ言えることもあるかもしれません。
齋藤:そうですね。我々が言えるのは「きっと喜んでおられますよ」までですが、ご住職の中には「大丈夫、喜んでおられます」と断言される方もいらっしゃいます。説得力が違うんですよね。
――どの宗派でも教えのもと断言できる部分はあると思います。そこに自信を持ってご遺族に言葉をかけられる、宗教的な説得力を僧侶は持っておくべきだと思いました。