「日常」をネットでも。オンライン数珠つなぎ読経【コロナ禍とお寺を考える】


すでにテレビや新聞で取り上げられている通り、新型コロナウイルスが猛威を振るいました。ヒトとヒトとの接触によって感染が拡大することから、密集、密閉、密接のいわゆる「三密」を避け、不要不急の外出を控えるように呼びかけられ、私たちの生活は一変することに。
主な寺院活動の一つである法事や法座も、人々が実際の空間と時間を共有することから、今回の感染症(COVID-19)とは相性が非常に悪く、各寺院は大きな影響を受けることになってしまいました。
一方で、情報通信技術の発達により、実際に会わなくても私たちは「繋がれる」時代となりました。特に、ZoomやSkypeといったビデオ会議システムを活用し、多くのイベントや打ち合わせがオンラインで実施されるようになりつつあります。
 
この流れを受けて、一部の寺院や僧侶による「活動のオンライン化」が試みられています。今回取り上げるのは、「オンライン数珠つなぎ読経」。浄土真宗本願寺派のみならず、宗派を超えた有志の寺院、僧侶が30分ごとにリレー形式で「おつとめ」(読経)の配信を行うという取り組みです。
イベントの発案者は「尼僧酒場」でもおなじみ唐溪悦子さん。今回の取り組みについて、唐溪さんにインタビューを行いました。

 
イベントの発案者である唐溪悦子さん(写真右)。写真は2020年1月に行われた「尼僧酒場」の様子
 
「コロナ禍」が奪ったものと、もたらしたもの
 
ーーこのイベントを思いついたきっかけ、経緯を教えて下さい!
 
唐溪さん(以下、唐溪):「ただあること」ってめっちゃ安心するなと、ふと思ったのがきっかけですね。新型コロナウイルスの影響で、世間はパニックになっていますが、それでも当たり前に春は来て桜は咲いて、つばめは飛来してきて……。
その時に、私たちは変わっても、変わらずあり続けてくれるものごとってすごく偉大でありがたいなと思ったんです。生かされてるなといいますか。
このことに気づくまでは「なにかしなきゃ」とか、「なにが人のためになるか」と色々考えては焦ってたのですが、当たり前にあることを大切にすることが大切な気がして、「あ、日々のおつとめや!」ってなったのがきっかけです(笑)
 
ーー実際に行ってみて、手応えはどうでしたか?
 
唐溪:おつとめを行うメンバーが個別に配信の告知をして、ご門徒の方々から「月参りができなくなったけどその代わりとして一緒に手を合わせるきっかけになった」というコメントを頂きました。他の視聴者からも、「通勤時間で聞いています」や、「お布団の中で聞いています」といったコメントを頂いて、意外に見てくださっている方が多いんだなというのが正直に抱いた感想ですね。
それと、今回の配信をきっかけに、何人かの僧侶が各々のfacebookでおつとめの配信を始められていて、この企画を始めた手応えを感じています。
 
ーー視聴する方に、インターネットへの抵抗はありませんでしたか?
 
唐溪:高齢の方はどう感じられるのか、ちょっと懸念していたのですが、Facebookは意外と50代や60代の世代の方々は利用されている方が多く、個別のお寺でも告知することで、70代くらいの方にも届いているようです。なので、インターネットへの抵抗はあまり感じられませんでした。一方で、若い世代はあまりFacebookを活用していないので、YouTubeといった他のプラットフォームでの展開も試しています。
 
思ったよりかんたん?ライブ配信のコツ
 
ーーインターネットで法要を配信する難しさはありますでしょうか?なんといいますか、独特のコミュニケーションが必要といいますか……。
 
唐溪:通信の障害で、配信が途絶えてしまったり、タイムラグが生じてしまうのはオンラインの難しさじゃないかと思います。初回配信では途中で1時間くらい通信が途絶えてしまうこともあったり……。多くの方がインターネットを活用しているので、回線が込み合っているようです。
でも、お互いの顔が見られたり、遠方の方とコミュニケーションをとれるのは画期的ですよね。音の確認やツールの使い方といった打ち合わせの段階で、「こんなのやってみたいんだよね。」、「いいね!うちも真似しよう!」みたいなやりとりがあって、すごく心地よいなって。ひとりではなく、みんなで配信するからこその良さだと思うんです。メンバーがそれぞれ自分ごととして「どうやったらうまくいくか?」を考えていてくれたので、トラブルも乗り越えることが出来ました。
 
ーーインターネットで情報発信することについての何かお考えはありますか?
 
唐溪:「便利だからとにかく活用しよう!」ではなく、想いや情報を届けるツールとして有効なら活用したらいいよねと思っています。色々と工夫は必要ですが……。
 
ーー配信する上で、どのような工夫が必要なのでしょうか?
 
唐溪:色々とポイントはあるのですが、大きくは「カメラは固定するほうが良い」、「音響の設定をきちんと行う」、「インターネットの通信環境を整える」の3つです。インターネットの配信はよくわからないから難しいって思ってしまうけど、やってみたら意外にできたと話される方も多いですね。
 
「続けること」、「繋がること」の大切さ
 
ーー今後、数珠つなぎ読経はどのように展開されるのでしょうか?特に、「コロナ禍」収束後はどのようにされるのでしょうか?
 
唐溪:形は変わりながらでも続いていくと良いですよね。ただ、各々の寺院が独自に配信していけるようになれば「オンライン数珠つなぎ読経」は自然になくなるのではないかと思います。配信することが目標ではなくて、なぜ配信するのかを考えていくと、これから形は変わっていくかもしれませんね。
 
ーー日常という意味では、形が変われど続けるのも大切かもしれませんね。
 
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ーー今回の取り組みでお坊さん同士のコミュニティも形成されましたが、何かこれを活用するようなお考えはありますか?
 
唐溪:そうですね。今回の取り組みで出来上がったコミュニティが、活用されるようにメンバーの方々と話ながら何かしら考えていきたいです。例えば、僧侶同士が法話をお互いに聴き、研鑽し合う場も作れそうですよね。身動きが取りづらい今だからこそ、もっと自身のできることを高められればと思います。
今回の企画のみならず、なにかしたいと考えている僧侶は多いです。今回の取り組みで、「なにかしたい」の最初の一歩を踏み出せた方もいらっしゃるかと思います。そして、「あれをやってみたい」とか、「こんなこと考えてるんだよね」っていう意見を出し合いながら自分も相手も苦しくない、持続的な活動に展開していけたらと思っています。
 
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「日常」を改めて考えたことで生まれた「オンライン数珠つなぎ読経」、これまでに6回配信を行い、徐々に新たな日常として定着し始めているようです。今後も不定期で行う予定で、詳しい情報はオンライン数珠つなぎ読経公式サイトのほか、公式facebookでもご覧いただけます。
これまでの日常が奪われるという悲しいきっかけから始まった活動ですが、新たなつながりやきっかけも生まれました。昨今では「アフターコロナ(新型コロナウイルス収束後どうするか)」ではなく、「ウィズコロナ(新型コロナウイルスといかに共存するか」が考え始められており、今回形成されたコミュニティが大きなイノベーションを生むかもしれません。
 
最後に、「ただ、ネット配信をしていて私が一番感じるのは「あぁやっぱり会いたいな」ということです。いくらインターネットで配信しても、10分でも実際に会うことには敵いませんね」と正直な想いを話す唐溪さん。誰かと実際に会うことがどれだけありがたいご縁か、誰かと繋がることがどれほど嬉しいことか、「コロナ禍」は災いだけではなく、私たちに大きな気づきを与えてくれたのではないでしょうか。

 
 
記事作成:他力本願.net
掲載日: 2020.05.22