直葬が増える時代に伝えたい葬儀の宗教的価値|株式会社オフィスシオン会長 寺尾俊一さんインタビュー<後編>
近年は葬儀が小規模化し、家族葬も珍しくなくなりました。その流れをいち早く予見し、日本初の家族葬専門会社を立ち上げた寺尾俊一(てらお・しゅんいち)さん。その先見の明で見通す葬儀の未来はどのような光景なのでしょうか?寺尾さんの事業戦略や宗教観を交えながらお話をうかがいました。インタビュー後編です。
「家族葬のパイオニアが見通す葬儀の近未来」│株式会社オフィスシオン会長 寺尾俊一さんインタビュー<前編>
直葬が全体の7割になる?丁寧な説明が求められる「葬儀の必要性」
寺尾 俊一さん(写真提供:寺尾さん)
――オフィスシオンに依頼されるのは、どのような方が多いのでしょうか?
寺尾 俊一さん(以下:寺尾):口コミを大切にしており、リピーターが8割を占めます。最近では、私が東京大学の成年後見の講座を受講していたご縁で、成年後見人をしている弁護士、司法書士と知り合い、そこからの紹介でお葬儀を請け負うことも増えてきました。日頃から社会福祉協議会とも交流し、一人暮らしの方がお亡くなりになったときにお手伝いをさせていただいております。
私はシニアコンシェルジュ協会の代表理事も務めています。60歳からのシニアライフプランニングをする組織です。そこにはファイナンシャルプランナー、社会保険労務士、保険会社さん、整理会社さん、成年後見が専門の法律家などが集い、高齢者をどこからも落ちこぼれないように支えていくサポートシステムをつくっています。
現在、終活という言葉が葬儀会館のイベントで多用されることで、最後の亡くなる頃の周辺を指す言葉になってしまっていますが、元々は終活とは定年退職から亡くなるまでの30年間のことを指し、60歳からのライフプランニングをしようという考え方でした。
なら終活フェアでの講演(写真提供:寺尾さん)
――そもそも、葬儀はなぜ必要なのでしょうか?
寺尾:それは、問いかけた方によって答えは変わってきますね。ご遺族があきらめをつけるためかもしれませんし、社会的に故人が亡くなったことを知らせるためかもしれません。宗教的なあの世の話も必要かもしれません。私は、人は骨や血や肉だけでなく、心や魂でできていると考えています。浄土真宗においては「魂」という表現は使わないのかもしれませんが。
私が葬儀社に入った時に最初に教えられたことは、亡くなることは肉体と魂の分離だということです。私たちは肉体の処理はできても、魂についてのお話は宗教者の方が必ず必要なのだと認識しています。現代人は見えているものしか信じない傾向にありますが、見えていないものこそが本質なのかもしれません。
昨今は直葬も増えてきましたが、炉前勤行だけでも構わないので、そこだけはやってもらってください、とお勧めしています。そこはたとえ無料でもお引き受けさせていただいています。葬儀はビジネスの面はありますが、儲かるかどうかという観点だけではいけないと思います。
――これから先、葬儀はどのように変化していくとお考えですか?
寺尾:おそらく直葬が7割くらいを占めるようになるのではないでしょうか。葬儀をしないという習慣も、3年もしないうちに急拡大するでしょう。葬儀の小規模化、単価の下落が著しいです。実際には、直葬をした後で後悔している方も多いため、私どもの説明不足という面もあります。私ども葬儀社から葬儀は大切ですよとお伝えしても、警戒されバリアをはられてしまいます。月参りやお盆など常日頃の付き合いがあるお寺さんの立場から、葬儀の大切さを伝えていただくことは大事だと思います。