文化の力で楽しい社会に!発信するDESIGN WEEK KYOTO

前回に引き続き、COS KYOTO株式会社代表取締役/文化ビジネスコーディネーター 北林功さんにお話を伺っております。
「ポートランド日本庭園」で行われた祇園祭の紹介について伺った前回の記事はこちらをご覧ください。
 
インタビュー記事
第1回の記事はこちら
第2回の記事はこちら
第3回の記事はこちら
 
 
業種を超えることで高め合える
 
――北林さんが企画されているイベント「DESIGN WEEK KYOTO」についてお伺いします。このイベントではどのようなことをされたのでしょうか?
 
北林功さん(以下、北林):DESIGN WEEK KYOTOは2020年2月で5回目の開催でした。
 
↓ DESIGN WEEK KYOTOでの工房見学のようす

DESIGN WEEK KYOTOのサイトはこちら
 
 
100年近く続いている染屋さんがありまして。ずっと下請けで続けられていたんですが、DESIGN WEEK KYOTOが初めて会社名を一般に出す機会となりました。そこで、自分たちの商品、自分たちの存在を知ってもらえるというその機会に、初めて自社ブランド商品を作られたんですが、それをDESIGN WEEK KYOTOで披露すると、洋装とかいろんな分野の人たちからコラボレーションの話が舞い込むようになったそうなんです。私たちのような中立の立場のものが運営している中立の場に出ることによって、仕事の幅を広げられたんですね。
DESIGN WEEK KYOTOは、そういった新たな交流や出会いの機会となる場や、会社特有の素直な本音をぶつけ合える場としても機能しているんです。
 

――DESIGN WEEK KYOTOでは、職人さんたちが業種を超えて交流し、高め合っているんですね。
北林さんの主なお仕事としては、前回伺った「ポートランド日本庭園」での企画といった国際的な活動と、国内ではDESIGN WEEK KYOTOなどのイベント運営、あとは個別の企業のコンサルティングといったところでしょうか。

 
北林:大体そうですね。あと、教育事業に力を入れようと思っていまして。DESIGN WEEK KYOTOに参加する人、企業同士がお互いで学び合い、高め合えれば、次のステージへ進みたいという人たちも出てきます。その方たちのために、セミナーや研修というかたちで学びのサポートをしたいと思っています。
 
――人材教育ということでしょうか?
 
北林:そうですね。ブランドやマーケティングとは何か、あるいは原価計算のしかたといった基礎から海外での販路開拓といった応用までのビジネス知識をお伝えしたいと思っています。さらにその中で、地場産業の地位向上にも力を入れたいですね。そして、それらの売り上げの一部をその産業を支えるものに投資し、循環させる。最低限のコストでサステナブル(持続可能)なビジネスにもつながります。こういった会社やグループが京都、そして日本全体でも作っていけたら人々の暮らしは心豊かになるんじゃないかなと考えています。
 
――そういった企業経営ができる人の教育を目指されているんですね。
 
北林:はい、人が変われば社会が変わるという信念は変わっていません。今の状況下で本質とは何かを考え、気づく人が増え始めていることは僕のやろうとしていることの上ではいいことだと思っています。
そこで、本質を見抜く力を育てて伝承するために、価値観の啓発のようなこともしたいと考えています。できるならお寺さんも一緒に。これは地場産業の有名な京都が、日本の中で先駆けてやっていくべきだと思っています。
 
 
文化の力で楽しい社会に
 
――はじめにも仰っていましたが、北林さんは、「文化で世の中を変えていきたい」という想いを持っておられますよね。どういうところを変えていきたいと思われているのでしょうか?またその解決のために文化はどうかかわるのでしょうか?
 
北林:はじめのほうで自律・循環・継続可能な社会の話をしましたよね。(第1回参照)それは極端な話、地球が滅びないためにも必要だと思っています。滅びないためには既存の社会の変化が必要ですが、人間はどういう方向になら自然と変わっていくんだろう?という疑問を抱いたんです。
 
するとやっぱり、楽しい方向になら前向きに変わっていくのではないかと。ではその楽しさを求める状況に持っていくためには、あるいは世の中をよくするにはどうしたらいいかというと、その答えが「文化」だと思ったんですね。
文化で心が変わって楽しむうちに、だんだんものを大事にしようという気持ちが芽生え、大量生産・大量消費が減っていくかもしれない。ものが壊れたらそのたびに近くの職人さんに直してもらって長く使うとか、「おばあちゃんのものをリメイクして使うってとてもおしゃれでかっこいい!」といった価値観の社会にしていけばいいのかなと。そういう風に人の心を楽しい方向に変えていきながら、世の中の仕組みも変えていけるものが「文化」だと思っています。
 
――たしかにそこに生きる人々の心が変われば社会の在り方も変わりますよね。
具体的に、こういう生き方をすれば人間は豊かになる、といったイメージはありますか?

 
北林:今僕が考えている新しい生き方は、「四分一生活(しぶいちせいかつ)」です。1日の時間、人生の時間、あるいは暮らし方を四分一、つまり4分の1ずつに分割して捉える考え方です。4分の1畑を耕し、4分の1仕事をして、4分の1地域コミュニティの活動に費やし、4分の1家族や友達と過ごす……という生活です。このようなバランスが取れて初めて、人生は心豊かになるのでは、と思っているわけです。
 
――これからの生き方の一つのモデルになるかもしれませんね。
 
 
これからの文化と宗教
 
――北林さんが今後お寺と一緒に活動をするなら、どのようなことができると考えますか?
 
北林:精神的な面でも地域社会の面でも、お寺は扇の要のように捉えています。残念ながら今はその役割が弱まっている部分はありますが……。僕は日本に合う生活は、江戸時代の生活だと思っています。まさしく自律・循環・継続が可能な社会の仕組み。これがある程度うまく営まれていた時代が江戸時代で、その中の地域コミュニティの中立的な存在がお寺などだったと思います。でもそのまま江戸時代の状態に戻せばいいというわけではありません。本質の部分を一度江戸時代の頃に戻すべきじゃないかなという意味です。その今の時代における戻り方を僧侶の方とも議論して、扇の要としてお寺さんにも発信していってもらえないかと。
 
――「必要なものは何か」を楽しく考えるイベントなどを一緒にできたら面白そうですね!
 
北林:ぜひ!いろんな人が自由に参加できるかたちで実施したいです。対談等もいいですが、お寺さんと一緒に畑を耕す、といったこともやってみるべきかもしれませんね。お寺にはコミュニティを維持していくための知恵や場などの資源を提供してもらいたいです。
 
――お寺もまだまだできることはありそうです。オンライン化が進んでも本質の追及は続けていき、ぜひ新たなことをご一緒できたらうれしく思います。
 
北林さん、本日はありがとうございました。

 

 
今まで漠然と「伝統はのこすべき」というイメージがありましたが、北林さんにお話を伺ったことで「伝統だからのこす」のではなく「この伝統は本当にのこすべきか?」「変化するべきところはないか?」と問い直す必要性を感じました。
昨今、お寺と地域の連携が取りづらくなってきているところもあるでしょう。その信頼関係もかつての「中立の立場」を参考にしてみることで、役割を再確認できるのかもしれません。
 
文化も宗教も、人が社会をよりよくするために考え、変化してきた歴史があります。成り行きに任せるのではなく「どうしてこれはこうなのか」という問いを一人ひとりが持つことで、普段の生活が本当の意味で豊かになっていく……そんな世界への憧れを、現実に近づけていきたいと思います。
 
 
今までの記事
第1回 「文化をビジネスに?京都から伝統を見つめなおす」
第2回 「宗教の役割って何だっけ?私たちに本当に必要なものを問い続ける」
第3回 「日本の伝統文化が海外へ!ポートランドで祇園祭が行われた背景とは?」
第4回 「文化の力で楽しい社会に!発信するDESIGN WEEK KYOTO」(当記事)
   

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掲載日: 2020.09.04

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