信号機から考える今の日本。

「医療の常識を問い直す」をテーマとして、公益財団法人 未来工学研究所 22世紀ライフエンスセンター主任研究員(※未来工学研究所は内閣府をはじめとする行政機関等の委託を受けて未来予測を行う研究所である。)小野直哉氏をお迎えして、医療についてお話いただいてきた、常識のカベ。

 

医療の歴史や制度の成り立ちなど、普段病院や学校にいても聞くことのないようなお話が多く、今まで持ってきた「医療の常識」が少し覆されたように思います。第5回は、第1〜4の内容を受けて参加者が思った疑問や感想を交えながらお届けいたします。

 

 

5-1

 

 

<小野先生のお話の内容はこちら>

 

◎第1回「お寺で「医療の常識」を問い直す。効率化と合理性の追求の果てに何があるのか」—常識のカベ講演録

◎第2回「今の「私」の健康と日本の歴史」—常識のカベ講演録

◎第3回「私たちの生活に結びつく医療。あなたの子どもに何を残すのか?」—常識のカベ講演録

◎第4回「『敗北の医療』の世紀の果てに……」—常識のカベ講演録


—-ディスカッション&質問

Q:詳しくない分野のことですが、まず知らされていないことがいっぱいあるんだなということを思いました。そういうことも含めて、医療界では情報が統制されている、そこに意図が働いているような気がしました。

近代化していった中で、お金が集まったり権力が集まったりし、そこを中心に医療などが動いているような気がしました。しかしこれからは、近代的ではない医療、傍で見守る医療へと移行し、それは経済的には縮小へ向かっていくと思えるのですが……。

それについてどう思いますか?

また、もしそういったことがあるとすれば、どうしていったら良いのかということを教えていただければと思います。

 

小野:

私個人的には、あまり陰謀論的なことは考えません。

例えば、よくあるユダヤ陰謀論のような陰謀論はあまり考えません。陰謀論はどうしても偏っている考えが多いので。

未来予測の仕事に関わっていると、世の中は単純ではないことに気付かされます。

例えば第二次世界大戦が何故起こったのかも、世界的には敗戦国のドイツや日本に非があることになっていますが、それは戦勝国からの刷り込みかもしれません。

客観的に見ると、世界が第二次世界大戦へ向かっていった際、ヒットラーのナチズムの台頭を許したのは、実はアメリカでした。

アメリカの車で有名なフォード社の社長のユダヤ人に対する思想が多分にヒットラーに影響を与え、ヒットラーがユダヤ人を大量虐殺したホロコーストへと繋がっていたといわれています。

特定の集団が特定の事象に陰謀論的に関与するよりも、その時代、その状況によって様々な考えや思想や思惑が生み出され、それらが複雑に絡み合い、影響し合い、たまたまその事象が起きたと考えます。

ただし、その基盤にあるのは、絶えず経済的な競争、利権や国益があるのは確かです。日本政府を考えると、明治期や大正期は、日本から海外へ相当数の移民が出て行っています。

当時、日本国内では、近代化のために増える日本国民を食べさすことができませんでした。そこで、当時の日本政府は欧米列強に習い、満州や朝鮮、台湾などに、自分たちの市場を求め、海外侵略を行いました。いわゆる大東亜共栄圏が大東亜戦争の大義、錦の御旗でした。

真実は非常に相対的で、その時その状況において変わってしまいます。

ですから、その当時、そのような医療・健康政策をやってきたのは、そのような時代背景の結果であり、良い悪いの価値判断はしません。ただ先ほども言いましたが、政策の根底には、国益をはじめ、予算や財政も含め、お金が絡んでいます。市場の獲得や資源の獲得は、近代国家を維持するには必要です。

 

図3

Q:大きな力、大きな流れによって制度ができあがっていくような印象を受けます。私たちは、私たちの外でつくられたその制度に合わせていくしかないのでしょうか?

小野:

おっしゃっている意味は、20世紀までの人口動態グラフがピラミッド型で、若者や就労者人口が多く、高齢者は少ない、拡大成長路線の流れに合致した人口動態が、20世紀までの日本社会を成立させていたことかと思います、その人口動態を前提に他のほとんどの国の政策も成り立っていましたが、これから日本が直面していく逆ピラミッド型人口動態になってしまったら、ピラミッド型の政策では対応できません。

今、私たちはその方向に確実に向かっています。

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そのため、今の日本の多くの分野が行き詰まっている現状です。テレビや新聞で連日、高齢化率の報道がされています。しかし、医学部教育を見てみると、恐ろしい程、現状を認識していません。それで日本国民が日常生活を送っているのが日本の現状です。

これは、私たちの中に、お上に頼る意識があるからです。

特に医療分野は官製ビジネスで今日まできました。

医療保険、介護保険という決まったサービスと支払い体系の中で、サービスの提供と金銭の支払いがされ、それで医師や看護師の給与が支払われています。

つまり、サービスや金銭的なものは国が決めています。それで生きているのが医療従事者です。

このような世界には、競争はなく、安泰で、イノベーションは起き難くです。しかし、この状況では、これからは立ち行きません。既に、お上に頼る時代は前世紀で終わっています。それを小手先でやろうとすることに大きな問題があります。

私が一番危惧しているのは、先ほどもオリンピックまでは景気がいいと言いましたが、それ以降の景気は必ず悪くなる可能性が高く、超高齢化もどんどん進んで行く、その中で地震が起こる可能性が非常に高まっており、さらに、一般的には余り言われてませんが、デフォルトが起こる可能性があることです。

GDP比率の借金が世界で一番高いのは日本です。もし、これらが同時期に起きたなら、日本の医療・介護福祉、年金などの社会保障制度は機能するのでしょうか?

現状では、お上に任せている場合ではなく、日本国民一人ひとりが自ら考え、対応していかなければならない事柄です。

 

Q:近代国家の三要素、軍事・産業・福祉とあって、戦争が終わるまでが日本でもそのパターンで、戦争が終わってから20世紀までは、今度は軍事が薄れて産業と福祉国家ということになっているんですよね。そこまでは分かったんですよ。

次に21世紀になったら、まさにさっきおっしゃったみたいに、若い人がいなくて、老人がたくさん増えるという社会になっていきます。そうするとこの近代国家を支えると三要素がどういうトライアングルなり、関係性になると先生は思いますか?

 

小野:

既に日本は近代国家の前提が崩れているので、

維持できなくなると考えます。

 

Q:なるほど。そうすると近代国家、つまり拡大と成長と合理性、効率を求める、そういう国家は無理だということですね。

 

小野:

そうです。無理です。

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今日は話しませんでしたが、今後、社会が変化するには、どのように科学技術を使うかも含め考える必要があります。

 

スクリーンショット 2018-07-26 20.06.59

Q:社会を変えるというのが近代国家の成功体験を積んできた人であること。彼らには変えることができないと思うんです。そうすると、個人個人がどういう風にして変わっていくかということだと思うんですが、それはすごく時間がかかると思うんです。

 

小野:

それは、時間との競争と考えられます。

よく言われるのは、今の40代、50代の役人は変えられないと。

なぜなら、20世紀までの価値観による成功体験で出世した人たちです。政治家も同じです。その人たちが国の政策や方針を決め、実行するので、無自覚に過去と同じことをやろうとするので、どんどん日本がボロボロになる。皆んなの力で変わるのが先か、ボロボロになるのが先か?これからの日本の社会は相当キツくなるでしょう。

今の小学生や中学生に「君たちの未来はバラ色だよ!」とは、口が裂けても言えません。

今までの20世紀と同じような考えや価値観で生きていきたいと思うのであれば「外国へ出なさい」、「アフリカや南米であれば、20世紀までの日本と人口動態がそんなに変わってないので」と言うしかありません。それとも「私たちの世代と一緒に、日本を変えていく努力をしてくれないか」と、どっちかの選択になるでしょう。

(常識のカベ、小野直哉氏講演より)

 

「私たちの世代と一緒に、日本を変えていく努力をしてくれないか」

自分の子どもや孫に胸を張ってそんな言葉を言えるのでしょうか?

医療のお話を聞きながらも、日本のアイデンティティーにも踏み込んでくださったようなお話にもなりました。

次回で最終回です。お楽しみに!

 

◎第1回「お寺で「医療の常識」を問い直す。効率化と合理性の追求の果てに何があるのか」—常識のカベ講演録

◎第2回「今の「私」の健康と日本の歴史」—常識のカベ講演録

◎第3回「私たちの生活に結びつく医療。あなたの子どもに何を残すのか?」—常識のカベ講演録

◎第4回「『敗北の医療』の世紀の果てに……」—常識のカベ講演録

◎第6回「持続可能な医療への出発点」—常識のカベ講演録


お寺で学ぶ講座「常識のカベ」とは・・・

2017年3月1日より連続講座として始まった本企画。

講座の中で、各種の専門家をお招きして、提言をいただきそれを踏まえて、対話を行い、参加者ひとりひとりの「常識」を問い直し、学ぶ場を提供しています。

時代を越えてあり続けるお寺で、今のあり方をじっくりと見つめなおす時間を。

詳細はこちら→常識のカベfacebookページ

 

 

2018.7/26 更新

   

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掲載日: 2018.07.26

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