「子どもたちに介護をさせたくない」【みんなの人生僧談】
今回のテーマは「介護」。歳をとると、どうしても介護が必要になる場面が増えてきます。他人に迷惑をかけたくない。子どもに苦労をさせたくない。自分で解決したい。そんな思いから悩まれる人も少なくないのでは。こうした問題を僧侶ならどう考えるのでしょう。
60代男性です。妻は認知症が進み、デイサービスや訪問介護を利用しています。また介護をしている私自身も少しずつ、身体が言うことを聞かなくなりつつある状況です。ですが、子どもたちに介護をさせたくありません。できるだけ迷惑をかけたくないのです。
この方自身が、介護が「大変だ」と感じておられるんだろうね。実際、高齢者の介護はとんでもなく大変な問題だと聞いているし、僕も親の介護のことは心配だよ。
私も3世代同居なので、祖父の様子を横で見ていると色んなことが難しくなっていくんだろうな、と思います。そんな中で配偶者の方の介護までされているこの方はすごいですよね。
そうだね。実際介護のためにお仕事を辞めざるを得なくなったり、その苦労とストレスの中で死を選んでしまったりする人もいる。
親としては、そんな大変な思いを子どもにはさせたくない、ということだろうけれど、問題は果たしてそれだけでいいのか、だよね。
難しいですよね。ものすごく大変な問題ではあるんですけれど、上手につきあえるなら、子どもがいつか体験する問題について実地で学んでおく機会でもあるんですよね。
そうなんだよ。介護には、誰もが老いるという現実や、そこで生まれる問題への対処を学ぶという機会を与える、という側面も確かにあるんだよね。
やっぱり、迷惑をかけたくない、ご自身の弱い姿を見せたくない、という思いはあると思うんです。それでも、まだ余裕があるうちにお子さんと色々なことを話し合われたほうが良いのかもしれませんね。
今のうちに一緒に施設を選んだり、介護の計画を立てたり、色々なことを子どもと話し合って意見をすりあわせておく方が、子どもの学びになるし、あとで感情的な問題も起きづらいとは思うよ。迷惑をかけたくないと思うなら、なおさらね。
話し合った上で、ここはどうしても無理だな、大変だな、と子どもが感じる部分をできるだけプロに任せていくのが良いんじゃないかな。子どもに迷惑をかけたくないから、我慢して何事も本人だけで処理していくというのはこの先難しい気がするよ。
介護の問題で大事なのは、我慢して自分だけで抱え込まないで、話し合うことなのかもしれませんね。
我慢は大切なことだけれど、「我をたのんで自らを高くし、他をあなどること」という意味もあるからね。子どもの立場からすれば、大変なことだけど、それでも「我慢して、子どもに迷惑をかけない自分」にこだわりすぎず、ちゃんと信頼して頼ってほしいと思えるよ。
僧侶たちの議論はまだまだ続きますが、ひとまずここまで。
以上、みんなの人生僧談でした。何かのヒントになれば幸いです。
本日の僧侶プロフィール
サイバー僧侶
お寺生まれIT育ち。趣味が高じてIT業界に進むも、自らの使命に気づき僧侶の道に。最新機器への物欲が目下の悩み。
絵描き僧侶
小中高と美術部で過ごしてきたイラスト大好き僧侶。最近の推しは駆け出し舞台俳優。
「みんなの人生僧談」では、様々な経歴を持つ僧侶たちが、世の中のよくある悩みを勝手にテーマにして座談会形式で自由に話しあいます。