環境対策は災害対策にも繋がる?太陽光発電の今後|エネルギー事業ー北海道常光寺<後編>

 
北海道常光寺 住職の杉田英智さんへのインタビュー。太陽光発電によるエネルギー事業について伺っています。
後編となる今回は、太陽光発電事業の今後のことや、お寺や僧侶ができる環境対策のことについてお伺いしました。
 

 

リスクも大きい太陽光発電事業。寺院の電気代節約には有効?

 

(画像提供:杉田さん)

 
ーー発電事業は、今後も拡大される予定でしょうか?
 
杉田 英智さん(以下:杉田):電気の買い取り金額も下がってきていることや、現状でも草刈りや除雪といった管理が大変なので、これ以上の増設は難しいと考えています。また、電力の買取が行われるのは設置後20年(10kW以下は10年)と決まっているので、買取期間が終わった後の活用方法を模索している段階です。
 
ーー電力の買取は期限があるのですね。
 
杉田:はい。電力の固定価格買取制度は上限が20年(10kW以下は10年)と決まっているんです。よって、ソーラーパネルを設置して20年間は買取が保証されますが、そのあとは自力で他の販売先を探すか、処分して更地にするかの選択を迫られ、迷っている人も多いそうです。現時点では、1基目がちょうど10年を経過したので、あと10年ぐらいは猶予があります。その期間で、次の一手を考えなければいけませんね。
 
ーー具体的に、どういった活用方法があるのでしょうか?
 
杉田:活用方法は大きくは3つあります。一つ目は、単純に寺院内で別の事業を行い、電力を使用すること。二つ目は、値段を下げて電力会社に買い取ってもらうこと。そして三つ目はまだ不確定要素も大きいですが、個人間での電力販売に参入することです。
 
一つ目については、現時点では難しいですが、例えば無農薬の野菜工場を建設し、その運営で電力を活用するのも面白いかなと思っています。
二つ目については、現状は1kWhあたり十数円で買い取ってもらえるところ、4円や5円程度に値下がってしまうので、管理費用や税金などを考えると発電所を維持していくのも難しいと思います。
そして三つ目は、現在研究が続けられている「P2P電力取引」というものを活用する方法です。これは、P2Pと呼ばれるネットワーク技術を活用し、これまでは電力事業者からしか買えなかった電力を、個人間でも売買することができるようになる技術です。
 
これが実現したら個人間で電力を売買できるようになり、販売者からすれば大手よりも高く販売でき、購入者からすれば大手よりも安く電力を購入できるメリットが秘められています。
例えば、常光寺で発電したものを東京の寺院や、門信徒に売るという可能性ももちろんありますよね。売り手と買い手の物理的な距離は関係なく、極端な話、送電網が日本列島と大陸にも整備されれば世界にも売ることが可能になります。まさに、革命的な技術と期待されています。
 
――すごい技術ですね。ソーラー発電、他のお寺でも実施できそうでしょうか?
 
杉田:いいえ。固定価格買取制度の金額が下がってきており、正直なところ今からソーラー発電事業を始めるのはおすすめできません。また、まとまった敷地が必要なので、都心ではなかなか難しいのではないでしょうか。
 
電気の買取価格が下がることで、投資に対する利回りが少しずつ厳しくなってきました。そのような状況下、見極める能力がないと業者に騙されるリスクもありますよね。魅力的な話に見えても、蓋を開ければただ業者が儲かるだけだった、というケースも多く、知識がないと損をする世界でもあります。
 
ただ、太陽光だと1kWh発電するのにかかるコストは10円以下なので、電力会社から買うよりも安いです。なので、お寺の電力を賄う目的でソーラーパネルを設置するのが一番現実的だと思います。利益を狙うのではなく、安くて環境にも優しい形でお寺を維持できるようにする、というくらいの温度感で取り組むのが一番良いのではないでしょうか。
 
いまはソーラーパネルの性能も向上し、1枚あたりの発電量は上がっているので、敷地も少なくて済みます。また、コストダウンも進んだ結果、10年前は最大2000万円ほどかかった設置費も今は500万円程度になりました。価格は現在も下がり続けているので、今後はもっと導入のハードルが下がるかもしれませんね。
 

環境問題に対して、お寺や僧侶ができることとは?

   

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掲載日: 2022.10.04

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