管理栄養士として、僧侶として。いのちを繋ぎ、世界を笑顔に。│原田慈縁さんインタビュー<後編>

 
――医療行為をするにしてもいろんなアプローチがあり、投薬だけではなく栄養面や精神面での治療も必要ということでしょうか。そんな原田さんが大切にされていることは何ですか?
 
原田:自分を大切にすること、でしょうか。
なんとなく、現代の人びとを見ていると、どこか自分のいのちを軽く見ているなあという印象があるんです。皆さん何かしら無理な生活をしたり、自分を犠牲にしながら生活しているように感じて。他人や成果を気にするあまり、「自分を大切にする」という感覚が置き去りにされているのかなと思います。自分を大切にするということは、自分のいのちを大切にすることと同じです。私もそうでしたが、人の顔色を伺ったり、会社や学校での評価を気にしたりしていると疲れてしまいますよね。そんな状態では、周りに気を遣いすぎて、結局自分を大切にする余裕もなくなってしまいます。私が管理栄養士という立場でいろんな人に関わっている中で、そういった人が想像以上に多いことを肌で感じました。栄養面の指導と同時に心にも寄り添わないと、本当の意味での改善が難しいんです。
 
――原田さんが管理栄養士だからこそ語れる「いのち」のように感じました。そういった意識を持って、具体的に実践されていることはありますか?
 
原田:例えば、一般的に「スポーツ栄養」とよばれる分野では、試合などでベストパフォーマンスを出すことを目的として考えられています。しかし協会で大切にしていることは、スポーツをすることは身体に負担がかかる、ということをちゃんと理解することです。激しいスポーツをすればするほど、身体にはそれ相当の負担がかかります。一般的にスポーツ選手は、スポーツをしていない人より寿命が7〜8年短いと言われています。まさに、自分の身を削っていると言っても過言ではありません。
だから、スポーツで結果を残すことを目的に栄養を考える場合であっても、その人の人生全体で身体を見ていくことが大事です。そういった視点で食事のあり方や心の整え方をカウンセリングや講演のときに伝えています。
 
――カウンセリングや講演を行う際、意識していることはありますか?
 
原田:カウンセリング、講演のときには僧侶の姿をしています。これは相手との関係づくりに有効的で、深いかかわり方ができます。また同時に、僧侶はすごく信頼されていると感じます。人には知られたくないような、答えづらいような質問をしても、話してくれる方もいます。それは、これまでの仏教の歴史がそうさせてくれているんだと思います。私もはじめは、僧侶の姿であると敬遠されると思っていました。ですが、改めて自分をどう見せたいのかと考えたときに、「私は僧侶である管理栄養士だ、それをもっと知ってもらいたい」と思い、僧侶の服装に対して、自分が一番偏見を持っていたのかもしれない、と思いました。
 
 

繋がるいのちの中で自己を見つめる

   

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掲載日: 2022.01.11

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