【再掲】“聴く”伝道とは? —路上でグチを聴く「グチコレ」座談会—
グチを聴くコツ〜できることとできないこと〜
グチコレ活動メンバー
ーーグチコレの実際の活動の様子について教えてください。まず、来談者の方のグチを聴く際に、気をつけていることはありますか?
藤原:グチコレでは、来談者が求めているのはアドバイスよりも、感情的な共感だと考え、「頷き、相槌、興味を持つなどの共感的な態度をもつこと」、「正論・提案・批判をしないこと」、「プライバシーを守ること」の三点に注意して活動しております。グチコレは、家庭や職場ではなかなか見せられない本音を安心して話せる、“第三の居場所”でありたいと考えます。
ーー聴いて集めたグチを匿名で他力本願.netに公開されていますが、何のために公開しているのですか?
藤原:グチを公開する意図、効果としては、閲覧された方がこういうグチは自分だけじゃないんだ、と共感したりホッとしていただくことや、それをキッカケにグチコレに来ていただくことです。また、グチるって必ずしも悪いことじゃないんだ、と社会のグチ観が少しでも変われば嬉しいですね。ただし、公開すれば世界中の不特定多数に広がることになりますし、堅実な活動を心がけています。
ーー具体的にはどういう点に注意して活動していますか?
来談者の年齢層は幅広いながらも、その層を比較すると、グチを聴く側が若い為か、10代、20代が圧倒的に多い
藤原:厳格な活動マニュアルを作成して、スタッフ全員で守っています。たとえば「ナンパは厳禁」などと細かいところまで(笑)また、路上で活動する際には道路使用許可を取得しています。それをきっかけに下京区の警察署の方と顔見知りになりまして。「このあいだテレビで見たよ。私もグチ聞いてほしいわ〜。」などと声をかけていただいたり。地域密着の活動をさせていただいております。
葛野:お坊さんが街中で警察官の方に相談されるとは(笑)新しいですね。地域密着とは、素晴らしい!いきなり日本全国で大きくやろう、というよりもまずは地元の警察署、市役所などと協力して地道に取り組んでいるのですね。
藤原:はい。地域に少しずつ根付いている実感があります。久々にグチコレを開くと、常連さんに「もっといっぱい開いてよー」などと言っていただいたり、「いつも見かけるけど、今日はじめて声かけたわー、テレビで見たし、がんばってな」などと様々な方に励ましていただいております。真冬に活動していると、おばあちゃんが生姜湯を差し入れてくださったこともありました(笑)
ーー深刻なグチに対しては、どのように対応されていますか?
藤原:ときどき深刻と思われるグチはありますが、特別な対応やアドバイスはしておりません。重いグチ、軽いグチとこちらで分けるのではなく、フラットに聴くことで、どんなグチをこぼしてもいいんだという場所にしたいからです。深刻な悩みを抱えた来談者の方は長時間お話しになる過程で、ご本人が自分で気持ちを整理されていたりすることもあるので、お気持ちを察しながらそれを促しています。相手の感情に注意するよう心がけて、活動終了後には、スタッフ同士の反省会で振り返りも行っています。
高橋:グチコレの活動は取り組みやすさが特徴ですが、一方でできないことは無理にしないことが大切ですね。たとえば無理に悩みを解決しようとしないなど。トラブルが起こるケースは来談者の期待とこちらの対応のギャップが原因でしょうからね。
藤原:そうですね。できないことはしないよう気をつけています。カウンセリングなどのスキルは未熟ですので、専門の先生にご指導いただいたり、他の団体の相談窓口と情報交換をしています。大人の方がグチコレを批判よりも応援してくださるのが有り難いですね。
高橋:深刻な悩みへの対応についてはグチコレ単独ではなく、他団体とつなぐなど、総合的な対応が大切だと思います。グチコレは平常時の感情の受け皿という役割が担えると思います。顕在化した危機、たとえば自死念慮者の方に寄り添うのはもちろん大切ですが、苦悩を未然に予防していく発想がグチコレです。行政の負担も今後増えていくと思われるので、そこは公益法人、宗教法人が活躍するところだと思います。いざという緊急時だけではなく、平常時にも宗教があるのが大事です。