死の話はタブー?家族には決して言えないこと|デスカフェ「Café Mortel」インタビュー<前編>

 
――どんなお話をされるのでしょうか?
 
小口:特にテーマを設定して開催しているわけではないのですが、不思議なことに参加者や会の流れによって話したい内容が変わってきます。私の場合も母が入院しているときの想いを語ることもあれば、入院費の苦労など、お金の話になる場合もあります。お金のことも他の場では聞けない話で、他の人がどうしているか知りたいのだと思います。
 
――どういった方が参加されるのですか?
 
小口:平日の昼間なので主婦や自由業の方、きょうだいや子どもを亡くされた方が来られます。リピーターは60代〜80代が中心で、喪失体験でリピートされる方は女性が多いですね。特に、亡くなった家族について他の家族とは話さない方のリピートは多いです。
話したいけど話せない、だからここで月1回話して、そこから1か月また元気に過ごせる、と話す方もいます。細々と続けていましたが、地元の新聞に取材されてから、栃木県内で知られるようにもなりました。
最近はコロナ禍も重なったことで参加者が減ってしまいましたが、他のデスカフェとのコラボや、オンラインとリアルを交互に開催するなど、新たな出会いもあります。
 
――参加された方の反応はいかがですか?
 
小口:話すことで楽になる、人の話を聞くと楽になるという感想が多いですね。会に参加する前は、「自分はなんでこんなつらい目に」という思いだったのが、それぞれの方が言葉につまりながらも話される様子を見るうちに、「自分だけがつらいわけじゃないんだ」という気持ちに変わる方もいらっしゃいます。
他の方の体験や言葉を聞いて、自分自身に当てはめたりすることもありますし、自分自身が話しているときにふと大事なことに気づくこともあるようです。
 
――小口さん自身も運営をする過程で変わったことがありますか?
 
小口:もともと、自分が母の死について話したくて立ち上げた会でもありますが、毎回話しているうちに、最近はあまりしゃべらなくてもよくなってきました。
母のことを話したい度合いが減ってきたんです。自分の中でもやもやしていたものを吐き出すことができ、整理がついてきたのかもしれません。
涙ぐむことはありますが、感情的にはなり過ぎることは無くなりました。自分の話ばかりしていたのが、最近は人の話を聞く余裕ができてきました。吐き出すことで余裕や隙間ができてくるのだと思います。看護師僧侶の玉置さんの言葉ですが、「話すことは放すこと」だと私も共感します。
 
 

<編集後記>

 
死別の現実は変わりません。ですが、安心して悲しみを吐露し共有できる場があることで、人は変化していくこともあります。その可能性を壊さない繊細な運営が求められるのでしょう。インタビュー中も垣間見える小口さんの細やかな気遣いが印象的でした。
次回はデスカフェ運営の落とし穴やオンラインの活かし方、メンタルケアの未来に至るまで、小口さんの貴重な現場経験と展望を聞かせていただきます。
 
 

   

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掲載日: 2021.01.15

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