困っている方にも精一杯のお葬儀を|株式会社ファイング 川上明広さん・恵美子さんインタビュー<前編>
「盛大でなくてもいいから、ゆっくりと送ってほしい」ファイングを生んだきっかけはあの大震災だった
――ファイングの事業内容や始めたきっかけを教えていただけますか。
川上 明広さん(以下:明広さん):私は20歳のとき、成人式の翌日に阪神・淡路大震災で被災しました。パン屋で早朝から働いていたのですが、地震によってたちまち周囲は地獄絵図のようになりました。無我夢中でノコギリを持って、家屋の撤去や救助に走り回りました。
そのとき、震災で亡くなられた方も、家族に送ってほしかっただろうなと痛烈に感じました。できることなら、自分が亡くなるときには、大事にしている家族に、盛大でなくてもいいから、ゆっくりと送ってほしいと思いました。
このときの体験が、のちに家族葬のファイングが生まれる原点ですね。震災後、岡山に移り住んで、縁あって霊園の造成・販売の仕事をしていました。
リーマンショックの前後から景気が下向き、これからはこんなに大きなお墓は要らないということに気付き、霊園ビジネスの将来性に不安を感じていました。そして、リーマンショックの後、満を持して葬儀社ファイングを立ち上げました。
その頃には家族の規模が小さくなり、葬儀の小規模化も進み、岡山でも家族葬という言葉を聞くようになりました。大きな葬儀を経験された方からも、金額的な不満から次は家族葬にしたい、という声をよく聞きました。
そのニーズに対応するため、岡山では珍しい家族葬専門の会社を始めました。当時は売り上げの面から、そこに興味を持つ葬儀社は少なかったのです。たとえ小規模だとしても、葬儀の価値は変わらないと思います。丁寧に施主さんお一人おひとりと向き合い、ご希望を引き出してさまざまな選択肢を提示できる会社を目指しています。
家族葬のメリットとは?
(写真提供:株式会社ファイング)
――ファイングは家族葬に力を入れていらっしゃいますが、家族葬の定義や特徴は何でしょうか?
明広さん:弊社の場合ですと、30名以内の依頼を家族葬としてお受けしています。まず、家族葬は予算を抑えやすいという事。普通規模の葬儀を行うのは経済的に厳しいという方もいらっしゃいますが、予算を心配せずにお別れの時間を過ごしていただければと思います。また家族葬には、ゆったりとコミュニケーションがとれるというメリットもあります。葬儀会館における大規模な葬儀では、ともすると僧侶が控室に閉じ込められ、施主さんとコミュニケーションを取れないことがあります。葬儀社が便利な会館を用意したことで、僧侶と遺族とのコミュニケーションを分断してしまった面があるのですね。そこでもう一度、その貴重なコミュニケーションの機会を大切にするのが家族葬の役割だと思います。