【コラム】犬や猫が保護される現状 〜明るく優しい未来を作るには〜

【コラム】犬や猫が保護される現状 
  〜明るく優しい未来を作るには〜

犬や猫の殺処分が後を絶ちません。289万7,944匹。これは2004〜2018年の14年間に、殺処分された犬や猫の「命の数」です(環境省調べ)。どうして日本では、こんなにも多くの尊い命が奪われるのでしょうか。今回は、京都市の一念寺さんで保護動物の譲渡会「いぬとねこ」を主催する、動物福祉団体 Pawer.代表の大西 結衣(おおにし ゆい)さんに、犬や猫が保護される現状について、コラムをご寄稿いただきました。
 
保護動物の譲渡会「いぬとねこ」の詳細はこちらもご覧ください。
 

 
2016年1月。犬や猫の殺処分が世界中で社会問題となる中、日本における動物福祉に対する意識の立ち遅れに気付きました。ただ当時は、具体的にどのような課題があるのか、その課題が生まれる社会の仕組みはどうすれば変えられるのか、想像できませんでした。そこで現状を理解すべく、各都道府県の自治体や民間施設への取材を始めました。
そして2019年までに世界8か国・約65か所を訪ねました。取材を進め現場の声を聞くうちに、現状を改善するには、殺処分を含む社会問題の根っこと向き合うべきだと確信しました。その根っことは、私たち一人ひとりの「意識」です。
 

 

社会の仕組み

 
2018年の1年間に、環境省が把握しているだけで9万1,939匹の犬や猫が全国の自治体施設に収容されました。殺処分されたうち8割以上が猫、さらにその約7割が生まれて間もない乳飲み子でした(環境省2018年度データ)。
私たちが暮らす社会の「犬や猫を取り巻く環境」は大きく3つに分けられます。①ペット産業、②飼い主、そして③野外繁殖です。
①ペット産業には生体販売を行うペットショップや、販売用の子犬・子猫を繁殖させる繁殖場/ブリーダーなども含まれます。犬や猫が繁殖場からペットショップに届くまでの検品や出荷の過程で死亡する事故も多く、2018年には子犬1万9763匹(同年の殺処分数の1.5倍以上)が亡くなりました(朝日新聞 Sippo2018年データ)。
またほとんどの店頭販売では審査もなく衝動買いしやすいため、終生飼養が軽視され、購入後に飼育放棄する消費者も多く存在します。この現状は、消費者が様々な視点からその動物の特徴や平均寿命、飼育に必要なコスト、転勤や妊娠/アレルギー発症の可能性など、事前に「飼育可能か」しっかり考えることで改善できます。
 
②イギリスなどの動物福祉先進国だけでなく、日本にも飼い主が守るべき「5つの自由」があります。犬や猫に限りませんが、1.飢えと渇きからの自由、2.不快からの自由、3.痛み・傷害・病気 からの自由、4.恐怖や抑圧からの自由、5.正常な行動を表現する自由、の5つです。この権利を守ることで、個々の動物は快適に過ごせます。
最も多い飼育放棄の理由は「引っ越し」「飼い主の高齢化」、近年問題視されている「多頭飼育崩壊」など。飼い主が適性に終生飼養できず保護される命が後をたちません。家族として迎える前に、この5つの自由を継続して守れるか考え、少しでも不安があれば迎えるタイミングを遅らせる、その判断も立派な動物福祉です。
 
③日本は地形の特徴から、犬や猫 *1が人里を離れて野生化したり(ノイヌ/ノネコ)、捨てられた犬や猫が繁殖を繰り返したり(野良犬/野良猫)など、野外で繁殖しやすい環境です。特に猫は繁殖能力が高く、1年ほどで1匹の妊娠猫から数十匹まで増えてしまいます。
殺処分の内訳で最も多いのはこのような環境で増えてしまった「野良猫の乳飲み子」です。人間の勝手であるかもしれませんが、一匹飼いであっても不妊手術を施し、万が一脱走しても繁殖しないようにする。もし飼えなくなっても遺棄することなくセーフティーネットを見つける。その心がけが、これ以上不幸な命を生まないことに繋がります。
 
*1 ここでの「犬や猫」はかつてねずみ捕りや番犬として飼われていた犬や猫の子孫を指します。(諸説あり)
 

 

行き場を失ったら

 
一度行き場を失った犬や猫。中には、見つけた人が大切に飼ってくれるケースもあります。地域で保護活動をする動物福祉団体に引き取られることもあります。ただし「かなり運がよければ」です。多くは、管轄の自治体施設に収容されます。一度収容されると、出口は3つ。飼い主への返還、市民や団体への譲渡、そして殺処分です。
 

“殺処分ゼロ”の意味

 
近年メディアでも取り上げられるようになった「殺処分ゼロ」。一見、殺処分される命の数をゼロにすれば良いように思えますが、根本的な解決には、そもそも「行き場を失い収容される犬や猫たちの数を減らす」必要があります。動物たちの命が尊重されセーフティーネットが張られた環境は、人も動物も心地よく暮らせる社会に繋がるはずです。
 

 

まずは知ることから

 
取材先で出会った飼い主さん、その多くの方から「過去にペットショップで購入した時は保護施設や譲渡会の存在を知らなかった。次は里親になりたいと思う」という話を聞きます。一方で「こんなに大きくなると思わなかった」など身勝手な言い訳で犬や猫を捨てる人も後をたちません。
その動物のことをもう少し事前に知っていれば、より飼い主の状況に合った動物を選ぶことで、捨てず(捨てられず)に済んだかもしれません。
犬や猫、福祉活動について知ることは、新たな選択肢を増やすことにつながります。やむを得ない事情でペットを手放す人がいる一方、新たに飼い始める人もいます。人と人が繋がり社会全体で命を守る、そんな意識を拡げ、命のセーフティーネットを作る。それは明るく優しい未来への確かな一歩ではないでしょうか。
 

大西結衣(おおにし・ゆい)
米国の犬のシェルターで3年間ボランティアを経験。犬や猫の収容数を減らすため、2016年に動物福祉団体「Pawer.」(パワー)を設立。幼稚園〜大学を対象とした「いのちの教室」を展開しつつ、お寺での啓発イベント/譲渡会や、国内外の動物収容施設取材にも取り組む。
掲載日: 2021.02.19