困っている方にも精一杯のお葬儀を|株式会社ファイング 川上明広さん・恵美子さんインタビュー<前編>

困っておられる方のサポートを

 
――ファイングは、気軽に相談できる「無料相談サロン」を設けておられるそうですね。
 
明広さん:葬儀会館の入り口にサロンを設営して、さまざまなご相談をいただいております。弊社はアフターケアや生活の相談に乗ることに力を入れています。近年は身内や子供がいないという方が増え、役所の手続きなど死後事務に関する相談が多いです。おかげさまで、そのような相談に乗ることで顧客満足度が高まりました。お葬儀そのものではないところで評価をいただけたことに新たな発見と驚きがありました。
 
昨今、地域包括ケアがうたわれ、医療・介護も含めたさまざまな福祉やサービスを繋いでいこうという流れがあります。ケアマネージャーの方から、身寄りの無い方の葬儀を受けてもらえないか、と相談を受ける機会も増えてきました。路上で亡くなった方を受け入れる援護課や、生活保護の福祉課からも相談がありますね。ファイングならなんとかしてくれる、と期待していただいているので、困っておられる方を支えたい、地域でお役に立ちたい、と思うようになりました。
 
時間や経済的な余裕がある方は任意後見等の準備をされたらよいと思いますが、うちに寄せられる相談はもっとせっぱつまったものが多いので、行政とタイアップしながら支えていければと思います。
 

(写真提供:株式会社ファイング)

 
――奥様・恵美子さんとはどのように連携されているのでしょうか?
 
明広さん:地域に療養型の病院が多いこともあり、相談の30%が後見人さん、生活相談員さんや医療介護関係の方からのものです。具体的には、余命宣告されたか、すでに亡くなられて葬儀まであまり時間がない方からの葬儀依頼が多いですね。困っておられる方のサポートをするためには、医療・介護や福祉の知識とつながりが欠かせないため、妻・恵美子は2年前に社会福祉士の資格を取得しました。妻は介護士さん、看護師さん向けのエンゼルケア(死後の化粧)のセミナー等、専門職の方を対象に各地で講演を行っています。支える人を支えるという、間接支援も大事なアプローチだと思います。
 

葬儀はどうして必要?

 
――そもそも、葬儀はなぜ必要なのでしょうか?
 
明広さん:葬儀は、遺されたものにとっての大事な区切りであり、グリーフケアの重要な時間だと思います。アメリカ人の義理の兄に言われたのですが、日本の七日参りはグリーフケアにとても効果的です。悲しみは無くならないけど、やわらげることはできます。最近は直葬をされる方も増えてきましたが、わけもわからずに直葬をしてしまったことに後悔し、のちのちあらためて僧侶の方に読経をお願いされたという方もいらっしゃいます。
岡山でも直葬が爆発的に増えた時期がありましたが、やはり何らかの形で僧侶の方に拝んでいただきたいと思います。せめて直葬をされた方の合同慰霊祭などができないものか、と考えたことがありました。手を合わせる場を設けることは大切です。人の看取りに宗教は絶対必要ですし、お寺は地域のメンタル的な受け皿になれると思います。
 
――今後の展望をお聞かせください。
 
明広さん:弊社で賃貸住宅を経営する必要性を感じています。今後、地域では身寄りがない独居の方がご自宅で亡くなられるときの看取りが求められています。また、家主(家屋管理人)が、身内同様に火葬申請者として亡くなった方を見送ることが、法律で認められています。
 
そこで私たちが家主として、他では家を借りられない方や入院ができない方を受け入れたり、看取りをしたり、火葬申請を出したり、という「見守り、看取り、見送り」のサポートができるのではないかと思います。高齢者、生活保護の方、外国人の中には困っておられる方がたくさんいらっしゃいます。そういった方々の受け皿は絶対に必要ですし、弊社が少しでも地域のお役に立てたらうれしいですね。
 

 

<プロフィール>

 

川上明広さん
1974年、兵庫県神戸市生まれ。
神戸市内で生まれ育ち、阪神淡路大震災を機に岡山県岡山市へ移住。
27歳の時に岡山市内で霊園開設、35歳で岡山で初めての家族葬専門葬儀社を立ち上げる。
現在は地域の後見人である法律家、医療介護の相談員、各行政機関と共にさまざまな環境の方々をお見送りするお手伝いを積極的に展開している。
「支える人を支えたい」をテーマに今後も葬送だけにとどまらず「地域包括・地域連携・地域支援のサポート」を行っていく。
   

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掲載日: 2021.11.01

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