DeathCafeWeek 死について語るデスカフェの見本市

 
デスカフェと新型感染症
 

DeathCafeWeekに向けて行われたオンライン会議の様子

 
――デスカフェの多様性に気付かれ、同時にまだまだ知られていないという現実もあったということですね。
 
吉川:はい。ただ、今年(2020)の初頭、本格的に動き出そうとした矢先に、新型感染症によって状況が一変しました。
それでもDeathCafeWeekの準備は変わらず進めていましたが、この状況下で人が集まることを前提としたデスカフェのイベントをどのようにやろう、と。
 
しかし今年の4月以降、各地で中止になっていたデスカフェが徐々にオンラインの形態で開催され始めたんです。
 
――対面での開催ができなくなったときは大変悩まれたのではないでしょうか。
コロナ禍でもデスカフェが開催され始めたのはなぜだと思われますか?

 
吉川:実は、デスカフェ自体は増加傾向にあったんです。認知度はまだ低いものの、それでも多死社会の中では死を語る場が増えてくるだろうということは、私の研究の中でも考えていたことでした。例えば病院、介護施設、葬儀会社、寺院……そういった死のフィールドにいる方がデスカフェに参加されたり、ご自身でデスカフェを開催されるケースが増えていたんですね。
そういった死を語りたい方の中に、今までに見られなかった層が参加されるようになりました。それがオンラインでのデスカフェが普及した原因ではないかと考えています。
 
――それはどのような方でしょうか?
 
吉川:新型感染症によって近しい人を亡くされた方、著名人の訃報や毎日流れる新型感染症関連のニュースを見て、死生観が揺さぶられた方です。その状況を見て、デスカフェの重要度はより増しているのではないかと思いました。
デスカフェがオンラインでもできるということと、デスカフェを求めている方がいることがわかった。では、今行えるのはオンラインでのデスカフェサミットではないかという結論に至りました。
 
――コロナ禍によって死に対する意識を揺さぶられたことや、外に出られない環境になったことから、デスカフェに対するニーズが増していたんですね。
 
吉川:ええ。それからデスカフェの主催者として図書館司書、看護師、葬儀会社員、僧侶、学生など様々な立場の方が集まり、運営委員会を立ち上げました。
 
――様々な職種の方がDeathCafeWeekに参画されたんですね。
そういった方々の協力もあって開催されたDeathCafeWeek。対面からオンラインへの移行でわかったことはありましたか?

 
吉川:オンラインでも対面と変わらずできることは、わりと多いということですね。似たご意見を、他でオンラインデスカフェを行っている主催者や参加者の方からも伺っています。
概ね対面と同じように進行できますし、ブレイクアウト*1や画面共有といった方法で、グループ分けの対話も可能です。
 
加えて、デスカフェの形式も変えずにできます。デスカフェの形式とは大きく三つに分かれます。一つめは対話のみの形式。テーマに沿って対話する形式です。二つめは話題提供の形式。ゲストの講師を呼んだり本を紹介したりしたうえで進めていく形式です。三つめはワークショップの形式。カードゲームや弔辞作りなどです。これら全て、オンライン上でも行うことができました。
 

――確かにそれだけ聞くと普段対面で行われているデスカフェと変わらない話し合いができそうですね。
 
吉川:対面でなければ難しい部分ももちろんあります。生身の人間が対面して、お互いの息遣いを感じることはデスカフェにはとても重要です。息遣いは画面越しではやはり伝わりにくく、さらに通話ボタンを切ってしまうと一瞬で遮断されてしまいますので、終わった後の余韻がなかったり参加者同士のアフタートークもできないという問題もあります。
ただ、今後すべてのデスカフェがオンラインでの開催となるわけではありません。対面とオンライン、どちらの形態も必要だと思っております。参加者やテーマによって臨機応変にするのがいいのかなと思います。
 
――オンラインだからこそ、また対面だからこそできることは大切にしたいですね。
 
*1 ブレイクアウト:オンラインの通話アプリケーション『ZOOM』の機能。大人数の会議通話においてグループ分けができる。
 
 

<編集後記>

 
今回は、DeathCafeWeek開催の背景、オンラインの可能性についてのお話でした。
「コロナ禍でできなくなった」ことを「コロナ禍だからこそできる」形態で開催されたDeathCafeWeek。後編ではデスカフェ主催者としてのお考えやデスカフェと仏教の
関わりについてお聞きします。
 
 
<インタビューの続きを読む>
「ウィズコロナ時代。死についてオンラインで話しませんか?」

 
 

   

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掲載日: 2020.12.16

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