★PICK UP|お寺で作る、オーダーメイドのお葬式|株式会社きあら<後編>
寺院葬は、これから
――逆に寺院葬のデメリットはどういうところだと思われますか?
宮澤:正直、たくさんあります(笑)
齋藤:本堂が暑い寒いという声は多いですし、駐車場の問題もあります。来られる方全員分の車を停められるところを探すのが一番大変かもしれません。利便性が整っているお寺さんのほうが少ないです。あとは椅子がほしいのに用意されていないとか……。
宮澤:ただ、よく考えてみると、そういった環境のこと以外ではあまりネガティブなことは聞きませんね。
――ハード面はやはり課題が多いですね。
宮澤:暑い寒いに関しては、皆さんけっこう「お寺だからしょうがないね」と寛容になっている印象はあります。寒いときにひざ掛けなどはこちらで用意することもありますね。でも最近は冷暖房を完備されているお寺さんも増えてきています。
齋藤:あとはやはり、立ち入りにくいイメージが残っていることでしょうか。今までお寺でお葬式をするのは、門徒総代さんといった役職に就いているような人しかできないと思われていたんです。でもそうではなく、もっと多くの方に使っていただけると伝えられるのは逆にメリットだと考えています。
――さまざまな問題はあれど、少しずつ改善されているんですね。実際に寺院葬でお葬式をされた方からはどのようなお声がありましたか?
宮澤:これまで700件ほどの寺院葬をさせていただきましたが、リピーターが多いですね。
お寺特有の厳かな雰囲気はホールでは出せないので喜ばれるというか、立派なお葬式ができ、尚且つ思ったよりも費用が掛からずに済んだと満足される方が多いです。中にはお寺へ冷暖房設備を寄進するお客様もいらっしゃいました。
お寺の本堂に初めて入った、ご本尊を初めて見たという方も多いです。そういった方は感動も大きく、お葬式の後に自分の菩提寺をよくしようと意識を向けられるようになることも多いように思いますね。
――ご本尊はいのちを見守ってくださっているというイメージがあるということでしょうか。
宮澤:一般の方々はそういった感覚が薄いと思われているかもしれませんが、私が担当させていただくなかでお話を聞いている限り、「見守られていることを実感する」というような感想はいただきますね。
(写真提供:株式会社きあら)
――今後の展望があれば教えていただけますか?
宮澤:我々のように、寺院葬に特化した葬儀会社を増やしたいですね。やはり我々だけで日本全国の寺院葬を取り扱うことはできません。もっとお寺を中心にお葬式をするべきだという考えの会社が増えたら、お寺の価値もあがるし、もっと世の中が良くなるのではないかと考えています。
齋藤:もっとお寺を身近に感じてもらいたいです。ある意味お葬式を一つの入り口として、お寺という場所が行きやすい場所になったらいいなと思っています。どんどんお寺に行って、節目節目の挨拶をするような、そういう社会になっていかないとだめだなと。
社会は便利になることでいい面ももちろんありますけど、やはり人と人が会って話をして生まれるものも大事だと思います。そういうものを、寺院葬を通して考えていきたいです。
――確かに。等身大で相談できる場所を求める人にとって、お寺がそういう存在になればいいなと思います。
齋藤さん、宮澤さん、本日はありがとうございました。
編集後記
私たち人間に必ず訪れる死。
生きているうちに死ぬときのことを考えても実感が湧きませんし、そういったことは遠ざけたいと思う方もいるかもしれません。しかし、そんな私たちが死を受け止めていくきっかけにしたり、あるいは過去を振り返ったりする場こそお葬式ではないでしょうか。
「お葬式をよりよいものにしたい。」そう考える株式会社きあらさん。
寺院葬がお葬式の一つの選択肢となり、死はもちろん、これからの生を考える機会になれば。
お葬式を執り行う立場として、その意味と責任の重さを改めて考えさせられるインタビューでした。