減らせ殺処分 お寺でペット譲渡会の取り組み |「いぬとねこ」ー京都府一念寺

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京都市下京区にある浄土真宗本願寺派 一念寺さんでは、お寺を活用した様々な行事が行われています。前回は、イベントスペースの貸し出しについて伺いました。
第2回となる今回は、実際にイベントスペースとして貸し出しを行なっている実例の一つである、「いぬとねこ」と題したペットの譲渡会について取りあげます。
 

 
ペットの譲渡会とは?
 
ペットの譲渡会とは、主に犬や猫の里親を探す催しのことです。京都・西本願寺門前町にある仏具店の方の同級生が「Pawer.」(http://pawer.jp/)という団体に所属されていて、「ぜひイベントをやりたい」と一念寺さんに声をかけたことがご縁だったそうです。
「Pawer.」とは「一つでも多くの命を守り、人と動物との幸せな関係を築く」という願いのもと、動物福祉についての活動、情報発信を行う団体です。一念寺さんでは、1年間に5回から6回ほど、日曜日に実施しているそうです。
 

 
ペット譲渡会を始めるには?
 
ペットの譲渡会をお寺で始めるにはどのような準備が必要なのでしょうか?実際に譲渡会の取り組みの協力をされている谷治住職にお尋ねしました。
一念寺さんでは、犬と猫の譲渡会だけではなく、Pawer.さんが各国で撮影した保護犬や保護猫の写真展や、ペットに関する本をおよそ80冊持ち込んでもらい、本堂で自由に読書できるように開放するといった取り組みを行なっています。
 
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ふれあいスペースを別の部屋に用意する
 
一念寺さんでは、犬猫のパネルを見た参加者が興味を示してくださったら、実際に触れ合えるスペースへと案内しているそうです。実際に触れ合うことで、参加者とペットの相性を確かめることもできるそうです。そして、里親になってみたいという参加者がおられたら、Pawer.さんに引き継ぐという形を取っています。また、ペットの譲渡に関する事務手続きは、全てPawer.さんに任せているそうです。
 
image1近年、人の身勝手な理由によって捨てられたペット等の殺処分が問題となっている(©︎写真AC)
 

 
ペットの追悼法要
 
また、一念寺さんでは実施日のお昼ごろにペットの追悼法要を行なっています。この取り組みは、2回目の譲渡会から始められたもので、「ペットロス」と呼ばれる愛するペットを失い、悲しい気持ちを抱えておられる方々を対象に、首輪や写真といった形見となるものを持ってきてもらい、お経のお勤めと法話を行なっています。
法要自体は無料で行なっておられますが、参加者の多くはいくらかのお布施を包んでくださっているそうです。また、この法要はペットだけではなく、保健所で殺処分されてしまった犬や猫たちの追悼という意味合いも含まれています。これは、お寺だからこそできる取り組みではないでしょうか。
 
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気をつけたいこと
 
・犬や猫の管理には気をつけて
「犬や猫は物を壊します」と話される谷治住職。やはり、犬や猫を自由にするのは危険が伴うようです。また、参加者もペットアレルギーを持った方、ペットが好きだけど得意ではない方と、様々な方が来られます。誰しもが犬や猫にふれあえるわけではないので、犬や猫の動きには注意を払わなければならないでしょう。
 
一念寺さんでは、設備の保護やアレルギーを持った方への配慮として、犬や猫を本堂に入れることはせず、別室に設けたふれあいスペースに限っているようです。また、犬や猫と触れ合えるスペースについても、専用の絨毯を用意した上で、終わった後の掃除を徹底されています。
 
イベントへの理解
やはり、浄土真宗のお寺で動物を取り扱うということには、様々な考えがあるようです。中には、動物を取り扱うことを快く思わない方もいらっしゃるかもしれません。谷治住職も「まだまだ抵抗のある人も多そう」と実感を語っておられました。
ペットの譲渡会を行う際は、門徒の方々はもちろん、近隣寺院にイベントの趣旨を理解してもらう取り組みが必要不可欠ではないでしょうか。
 

 
一念寺 谷治暁雲住職の声
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親鸞聖人は一切衆生(生きとし生けるもの)に「蜎飛蠕動の類」(けんぴねんどうのたぐい/飛びまわる虫やうじ虫のこと)を含めておられますが、どのような小さな命にも仏様の願いがかけられているということだと思います。引っ越しなどのご事情でかわいいペットをやむを得ず保健所に連れて行かなければならない場合もありますが、中には飽きたからという理由だけで殺処分を望む人もおられます。
 
小さな命も大切な命なんだぞということを少しでも社会に啓発できればと考えていたところ、たまたまNPO団体のPawer.さんと出会い、意気投合して一緒にさせていただくことになりました。また、愛しいペットを失ってなかなか立ち直れない方に何かできないかと考えていたところ、お寺にできることは法を伝えることしかないなと思いまして、今はイベントの開催時に追悼法要というかたちで参加させていただいております。
 
一念寺さんでは、様々なイベントを行われています。その中でも今回は、「いぬとねこ」と題したペットの譲渡会についてご紹介しました。日本国内においては、年間5万5000頭もの犬や猫が殺処分されています。
そうした中で、1頭でも多く殺処分を免れて欲しいという思いを持ち、ペットの譲渡会に取り組むのは素晴らしいことではないでしょうか。
一方で、お寺単独でペットの譲渡会を行うのは、大変な労力がかかることもうかがえます。
そこで、Pawer.さんのような取り組みをされている団体と提携して行うことで、スムーズにイベントを実施できるのではないでしょうか。
 
譲渡会「いぬとねこ」についてはこちらの記事
http://pawer.jp/our-work/events/)もあわせてご覧ください。
 

   

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掲載日: 2020.01.23

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