楽しみから悲しみまで、子どもたちとともにあるお寺|愛知県教西寺<前編>
楽しみから悲しみまで、子どもたちとともにあるお寺
愛知県 教西寺<前編>
子どもたちから高齢者まで、幅広い世代が本堂へ集まるお寺があります。それも、法事や葬儀だけではなく日頃から。
愛知県名古屋市にある隨喜山 教西寺(ずいきざん・きょうさいじ)では、「子どもも大人も つながる・つなげる みんなのお寺」をキャッチコピーに、幅広い世代を対象としたイベントや集まりを多数企画されています。その内容は、影絵劇からキッズサンガ、ヨガ、終活のイベントと実に様々。
そんな多岐にわたるイベントを行うお寺、ちょっと面白そうではありませんか?教西寺の住職三宅 教道(みやけ・きょうどう)さんと、坊守の三宅 千空(みやけ・ちひろ)さんにお話を伺いました。前編では、主に子ども世代がよく集まるイベントを中心にご紹介します。
教西寺の三宅千空さん(坊守・写真左)と三宅教道さん(住職・写真右)
目次
老若男女の「辛いこと」を解決できる場として
ーー教西寺さんでは魅力的なイベントが色々と行われているようですが、これらはどういったきっかけがあって始められたのでしょうか?
千空さん:何かしらのご縁があって始めたものが多いですね。周囲から「こういうのをやってみませんか?」と持ちかけられたといいますか。例えば、夏休みと冬休みに行っている「子ども寺子屋」はPTAのお母さんの要望を受けて始めました。
教道さん:他にも、「おてら終活カフェ」は教西寺の参加している「まいてら」(*1)のグループで企画を持ちかけられたものですし、テンプルモーニング(*2)も、「未来の住職塾」(*3)でご縁のあった松本紹圭さんのご提案で始めたものです。
このように、ご縁があって始まったイベントが多いですが、原点にはお寺を閉ざすのではなく、開いていきたいという思いがあります。先代の住職や坊守も、コーラスや水墨画教室といった催し物を積極的にやっていました。そうした先代の思いも受け継いでいます。
ご遺族だけではなくて、子どもにもつらいことはあるし、もちろん大人にもつらいことはあります。そうしたつらさをちょっとでも解決できる場として取り組んでいます。
(*2)テンプルモーニング・・・全国各地の寺院で行われている、お寺の朝に親しむ会。お勤めや掃除といった、お寺の朝の習慣を多くの人と共有する試み。
(*3)未来の住職塾・・・地域・宗派をこえて僧侶が集い、お寺のマネジメント・宗教者のリーダーシップについて学び交流を深める私塾。
ラジオ体操のあとはお寺で宿題を。夏休み寺子屋
「子ども寺子屋」の様子
ーー「子ども寺子屋」とはどういうイベントでしょうか?
千空さん:夏休みや冬休みには、近所でラジオ体操が行なわれているのですが、体操のあとそのままお寺に入ってもらっています。おつとめ(らいはいのうた)とおはなし(法話)の後、夏休みや冬休みの宿題などを自分たちで持ってきて、それぞれにやっています。
ーーお寺の方が宿題を教えているのですか?
千空さん:いえ、私たちは宿題を手伝ったり、教えたりすることは特にせず、そばで見守るだけですね。途中でおにぎりなどの軽食を出しています。
勉強に関しては、あえて何も教えないことで、自然と子ども同士で教え合うことができるようになるみたいです。違う学年の子が助け合って、一緒に宿題をやっていますね。
ーーそうした子どもたちの場を用意する背景には、どんな思いがありますか?
千空さん:教西寺というお寺が、地域の子どもたちにとっての大切な場所であってほしいんです。
子どもたちが将来、どこか他の地域へ引っ越すこともありますよね。そうなったときに、幼い頃や学生時代に、日頃からお寺へ通っていた経験があれば、いつか人生で困ったとき、お寺に頼るという選択肢が出てくるんじゃないかなと。
また、お寺に色んな世代の人が集うことで、子どもたちと大人とのつながりが生まれでます。そうした人と人とのつながりをとても大事にしています。