朗読劇を通して仏教の心を伝える。|「チームいちばん星」久保田 夕子さんインタビュー
音楽や照明を駆使して、聴者の心に訴えかける
(画像提供:久保田さん)
――朗読劇の上演の様子を教えてください。
久保田:開演宣言の後、会場を真っ暗にして、ナレーションが始まります。続けて、話者にスポットライトが当たり朗読が始まる、という流れです。
すべてのストーリーが終わったら、ピアノの演奏をバックに5分程度の法話も行い、仏教の観点を解説しています。上演時間はおよそ1時間でしょうか。
――上演の中で、工夫されていることはありますか?
久保田:ストーリーの中にそれぞれ5分程度の章節を作り、話の切り替えの際には音楽を挟む、という流れを作るようにしました。「いのちのいろえんぴつ」の場合は全5章に分割しています。
こうすることで、気持ちの整理をできる時間が確保されるだけでなく、聴者が飽きにくくなるんです。
朗読劇は演劇よりも出演者の身体動作が少ないので、準備が容易な反面、表現の幅が狭まってしまいます。なので、その分音楽と照明にはとことんこだわるようにしていますね。例えば「佐賀のがばいばあちゃん」の場合は、少年が列車に乗って佐賀へ行くシーンがあるので、列車の音の効果音を入れて、臨場感を増しています。
――ご活動の中で、ご苦労されたことはありますか?
久保田:活動当初は「仏教要素がない」と指摘されたこともありました。「いのちのいろえんぴつ」、「佐賀のがばいばあちゃん」は、そもそもお話自体が仏教的だと思っていたので、始めは戸惑いを隠せませんでしたね。
ですが、劇だけでは仏教要素が伝わっていないという事実でもあるので、その件をきっかけに法話も行うようにしました。
――初めて上演を行った時のご感想は?
久保田:みんな感動して、上演後に握手を求められたのを覚えています。当初は近隣寺院の花まつりや報恩講で上演していましたが、ご縁がご縁を呼び、北海道内外の別院や中学校、高校などにも出向くようになりました。そのほか、北海道を飛び出して築地本願寺、各教区教務所、社会福祉協議会の研修会等と、おかげさまでさまざまな地方、現場で上演をさせていただきました。
ーー中学校でも行われているのですね。
久保田:そうですね。ある上演でたまたま中学校の先生が聴いてくださり、それがきっかけで中学校にもお呼びいただきました。でも、当時はまさか学校で上演できると思いませんでしたね。しかも布袍を着て。
ーー上演を行って、どういった反応をいただくことが多いですか?
久保田:感動して涙を流される方が多いですね。いろんな場で上演していますが、聴者はもちろん、学校の先生や会場のスタッフさんまで泣いておられることもありました。
中学校での上演後、生徒さんから文章で感想をいただきますが「母親に感謝の気持ちを伝えようと思った」、「命の授業なんて面倒くさいと思っていたけど、チームいちばん星さんのお話は心にささった」といったコメントが印象に残っています。
ーー多くの方の心を動かしているのですね。
久保田:例えば「いのちのいろえんぴつ」では、最終的に女の子は亡くなってしまいますが、それは決して悲しい話ではなく、命を終えていくことを通して「生きる意味」や「いのちの尊さ」を私たちに教えてくれています。その普遍的なメッセージが、多くの人の心を動かしているのではないでしょうか。
楽しみながら、無理をせず
(画像提供:久保田さん)
ーーご活動の中で、大切にされていることはありますか?
久保田:まず、私たちが楽しんで活動することを大前提としています。そのうえで、なるべくそのときの気持ちや感覚も大切にしています。それぞれのメンバーが、上演のときや感想を聞いたときにどう心が動いたかを互いに振り返り、共有するようにもしていますね。多くの方に感動していただくためには、まず自分たちの気持ちを大切にするべきだと思っています。
ーー最後に、今後のご展望を教えて下さい。
久保田:あまり深く考えず、成り行きに身を任せています。
かつては最大で年間40回程度(上演依頼を)お受けしたこともありましたが、現在は無理をせず、月に3回まで(年間36回まで)としています。昨今は新型コロナウイルス感染症の影響で上演依頼も大きく減少しましたが、今後も各回のご縁を大切に、上演を続けてまいりたいと思います。
インタビューを終えて
今回は、朗読劇「チームいちばん星」のご活動について、代表の久保田さんにお話を伺いました。映像、音楽、そして照明と、伝える手段が多様な現代。それらを余すことなく活用した活動ではないでしょうか。伝え方の新たな可能性を感じたインタビューでした。
久保田さん、ありがとうございました。