伝わるといいなと願って、歌い、話す|三浦明利さんインタビュー<後編>
今回のインタビューのお相手は、奈良県吉野の光明寺住職、三浦明利さん。彼女は2011年7月、「ありがとう~私を包むすべてに~」でデビューした歌手でもある。テレビ、ラジオ、雑誌など、各種メディアに登場し、仏教の心を歌で伝え続けている。
僧職図鑑04ー三浦明利(みうらあかり)ー<前編>
ひろがるご縁
ーーどんなきっかけでメディアにでるようになられたんですか?
三浦:当初は「ミーハーと思われるのはいやだなあ」と思って、「出ないでおこうかなあ」と考えていたんですが、ご門徒の方が、「何事も経験です。そこでしっかり話をすればいいじゃないですか」と背中を押してくださいました。
新聞・テレビ・ラジオ・雑誌など、ご仏縁はどこに転がっているかわかりません。メディアを通じて、少しでも仏教に関心をもっていただければと願っています。
ーー昔から見守る方がいらっしゃるんですね。
三浦:下手ッピな頃から、応援して下さっている方はいらっしゃいます。ずっと見守っていただいているあたたかいまなざしはうれしいですね。
そういう方たちは、三浦明利は仏教に出あってどう変わっていくのか、というのは、おもしろがってみてくださっています。すごいからファンだっていうよりは、一緒に育てていく、という感覚でいらっしゃると思いますね。
だからこそ、お坊さんという全然違うものになっても、あるいは結婚しても、見守ってくださっていますね。
ーーメディアに出て、何か反響などありましたか?
結構、手紙とかメールとかいただきますね。高校生くらいからおじいさままで。 ある高校生が悩み相談の手紙をくれて、「仏教にこんな話あるよー」などと話をしていました。しばらくして就職して、落ち着いた頃に、「2年前はありがとうございます。」というような形で手紙をいただきました。そういうのは、うれしいですね。
ーー貴重な出会いがあったんですね。
三浦:ほかにも、週刊誌に載った仏教の話を見た、刑務所の受刑者の方からお手紙をいただいたことがあります。「今まで生きてきた考え方が間違っていたってことに気づかされました。」というような内容で。
「週刊誌で仏法に出あってくださったんだ。」と思ったらすごくうれしくって。
そのことから、発信する側が「仏教のことをここでも話そう」と意識することが大事かな、と思うようになりました。ラジオにしても、耳障りのいいことだけ言うこともできるんですが、何か仏教に出あうきっかけになるようなことを話す、責任みたいなものを感じましたね。自分の言葉には自信はないですけど、仏教の言葉には確かなものがあると思うので。
音楽と仏教
ーー最近は歌うお坊さんも何名かでてきておられますよね?
三浦:そうですね。音楽って、法話との二本立てにされることが多かったんですけど、最近は仏教界全体が音楽の見直しみたいなものが起こっていまして、人集めの道具としての音楽から一歩進んだもの、仏法に触れるための音楽としての活動が展開されているなあというのは、すごくうれしいことですね。なので、最近は法話の枠としてのご依頼が多いですね。
ーー音楽は伝道ですか?
三浦:正直、伝わったかどうかは聞いてくださった人に聞いてみないとわかりません。聞いてくださった方が「三浦明利の音楽は伝道である。」と言ってくださったら、その方にとってそうなのかもしれないですね。
法話にしても音楽にしても、伝わるといいなと願っている、ということは言えるけれども、「伝えているんです」というのはおこがましいと思ってしまいますね。
ーー今回のアルバムについて
三浦:今回はスタッフ全員で現代の和讃みたいなものをイメージして取り組みました。親鸞聖人の当時「今様」という流行歌があって、大河ドラマの「平清盛」のオープニングでも使われたんですが・・・その形式でつくられた仏教のうたが和讃なのです。親鸞聖人も民衆に仏教を伝えたいと願われたのでしょうね。
親鸞聖人が当時の最先端の流行歌で、和讃をお作りになられたように、現代に生きる私たちが、現代の音楽で仏教の心を歌いたいというのは自然なことなんですよね。この歴史からいって、私は何ひとつ新しいことをしているわけではないんです。
その時代、その時代の新しいものを取り入れ、最先端の文化を発信していくことこそが仏教の伝統ではないでしょうか。
ーー本日はありがとうございました。
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