ルーマニア人の女性が日本で仏教にハマった話|コソフレット・アテナ・ガブリエラさんインタビュー<前編>
ルーマニア出身。日本に憧れ海を渡り、僧侶になったアテナさん。彼女をつき動かしたものとは?外国から見た日本や仏教の印象は?流暢な日本語でお話を聞かせてくれました。
ルーマニア時代:日本への興味
ーーもともと日本に興味があったの?
もともと社会主義の国で、幼い頃はインフラが整っていなくて自然の中で育ちました。社会主義の下では、電気使用量の制限があって、お昼は使えなかったし、一日に何度も止まっていました。
なので、当時は日本のことにはぜんぜん興味も持ちませんでした(笑)
ーールーマニアの国状って?
私が11歳の時、社会主義が終わりました。それで全てが変わったと思う。
社会主義時代には、当然のことながら他の国に行くことは禁じられていたし、外国の人々としゃべることさえ許されていなかった。ようするに、自国以外のことに触れることがなかったんです。
社会主義が終わると同時に様々な国の情報が一気になだれ込んできました。いきなり世界が広がった感じだったし、ほんとに世界は広いなぁって感じがしました。そして、新しい世界に憧れを持つようになりました。
ーー日本に来たきっかけは?
ルーマニアは演劇が盛んで人々はよく観劇します。その影響でルーマニアのブカレスト大学に入学して、演劇の勉強を始めました。
ところが在学中、大学の先生が見せてくれた東京の風景写真を見て、その写真を見た時、「へぇ、こんな世界があるんだ、ウソみたい、マンガみたい」と思って、それで日本に行きたいと思いました。
東京タワーから見下ろしたアングルの写真を見た時は、それはもうびっくりでした。もの凄く高いビルと、もの凄く多い電気の光、東京の電気の多さ、私の育った電気のない生活からは想像できない風景でした。
そんな憧れがキッカケで日本に行こうと思いました。
日本にやってきて
ーー日本での生活は?
日本に来て大阪のホテルに就職しました。休日は田舎とか神社やお寺にたびたび出かけるようになりました。
「お寺には古い物がある」くらいに思っていたけど、今でも教えを伝えるための機能が残っていることに驚きました。
ーー言葉などで苦労したことは?
それは、山ほどありました。とくに漢字。この世界(仏教界)は本当に漢字ばかりですね。
来日当時は言葉に苦労しましたし、ほとんどがボディランゲージでした(笑)
ーー日本の印象は?
文化が多様。例えば料理だったら、トルコ料理、イタリア料理、フランス料理、韓国料理、中華料理、タイ料理、とにかく何でもある。一方で、現地で味わうものと一緒ではない。感覚がすごくするどいからなのか、味も日本的になっています。
あと、日本人はやっぱり平和的な感覚があるように思います。宗教も色々あるし、普通はこんな違う者同士が一緒に暮らすなんてことはできないですよ。クリスマスに初詣に仏事なんか、なかなかできないですよ。
ーー住んでいて感じることは?
常に緊張感を持っていないといけないような気がします。
最初日本に来た時は、見るもの触るものみな新鮮で良かったんだけど、ある程度慣れてくると常に緊張するようになりました。
人の目線を気にするのかな?ルールを守らないといけない、みたいな感覚がある。自分のことよりも社会的なことを重視して生きてるということかな。
それと、ドンドン新しい物が増える。建物でもどんどん新しくなっていくし、それにともなって、常に何かを考えないといけない、「次は、次は」という感じで。
そのぶん、今この瞬間を味わうことが難しいように思います。例えばルーマニアだと、週末には自然に触れて気持ちを充電するけど、日本は週末でも町から出ないから充電しづらいんです。
仏教との出会い
ーー浄土真宗との出会いは?
ホテルで働いていると、ある日、浄土真宗本願寺派の集まりがあって、ホテル側の担当者として私が担当しました。集まりに参加された男性僧侶に「ルーマニア出身です」っていうと、「ちょうど今、ルーマニア出身の僧侶が、本願寺の新聞(本願寺新報)に紹介されているよ」と言われ、新聞を見せてもらいました。
さらに男性僧侶は、ルーマニア出身の僧侶を日本に呼びたいと言われ、そのお手伝いをすることになりました。
それまでお坊さんって、どんな方々なのか知らなかったんです。たしかに衣を着ているけど、「着物を着ている人」くらいにしか思ってなかったし、それがお坊さんだって思ってもいなかったんです。
ーールーマニアに浄土真宗はあるの?
それまでぜんぜん知らなかったけど、ルーマニアにも仏教を広めようとする活動がありました。
そこで活動する男性僧侶がブログを書いていました。それを見て、浄土真宗の大切にしている経典や書籍(歎異抄など)の多くがルーマニア語に訳されてあることを知り、どっぷりハマッていきました
僧職図鑑05ーコソフレット・アテナ・ガブリエラー<後編>