環境対策は災害対策にも繋がる?太陽光発電の今後|エネルギー事業ー北海道常光寺<後編>
環境問題に対して、お寺や僧侶ができることとは。
(画像提供:杉田さん)
――昨今では、環境や気候変動問題が叫ばれています。我々僧侶もこの問題に取り組んでいかなければいけませんね。
杉田:そうですね。僧侶や住職といった肩書に関係なく、地球に住む者として環境問題に取り組む必要はあると思います。私が子どもの時は酸性雨やオゾン層といった問題があり、そのときに環境のことを意識するようになりました。人類がこれからもこの地球で生き伸びるためにも、地球の環境は維持されなければいけませんよね。地球温暖化はもはや待ったなしの状況で、いま私たちが実践できることを探さないといけません。
――実際に、お寺や僧侶はどういったことができると思われますか?
杉田:具体的な行動としては、太陽光発電で寺院の電力を賄い、ソーラーパネルで発電した電力で電気自動車を運用することは脱炭素に有効ですよね。
常光寺では10年以上前から電気自動車をいち早く導入し、現在も乗っています。また、V2Hという技術を活用してソーラーパネルからEVの充電を行いつつ、寺院の電力を賄えるようにしました。こうした技術の導入により、環境対策だけでなく、災害に強いお寺にもなりました。2018年に発生した北海道胆振東部地震による大規模停電(ブラックアウト)があったとき、常光寺では通常どおり電気をつかって生活をしていましたし、近所の方にスマホの充電スポットを開放して喜ばれましたね。また、ガソリンスタンドも営業を中止していたり、営業再開後も10リッターの給油制限がかけられたりしました。電気自動車だったので、その部分でも助かりました。
他にも、常光寺では災害対策として、簡易トイレや毛布の用意をしています。
今後は備蓄食料の交換時期に地域の皆さんと一緒に食べたり、電気自動車で災害時も寺院の電気が使えることを知ってもらったりするイベントで、災害時寺院を活用できるアピールをしていきたいです。 寺院のBCPが強化され、各寺院で災害支援が出来れば世間からのイメージも良くなると思います。
V2H・・・自動車と住宅の間で電力の相互供給をする技術やシステム。電気自動車(EV)、プラグインハイブリッドカー(PHV)、燃料電池車(FCV)などに蓄えられた電力を住宅で利用したり、太陽電池などの住宅用発電システムで自動車を充電したりすることを指す。ビークルツーホーム。
引用:weblio辞書
BCP・・・企業や法人が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと。
引用:中小企業庁
ーー最後に、今後の僧侶としての展望を教えて下さい。
杉田:正直、将来の見通しは良くない状態と言えます。町の人口が5,000人を切る状況では、これまでの方法では限界があります。お寺もあらゆる事業も、人が居て初めて成り立つものですから。
なので、今後は太陽光発電による収入を投資に充当し、その配当収入で運営できるお寺を目指しています。お寺が投資というと、まだまだ世間的にはイメージが悪いかもしれませんが、海外では教会が投資によって運営されるケースも多くあります。配当収入で寺院の経済基盤を確保して、法務や布教に臨みつつ、仏教の勉強やボランティアを行えるのが理想ですね。
とはいえ、人口が激減していくなかではもはやお寺の維持すら難しいのが現実です。み教えを伝える先がないのにお寺を維持する意味があるのかどうかは、改めて考えないといけませんよね。
ーーありがとうございました。
編集後記
今回は、北海道常光寺の杉田さんに太陽光発電について教えていただきました。
常光寺の太陽光発電事業が成功を収めているのは、国による固定価格買取制度が始まった直後、いち早く設備を導入できたことが大きいといえるのではないでしょうか。それは、杉田さんの環境に対する高い意識があったからこそでしょう。
ソーラーパネルや電気自動車は、いずれもまとまった資金が必要なものであり、そう簡単に導入できるものではありませんが、環境問題に対する寺院の取り組みの一つとして有効な手段と言えるのではないでしょうか。杉田さん、ありがとうございました。
北海道常光寺について
【寺院名】
浄土真宗本願寺派 常光寺
【住所】
〒072-0804
北海道美唄市東明2条3丁目1-12