豊かな自然の恵みをお寺で味わう。|イタリアン精進レストランー広島県浄謙寺<前編>

 

口コミでじわじわと広がり、全国から訪れるお寺に。

 
――どういった方が参加されますか?
 
浄謙:年齢層は60歳代〜70歳代の方が中心ですが、近年は40歳代〜50歳代の方も増えてきました。男女比は、圧倒的に女性の方が多く、全体の8割程度を占めています。
始めた当初は浄土真宗の門信徒の方が多かったのですが、現在では一般の方の参加が多くなりました。
昨今は旅行会社さんから浄謙寺と道の駅や史跡、自然公園などを巡るツアーを組んでいただいております。特に自家用車での長距離移動が難しい方は、そのツアーを利用されています。
 
――ご活動のエピソードを教えて下さい。
 
浄謙:営業初日は知り合いが集めたお客様10人ほどをお招きしました。その次からは、いきなり中国新聞から取材を受けて紹介してもらい、ありがたいことに開店当初からコンスタントにお客様は来てくださるようになりました。
 
ほとんど設備投資等もしていません。というのも、そもそもお寺という空間そのものが多くの人を招くようなつくりとなっていますよね。
レストランとしての最低限のものはすでにそろっていました。大きな障壁もなく営業をスタートしたように思います。
 
その後、テレビ朝日系列で全国放送されている番組『人生の楽園』で取り上げていただいてからは、問い合わせが一気に増え、九州や関東から来られた方もいらっしゃいました。全国メディアの宣伝力を実感しましたね。
 

お寺で開く飲食店だからこそ、大切にしたいこと。

 

浄謙寺坊守(浄謙寺公式Instagramより)

 
――ご活動の中でご苦労されたこと、大変なことを教えてください。
 
浄謙:食材の確保でしょうか。ほぼすべての野菜をスタッフや当寺の家庭菜園、近くの無人市や農家さんから仕入れているので、計画通りに野菜が収穫できないこともあり、やりくりに苦労することもあります。そして、なによりメニュー作りが大変です。採れる食材に合わせておおよそ1か月ごとに献立を変えているので、いつも野菜とにらめっこしながら考えています。
 
――お寺で飲食店を行うとき、どういったことに気をつけると良いでしょうか?
 
浄謙:私としては、飲食店の活動のみにとどまらないよう注意しています。特にお寺の場合は、お寺で飲食することの意味をよく考えた上でコンセプトを考える必要があると思います。お寺でやる以上、食事をして終わりではなく、法話などを通して、あるいはなんらかのかたちで少しでも仏教に触れることができる場を用意することが大切だと感じています。
 
――どういった法話をされていますか?
 
浄謙:法話は法要等でご門徒さんに話すのと同じように、ストレートに浄土真宗の話をしています。ただ、なるべく親しみやすいことに気を付けていて、例えば、「わかっちゃいるけどやめられねぇ」で有名なスーダラ節などを交えた話は、楽しんで聞いてくださっている印象です。
 
――あくまでも、お寺であることを忘れないようにしたいですね。他には、注意すべきことはありますか?
 
浄謙:実務的な面では行政における調理場の許可を満たす必要があり、それに合わせたキッチンや設備を用意してください。更に、飲食業は収益事業なので、適正な収支管理と納税も求められますね。
 

活動を通して広がるご縁。

 
――ご活動を通して、参加者からはどういったお声がありましたか?
 
浄謙:嬉しいことに「美味しかった」、「身も心も洗われました」というお声を頂きます。また、意外に多いのは「良い1日を過ごせました」という声です。本堂と庫裏と和室と、お寺にあるすべての空間を使うので、1度の参加でお寺の全てを味わうことが出来るんですよね。
また、お寺の裏庭を散策することも出来るので、ゆっくり過ごせる時間に対して満足される声が多いです。
 
慌ただしい日々を過ごしていると、お寺でゆっくりすることも、裏庭や山を散歩することもなかなかできませんよね。「お寺」という非日常を味わえるところも評価していただいているのではないでしょうか。
 
――イタリアン精進料理の活動を続けていて、良かったと思えることはなんでしょうか?
 
浄謙:やっぱり、お客様が笑顔でお寺を楽しんでくださる様子を見て、この活動をやってよかったなと感じます。また、僧侶として浄土真宗の教えに触れてもらった瞬間も嬉しいです。「凡夫救われるのではなく、凡夫救われるんですね」という感想が印象に残っていて、それは真宗の教えが伝わった瞬間でもあると思うので、活動の醍醐味だと感じます。
 
いろいろな形でご縁はひろがっていて、今年はあるお客さんの訪問がきっかけとなり、当寺と和菓子店で共同開発した「ごきねぶり最中」というお菓子をお寺で販売することができました。
 
―― 一つの活動からさまざまなご縁が広がっているのですね。ところで、「ごきねぶり最中」とはどういう商品でしょうか?
 
浄謙:では、続けて「ごきねぶり最中」のご紹介をしたいと思います。
 
インタビューは後編に続きます。
 

 

広島県浄謙寺について

 

【寺院名】

浄土真宗本願寺派 浄謙寺
 

【住所】

〒731-2312
広島県山県郡北広島町奥原161
 

【公式webサイト】

https://jokenji.net/
 

【公式Instagram】

https://www.instagram.com/shojin_italian/

   

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掲載日: 2023.01.25

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