今から始める。エンディングノートの書き方|お寺で知る終活講座第5回レポート
「お寺で知る終活講座~本当にあった事例から知る親子の本音~」。最終回になる第5回は、当講座の企画協力者である、公益財団法人京都SKYセンター事務局次長・高齢者情報相談センター所長の内山貴美子(うちやま・きみこ)先生に「エンディングノートを書こう!」と題して全5回分のまとめのお話をいただきました。
-講師紹介-
(公財)京都SKYセンター 事務局次長
京都府高齢者情報相談センター所長
1990年4月より公益財団法人京都SKY(スカイ)センターの中にある京都府高齢者情報相談センターの相談員として勤務し、2019年7月より現職。
その間、相談員として高齢者及びその家族の方からのさまざまな相談に応じている。また、2013年より「終活」や「エンディングノートの書き方セミナー」などの講師を務めている。
エンディングノートの書き方
内山貴美子さん(以下 内山):「京都府高齢者情報相談センター」は、公益財団法人京都SKYセンターが運営している相談センターです。高齢者やその家族の抱える保健、福祉、医療をはじめ生活全般にかかる各種の心配ごとや悩みごとの相談に応じています。年間500件程度の相談と2000件程度の情報提供を行っております。本日は「エンディングノートを書こう!」をテーマに、終活全般のおさらいをしていきたいと思います。
そもそも、エンディングノートに記入する項目は多岐にわたります。
講義スライドより(画像提供:京都府高齢者情報相談センター)
内山:まず、エンディングノートを入手する方法として、本屋さんの終活コーナーにもあります。また当センターでも発行しておりますのでよろしければご利用ください。
最初に自分史を書く欄があります。しかしここに労力を使いすぎて、医療や介護などの大事な項目が書けなくなる場合が多いので、自分史は後回しで構わないと思います。書けるところから埋めていきましょう。
医療・介護欄の書き方
内山:「医療」の項目においては、病歴や血圧や糖尿病などの持病の治療過程を時系列で書いていただきます。なぜこれが必要かというと、大きな病院に入院するときに、必ず提出が求められるものだからです。
加えて、家族の病歴も書いておけば、家系の病気がわかるかもしれません。延命治療については、急に具合が悪くなって救急車で運ばれたとき、延命をするか否かを決断する必要があります。延命を望まない場合、家族と相談のうえ「尊厳死の宣言書」に記入しておきましょう。この宣言書を、緊急の連絡先と保険証と一緒にいつも携帯することが大事です。「医療判断代理委任状」というものもあり、これは意識を失ったときに治療方針を決定する人物を設定しておくものです。緊急時にいち早く駆けつけることができる人が適任です。この委任状に記入したことを家族間でも共有しておくことが、揉め事を防ぐために重要です。
「命のカプセル」というものをご存じでしょうか。これは病歴一覧、かかりつけ医、常服薬、緊急の連絡先を記載し、冷蔵庫に保管するものです。玄関と冷蔵庫の扉に命のカプセルがあることを掲示しておくと、救急隊が駆けつけた際に助かるようです。
終末期をどこで迎えたいか、ということも考えておきましょう。たとえば、がん、アルツハイマー、パーキンソン病などで寝たきりになって、誰かのお世話になることもあり得ます。ホスピス、自宅、施設など、どこで最期の時間を過ごしたいか、希望を考えて記載しておくとよいでしょう。
次に「介護」の項目です。
80歳を超えると要介護状態になる可能性が上がります。自分がお世話をされる立場になったら、どこでどのような介護を受けたいかを考えておきましょう。自宅で暮らすことを希望する方も多いですが、その場合でも誰かのお世話になることになります。「ピンピンコロリ」が理想の亡くなり方として語られることがありますが、実際にそうなる方は3%程度ではないでしょうか。自宅で介護保険サービスを利用したとしても、隙間の時間は避けられません。もし施設に入ることを検討するのなら、さまざまな選択肢がありますし、いつ入所するのかというタイミングも大事になってきます。
講義スライドより(提供:公益財団法人京都SKYセンター内・京都府高齢者情報相談センター)
内山:費用の目安を参考程度に申しますと、特別養護老人ホームは毎月12~13万円、有料老人ホームは毎月20万円程度(別途、頭金700〜800万円)、サービス付き高齢者向け住宅は毎月20〜25万円程度かかります。いずれにせよ、念のため100歳まで生きることを想定して、資金を準備しておけば安心です。
また、介護を受ける側の姿勢も重要です。いわば「見守られ上手」になることが介護される側にとって大事です。たとえばデイサービスやショートケアにできるだけ嫌がらずに行くと、介護を担う家族が楽になるのではないでしょうか。介護サービスを上手に利用することが大事です。