【常識のカベ】「おせっかい」が生む新たなコミュニティって?<後編>

人と人のつながりが希薄化する中、地域のまちづくりに携わる人たちと生み出されたシステム「つながりトクちゃん」(仮称)。人々の「おせっかい」を促し、誰もが頼り、誰もが頼られる地域を作ろうとするものです。果たして、このシステムは地域の救世主となるのでしょうか?後編では、「つながりトクちゃん」をもう少し詳しく見た後、そのメリットとデメリットを考えます。
(前編記事はこちらをご覧ください)
 

 
テクノロジーが人のつながりを生む時代
 
つながりトクちゃんの持つ最大の特徴は、ICTの活用です。電話やインターネットといった、従来からあるITだけでなく、スマートスピーカー(注)やAIといった先進技術を積極的に用いることによって、人々の交流を促すということです。ICTの活用と聞くと、コミュニティの促進と真逆のようなイメージを持ちますが……。
 
(注)スマートスピーカー:AI(人工知能)スピーカーとも称される。マイクが内蔵されており、使用者の声を認識し、情報検索や家電の操作を行う。
 
実際に、地域の方からも同じような懸念は示されているそうです。これに対して、「あくまでも、人のつながりを断ち切るAIではなく、豊かにするためのAIの普及が必要」と話す菱川さん。具体的な例を示してくれました。
 
例えば、トイレの電球をIoT化させ、インターネットと接続することで、電球が稼働した回数(=トイレを使った回数や時間)をモニターするシステムを構築。健康的な生活が送れているか、何か体に不具合が起こっていないかを把握することが出来るといいます。
また、スマートスピーカーを用意することで、利用者が「おはよう」と毎朝スピーカーに話しかけることで、日々の生活を見守ることが出来ますね。
 
(注)IoT:Internet of Thingsの略称。「モノのインターネット」とも呼ばれ、パソコンや携帯電話といった情報通信機器以外のモノがインターネットを介して接続されること。
 
他にも、システムが人と人同士のマッチングを行うといった構想もあるそうです。いずれにせよ、ICTありきではなく、ICTによって人と人とのつながりが促進されるようなデザインをされています。
 
「助けて」と言えない高齢者
 
人間関係が希薄化しているという声がある一方、地域の方々からは「助けてほしい」と正直に言えないという悩みもあるといいます。菱川さんいわく、かつては草刈りや田植えといった作業は村の人々と共同で行っていたそうですが、今では草刈りですら頼むのをためらうと言われます。その背景には「恥」という日本人特有の概念があるようです。
しかし、専門の人手を確保しようにも、過疎化はもちろん、昨今のいわゆる「働き方改革」によって、長時間の労働は難しくなり、専門のヘルパーだけで助け合う方法は現実的ではなくなりつつあるようです。
 
そもそも、高齢者世代は今のところ機械に慣れている方が少なく、スマートフォンの普及率も高くありません。しかし、高齢者に使用方法を教えることで、新たなつながりが生まれるという見方もできるでしょう。
 
困りごとを探そう
 
続けて、菱川さんは地域における、「困りごと」は何かを紹介してくださいました。その内容は「草刈り」や「ゴミ出し」といった日常的なものから、非日常なことまで。
特に大きな問題は、この問題自体を聞いてもらえる人がいないことだそう。コミュニティの中で、誰かの困りごとをみんなが共有することで、助ける機会が増える可能性がありますね。
 
地域の方が抱える「生活の困りごと」をマッピングしたもの。緊急と不急、日常から非日常まで、困りごとは様々。
 
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「まちづくり」と言われると、人が多く住む、富が生まれるといった経済的なところに目が行きがちです。しかし、それが本当のまちづくりと言えるでしょうか?菱川さんは、「まちづくりは、だれもが心豊かに日々小さな幸せで感動できる共同体づくりではないか」と話されます。
 
「つながりトクちゃん」の普及と持続には、「助けてほしい」と気軽に言える空気づくりはもちろんのこと、助けられる人が「助けたい」と思える空気づくりが必要でしょう。
つまり、まちづくりは人づくりであるということ。一人ひとりの生き方から「しずかな革命」を起こすことが求められます。一人ひとりの意識改革から、まちづくりは始まるのです。
 
今年度の「常識のカベ」は、高齢者の問題を中心に取り扱ってきました。高齢者の問題と一口に言っても、お金の問題や医療の問題、そしてコミュニティの問題と、数えあげればキリがありません。私たちは、どんな問題に対して、どんな間違いを犯してしまったのでしょうか?当分、「常識のカベ」のネタが尽きることはないでしょう。
掲載日: 2020.04.03