「大切な人を送る人への支援を考える」|NPO法人 葬送を考える市民の会②
講座、講師派遣、相談、おしゃべりサロン、葬送支援など。
認定NPO法人「葬送を考える市民の会」の活動は多岐にわたります。
それもこれも、故人と送る人の思いを大切にした旅立ちの実現のための取り組みです。
今回はその多岐にわたる支援の取り組みについて、代表理事を務められる澤知里(さわ・ちさと)さんからお話をお聞きしました。
インタビュー記事
第1回の記事はこちら
第2回(今回)
葬儀社。お寺との関係。子どもに迷惑をかけたくない。葬儀の悩みはその三つ
――講座、講師派遣、相談、おしゃべりサロンに葬送支援など、多岐にわたるご活動ですが、一つ一つ聞かせていただきたいと思います。そちらの「葬送を考える市民の会」では、葬儀やお墓、遺言、相続、高齢者住宅などについて講座をされておられますね。この中で一番の人気講座はどちらになりますか?
澤知里さん(以下:澤):人が集まるのは札幌市地下歩行空間でのパネル展などですね。多いときは500人くらい来られました。相続関係のセミナーも結構人気です。実際にどんなトラブルが多いのかを経験している司法書士さんとか行政書士さんにお話してもらいます。葬儀に関する講座も人気ですね。
(札幌市地下歩行空間での展示の様子)
――葬儀に関するお悩みや興味で大きな問題を三つあげるとすればどのようなものになるでしょうか?
澤:一つ目は葬儀社さんの見積もりが妥当か、内容は本当に必要なものなのか、安くするにはどうしたらよいか、そういう部分です。二つ目はお寺とのことです。院号や戒名が高いのはなぜか、必要なのか。お布施ってなんなのか、決まった金額でないのはなぜなのか、普段信仰していないのに葬儀には来てもらわなければいけないのか、そういったことでしょうか。
三つ目は、子どもたちに迷惑をかけないで葬儀等をするにはどうしたらよいかということですね。
みなさん身内を送ったときに大変な思いをされたという経験から、子どもには迷惑をかけたくない、できることはしておきたい、整理もしておきたいと。だからお寺との付き合いをやめたい、墓じまいもしておきたいと話す方もいます。
ただ、葬儀は子どもが親にしてあげられる最後のことですから、迷惑とは考えないでほしいと私は話しています。きちんと経験しておかないと、次の世代に伝えられなくなりますから。
ご縁のあった方には、お寺のシステムを説明して欲しいな、と思います
――ケースバイケースかとは思いますが、お寺との関係に悩まれている方に、澤さんはどのようなアドバイスをなされますか?
澤:お話をじっくり伺いますが、確かにお寺がひどいなっていうケースもあります。そういうときは本山や弁護士さんに相談するとか、お寺を移る、離れることもできるとお伝えします。
ただ、中には勘違いされていることも結構あります。例えば檀家の役割、お布施や戒名など、説明していくと「そうかそうか、そういうシステムなんだね」って納得されることも多いんです。
――寺院に問題があるケースと、そもそも説明が足りていないケースの両方があるんですね。
澤:ご縁のあった方には、お寺のシステムを説明して欲しいな、と思います。例えば初めて家族が亡くなりお寺にお世話になったとします。お寺としてはその時点でご門徒になられたと思うのかもしれませんし、ご門徒の役割や費用的なことは、細かく説明しなくても親や親族から伝わっている、または昔からの習慣だから常識だとお考えになるのかもしれません。ですが、実際は伝わっていませんし、お寺に直接聞いて良いものなのかもわからないので悩んでいます。そうなると、お寺に不信感を持ってしまうこともあります。
――そうですね。そのような説明不足がないよう、心がけようと思います。続いて「葬送を考える市民の会」で行っておられる講師派遣は、どのようなテーマでお話しされるのでしょうか?
澤:ご依頼先のご要望に応える形ですね。葬儀や遺骨のこと、グリーフケアについてお話しするのが中心ですが、葬儀のことに絡めて、相続や遺言について話してほしいと依頼されることもあります。
――個別相談は事務所まで来ていただくのでしょうか?
澤:はい。事前に日にちを決めてもらって来ていただいています。体調が悪くて行けないという方は、こちらからご自宅や病院までうかがうこともあります。
――この個別相談では、どのような内容のご相談が多いのでしょうか?
澤:多方面にわたります。例えばある方が親の葬儀の相談に来られたんですが、お話を聞いていくと親族間に問題がありました。ですので、親が亡くなる前に解決することを勧め、弁護士さんや税理士さんをご紹介したことがあります。
問題を一つだけではなく、いろいろと抱えている方もいらっしゃいますが、2~3時間話されていくうちに皆さん頭の中の整理がついてくるようです。こちらがアドバイスすることは実はあまりないことも。結論は出ていなくとも道筋がついたと、満足して帰られる方が多いです。
(講座の様子)
参加者の体験が参考になる、おしゃべりサロン
――おしゃべりサロンにはどんな方が参加されますか?
澤:ほとんどは会員さんですが、たまに会員さんのお友達や、どんな会か知りたいという方もいらっしゃいます。以前は10人の定員でしたが、今は新型コロナウイルスの関係で4~5人です。内容はそのとき参加された方によっていろいろですね。
――なるほど。やはり重い話になることもあるのでしょうか?
澤:「一週間前に妻の葬儀したんです」という方がいらして、泣きだしてしまわれることも。すると周りの方も「ウチも去年だけど亡くしたんですよ、つらいよね」というお話になったりします。ただ、そういう話が続くわけではなく、明るい話題に切り替わったりするので、皆さん最後は笑顔で帰られます。
――そうですか。最後は笑顔というのもいいですね。最後に、葬送支援は具体的にどういったことをされておられるんでしょうか?
澤:亡くなられて、ご遺族はご自宅に戻られてから葬儀社さんに葬儀の見積もりなどに入りますが、基本的にはその見積もりの時に立ち会います。
何年も前ですが、夫婦二人暮らしで夫が入院中の方がいました。子どもは遠方なので、もし夫が亡くなっても子どもはすぐに駆け付けられない、自分一人で不安でいっぱいだと話していたんです。それで、「では、その時に連絡をくれたら一緒にいますよ」と話すと、とても安心できると喜んでくれました。
葬儀社さんとの打ち合わせの時とか、大切な方を看取るときとか、そういう不安な時に、そばにいてほしいと希望がある人は、事前に登録をしておいてくれれば駆けつける仕組みがあればいいねということで始めました。
――それは、大切な方を亡くされた方には大変心強い支援ですね。
<編集後記>
「葬送を考える市民の会」の多種多様な支援。
それは、裏を返せば人を見送ることにまつわる悩みや問題の多様さをあらわしているようにも思えます。
葬儀の煩雑な手続きに対する基本的な知識。寺院との関係。死にまつわる不安や悲嘆。
これらの問題は、一人で乗り越えていくにはあまりにも大きすぎます。誰かが支援し、支えなければならないのです。
次回は「葬送を考える市民の会」の、一人で死にゆく方々への支援、「はっぴいえんど事業」についてお話をお聞きします。
<インタビューの続きはこちら>(リンク)
第3回「一人で旅立つことへの支援、「はっぴいえんど事業」」