「そこにしかないもの」こそが根幹になる。歴史と文化、経済の融合へ


NPO法人エル・コミュニティ竹部美樹さんへのインタビュー第3回。
地域活性のための鯖江市地域活性化プランコンテストや、鯖江のITものづくり道場など、革新的なプロジェクトを打ち出し、若者に限らず地域の活性・交流を促してきた、NPO法人 エル・コミュニティ。しかし、そこには目新しいものばかりでなく、古い歴史や文化を重んじる方たちの存在があるようです。

 
今回は、地域が大切にしていくべきこと。何を見据えて未来を考えていかなくてはならないかをお尋ねします。
 
<インタビューを最初から読む>
「市長をやりませんか?」課題解決型ではない、鯖江の未来を創るまちづくりコンテスト
 
今、鯖江にあるもの!歴史や文化を生かしたまちづくり
 
ーー鯖江という地域のことを沢山聞かせていただきました。そもそも竹部さんが考えられる「地域」とはなんでしょうか?
 
竹部美樹さん(以下、竹部):「そこにしかないもの」じゃないでしょうか?
例えば、鯖江の発展に寄与した第7代鯖江藩主の間部詮勝公(まなべあきかつ こう)の話があるんですが、それは鯖江の歴史であり文化です。それがあるからこの地域ができたわけです。横展開できないもの、根幹にあるもの。とでもいいますか。
 
京都で考えてもらえると少しわかりやすいと思います。歴史的な景観の中に、大きなビルとかホテルを建てる流れがなかなかとまりませんよね。私はそれが嫌いで⋯⋯。なんでそれを建てちゃったのかなぁって。悲しくなるんですよね。
 
京都はいっぱい人も来るし注目されているのでまだ問題ありませんが、地方だとそうじゃない。けれど、みんな東京みたいな都市を作りたがる。鉄筋のビルをお金かけて建てたり⋯⋯。
そうではなく、鯖江にしかないもの、歴史や文化とかそういうものを生かしたまちづくりの視点がほしいです。その意味で、鯖江を支援してくれる人たちは歴史や文化がとても好きなんじゃないかなぁと思います。
 
ーーお寺は特に、まだまだ歴史や文化の中にある気がしますね。特に京都とかは。
お寺は良くも悪くも、その地域と一蓮托生なので、その地域をどうしていくか?ということに対して、意識は持ってる人は多いと思います。ただどうやっていいのかわからない僧侶が多いのも現状かもしれません。

 

竹部:私自身もプランコンテストで、お寺を使わせてもらわなかったら、ここまで大事にしなきゃ、と思ってなかったと思います。
最近、鯖江の年配の方たちと「お寺を生かした街づくりをどうやったらできるんだろう」って一緒に考えたりもします。
 
例えば、大型スーパーが地元にできました。そうすると、街中にある既存のスーパーとか歩いて行ける範囲にある小さいお店はつぶれちゃうと思うんです。
その時に、年配の世代や車を持ってない人は、どうするんだ?っていうこともあるじゃないですか。
 
もっと先を考えると、インターネットがこれだけ加速している現代で、「じゃあ、大型スーパーはいつまでもつの?」という話ですよね。
大型スーパーはあくまでも営利事業なので、採算が取れないなら簡単に撤退します。
そうしたら、地域に空洞化がおこる。そうなった時に、じゃあどうするの!?っていう話に絶対なります。どうして長期ビジョンで見れないのかなぁと⋯⋯。
 
互いにちゃんと歩み寄る必要がある。
 
ーーそういった考えを、意識を若手の僧侶にも伝えていきたいですね。
ぜひ若手の僧侶、これからの未来を担う僧侶にメッセージがほしいです!

 
竹部:文化とか歴史と、経済の融合かな。
かたくなに、こっちがいい!とか、こっちの方が!ってなると、バランスが崩れてダメだと思うんですね。いかに違いを融合させていくかがとても重要で、ここをちゃんと考える必要があると思っています。互いにちゃんと歩み寄る必要がある。
 
例えば、私は着物がすごい好きなんですが、着物文化でも同じだと思います。
福井の着物店にお話を聞くと、着物を着る世代が減ってきているからそれをなんとかしなきゃいけないって言っていました。
そこで、マジックテープで着れる着物を開発されたんですね。けど、一部の方から痛烈に批判されたと言っておられました。
まずは、簡単な物でも、若い世代や訪日外国人の方に着てもらう。そうすれば、さらに着物に興味を示してくれます。じゃあ、その次はもっとちゃんとしたものを着てみようって!って実際になってるんですよ。
 
若い方に着てほしいって言っても、質の高いものは高くて買えません。だったらまずは着やすいものから始めれば良いんです。
興味をもったら、そのあとはいくらでも調べたり、色々していきますよ。そこをなんで完全にきっちゃうんだろうって残念ですよね。
 
お寺側にも受け入れてもらうことが必要だと思います。誠照寺さんも受け入れてくれたので、私も意識が変わりました。今では「どんどん使って」って言ってくれます。
妥協点をそれぞれに見つけていく。入り口はなんでもいいと私は思いますね。
 

ーー段階があるといいですよね。
 
竹部:それと、これからは時代を読むことがとても大事だと思います。
そのためには、現場をしっかり知ること。もちろん、情報を得ることも重要ですが、やっぱり現場にでるしかないと思っています。SNSもどんどん活用もしたらいい。SNSも現場の人の声ですから。
 
ーー確かにSNSは現代の現場の一つですね。
 
竹部:鯖江のすごいところの一つは、行政の人がfacebookをやっているので、グループを作ったりメッセンジャーのやりとりができる。堅苦しいメールを使わなくていいので、楽なんですよね。スピードも速いし、情報もとれます。
とにかく、世の中にちゃんと興味をもつことが大事です。
 
私は、歴史と文化って現場だと思っています。
例えば、間部詮勝公が民の憩いの場として、西山公園を分け与えた歴史が鯖江にはあります。それ以降、西山公園はずっと無料で開放されています。併設されてる動物園もですよ!今でもずっと市長がその考えを継続しています。全部、無料って多分とても大変だと思いますよ。維持にもお金が必要ですし。
でも、そういうマインドがずっと生きている。歴史があって、それが今に伝わってきているんです。
 

ーーー
 
まちづくりから始まり、教育のこと、地域での循環のことなど様々なことをお聞きしました。それを全て真似して、違う地域で成功するかはわかりません。ただ、竹部さんが話してくださった、歴史や文化のこと、時代を読むこと、何よりも自分自身が本気になることは、どんな場所でも忘れてはいけないことのように思います。
 

<竹部 美樹さん>
NPO法人エル・コミュニティ代表
東京のITベンチャー企業で働いた後、2008年より鯖江市地域活性化プランコンテストを開催。2010年より地元鯖江に戻り、地域を担う人材を育成するとともに、若者が活躍するフィールドを鯖江に作るべく地元学生と共に活動。
2015年からはSAPジャパン等賛同企業の支援を受けながら、ITものづくりの拠点「Hana道場」を運営。鯖江、日本、そして世界で活躍するITものづくりの担い手育成と、伝統の“ものづくり”と“最先端のIT”を掛けあわせ、イノベーションを起こす場所を創造中。

掲載日: 2020.10.09