街中でお坊さんと仏教の話をする時間|西原龍哉さんインタビュー

僧職図鑑02西原龍哉(にしはらたつや)

 

東京・銀座の華やかな街の一室で、僧侶たちが若い男女の悩みに耳を傾けている。各種メディアで話題となった「僧職男子に癒されナイト」という取り組みの風景である。その僧侶たちの一人である西原龍哉さんに話を聞いた。

 

 

――どうしてこのような活動を行うようになったのですか?

 

東日本大震災後、家に帰るのが漠然と不安という方が東京にもたくさんいらっしゃいました。そんな中、ある女性の「お坊さんに話をきいてもらいたい」という声がきっかけではじまったんです。

 

――どういう方がいらっしゃるんですか?

 

大学生から仕事帰りのOL、サラリーマンの方など、年代もさまざまです。先日は、親子で参加された方もいらっしゃいました。最近は男性の方も多く、ワイワイと楽しい時間が過ぎていきます。ときには、仏教についてとことんお話することもあります。皆さん、さまざまな思いをため込んでいらっしゃるので、お話を聴かせて頂いてます。内容は、上司や友人関係の悩みや、ときには恋愛相談もありますね。

 

 

――話を聞く上で気をつけていることは何かありますか?

 

まずはじっくりお話を聴いて、ある程度関係性を築こうと心掛けています。それから、選択肢のひとつとして仏教の考え方を紹介します。人間関係、たとえば夫婦となると狭い見方になりがちです。「とにかく嫌いだ!」という風に。でもたとえば仏教には「一水四見(いっすいしけん)」(認識の主体が変われば認識の対象も変化することの例え)という言葉がありますよ、と紹介して、「相手はどう思っているんだろう」などと、視点を変えることを提案したりします。

 

――何か困ったことなどありましたか?

 

質問に答えること自体が、やっぱり難しいですね。あるときテレビの生放送で悩み相談に出演したのですが、「姑が実家に帰らせてくれないんですが、どうしたらいいでしょう?」という質問が来たときは、答えに窮しました。緊張して何も思いつかないから、「なんとかなるんじゃないですか」と答えてしまったんです。なんともならないから、質問されてるのに(笑)

いまにして思えば、もしかしたらその姑さんもお嫁さんを大事にしないといけないから、「帰るな」と言うのかもしれませんよね。嫁・姑であったり、好き嫌いであったり、人間関係にはいろいろな壁があります。その壁を溶かしていく作業が仏教によってできるんじゃないかと思います。どんな質問が来たときも、その壁を意識してどう対処すればいいのか、仏教の視点から提案していきたいと思ってます。

 

――仏教になじみのない方への発信で、意識していることはありますか?

 

以前は仏教は一般の方に敷居が高いと思われてるじゃないか、と心配していました。でも、仏教の話をすると、とても関心をもって聞いて下さいます。たぶん、宗教教育がないために、仏教の教えを知る機会が少ないのではないかと思います。敷居が高いと思われるのは、お坊さんが何やっているか分からないから。だから、たとえばブログなどで「こういう活動を展開しています」と発信していけば、わりとすんなりと触れていただける気がします。

若い方はお坊さんになじみがないから、テレビでみる修行者のようなイメージしかない。話してみると、「案外普通なんじゃん」という感覚で身近に感じていただけることが多いですね。「お坊さん毎日何してるんですか」「肉食べていいんですか」など質問責めにあうこともありますが(笑)

 

 

――お寺って、お坊さんって何なんでしょう?

 

最近は私のお寺(天真寺)でも、ヨガ教室や雅楽教室、写経の会などを開いていますが、新しい方々が訪ねてくださいます。浄土真宗でも昔は、たとえば蓮如上人の時代、お寺とお坊さんが身近だったようです。地域の中心というか。その意味では原点回帰になれば嬉しいですね。

 

――今後の展開も楽しみにしています。ありがとうございました。

 

天真寺ホームページ
http://www.tenshin.or.jp/
   

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掲載日: 2013.04.04

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