お寺を嫌いにならないために。|「ゆかり広場」、「味噌づくり」活動―北海道千正寺

 

「ただいま」と言える場所に

 

千正寺で行われている法座の様子(画像提供:高塚さん)

 
――ご活動を続けられて、お寺のイメージは変わりましたか?
 
高塚:おかげさまで、嬉しい感想をいただくこともありますね。
千歳市は転勤族の方が多いので、必然的に別の街へ引っ越していかれる方が多くいらっしゃいます。ある方が転勤で千歳を離れる際、お寺へご挨拶に来られました。その時「いつも転勤後は元居た街に立ち寄ることはほとんどありませんが、今回はまた千歳に来ようと思いました。お寺という『ただいま』と言える場所があるから」とおっしゃってくださったんですね。大変うれしい感想でしたし、そういう方が増えてほしいですよね。
 
ちなみに、転居される方にはお念珠をプレゼントするようにしています。別の地域のお寺にお参りする時はこの念珠を使ってほしいと。千正寺がゴールではなく通過点となっても良いんです。お寺は手を合わせる大切な場所であって、決して嫌な場所じゃないとイメージしてもらえれば良いですね。
 
――「ただいま」と言っていただけるのが嬉しいですね。
 
高塚:転居後、千歳に戻ってきたときにふらっと立ち寄れる場所として残ってくれているのがお寺なんだと思います。みんな転勤していくので、千歳に残り続ける人が少ないんですね。そのような中で、千正寺が人生の思い出になってくれているのはすごくありがたいですね。
 
――お寺はどういう場所であることが理想ですか?
 
高塚:「お寺は風景でしかなかった」という言葉がありますが、その通りにならないことですね。
つまり、人々にとって行く目的のある、行く意味のある場所になるということです。その目的がちょっと境内のベンチで座るだけでも良いので、そのきっかけづくりを私たちは作っていかないといけないのかもしれません。いかにお寺の門をくぐってもらいやすくするか、知恵を絞る必要があるのでしょう。
 
――最後に、千正寺さんの今後の展望を教えてください。
 
高塚:色々と活動を行ってはいますが、実は流れに身を任せています。その中でいろいろと考えているような感じでしょうか。
 
今後はお寺が「選ばれる」時代になり、直葬も増えていくのかもしれません。そのような状況になったとき、葬儀はぜひ千正寺に頼みたいとおっしゃってくださるような繋がりを大事にしたいと思っています。
そして、どれだけお参りの方が減ったとしても、常例法座は続けていきたいと思っています。一方で、ご縁の薄かった方が法座へお参りに来てくださるのは究極のゴールでもあります。なので、今はその手前の活動を自分自身も楽しみながら続けられれば良いですね。
 

編集後記

 
今回は、千正寺での様々なご活動を通して、お寺という場のあり方を考えました。
「お寺は骨を置いているところだよ」という衝撃の言葉を原動力に、様々なご活動を展開されている高塚さん。大変ではあるものの、楽しみながら活動をされていることが窺えます。そして、遠くへ転勤された方が「ただいま」とお寺へ立ち寄る光景は、地域の人からお寺が意味のあるものとして認識されている大きな証拠ではないでしょうか。
高塚さん、ありがとうございました。

   

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掲載日: 2022.07.29

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