京都のお寺で保護動物の譲渡会。イベントを通して伝えたいこと|一念寺「いぬとねこ」レポート


2020年10月25日(日)、京都市下京区にある一念寺さんにて、保護動物の譲渡会「いぬとねこ」が行われました。「いぬとねこ」は、動物福祉団体 Pawer.さん(代表:大西結衣さん)が2018年4月から犬猫の写真展として始められたもので、同年12月から始められた譲渡会は今回を含め、のべ14回。
訪れると、お寺の中にはたくさんの保護猫たちが。およそ50名が今回のイベントに来られ、にぎやかな光景が広がります。ですが、実はこのイベント、ただ単に保護動物の譲渡を行うことだけが目的ではないのです。
お寺で行われる保護猫や犬の譲渡会。イベントを通して気付かされたものとは。当日の様子をレポートしました。
 

本堂の様子。総勢36匹の保護猫たちが集う。

 
お寺の中へ立ち入ると「ニャー」「ニャー」とあまたの鳴き声が聞こえます。今回の譲渡会では、36匹の保護猫が集まり、合計8組11匹の申込みがありました。
以前は、本堂以外の書院で保護猫の顔見せをされていたそうですが、参加者や保護主さんが増えたので、本堂でも猫たちの顔見せを行っているとのことです。
 

保護猫たちの迎えかた
 
参加した猫たちが保護された場所は様々。町中で保護された野良猫であったり、多頭飼育崩壊の現場から救出された猫であったり……。
Pawer.さんが直接、犬や猫の保護活動を行うのではなく、各保護主さんと新しい飼い主さんとの仲介役を行っています。このような形にすることで、間接的でも、多くのいのちを助けられるのだといいます。
 
訪れた方が新たに家族として迎えたい保護猫を決めると、別に用意されたお寺の一室で「お見合い」が行われます。そして、申し込み後は約2週間をトライアル期間として、実際に保護猫と里親希望者さんが生活を共にし、問題がなければ正式に譲渡が決まるという流れです。
その動物にとって最適かどうかは、飼育環境や家族との相性もあり、すぐに判断が出来ないことも。環境の変化に敏感な動物への負担を最小限にするため、こうしたトライアル期間が設定されていることで、保護主さんも新たな飼い主さんも安心出来るといいます。
 
また、申し込みの費用として2万円の負担や、保護主さんとのまめなコミュニケーションをお願いしているそう。特に、新たな飼い主さんが本当に責任を持って終生飼養されるかどうかを、継続的なコミュニケーションを通して見極めているといいます。
 

本堂の柱に展示された「理由」。

 
残酷な現実を忘れないで
 
ペットショップで犬や猫を迎えるのに比べると、譲渡会での手続きはやや煩雑に感じる方もおられるかもしれません。しかし、保護主の方々がそれだけ慎重になっているのには、ちゃんとした理由がありました。
 
それは他でもなく、犬や猫の殺処分。依然として、毎年多くの犬や猫が遺棄されるなどして自治体施設に収容される現実があります。
本堂の柱には、このような展示が。
「大きくなりすぎたから」、「アレルギーになったから」、「可愛くなくなったから」……。飼い主の身勝手な理由が、動物たちに残酷な運命を与えてしまうのです。
 

「活動の中で、どうしても救えなかった子たちが心残り」と大西さん。せめてもの取り組みとして、「生きていた証」として写真を撮影、展示している。

 
新たに犬や猫を迎える前に、もう一度よく考えて欲しい。そんな想いが伝わる展示です。
譲渡会では、どうしても実際にいる犬や猫ばかりが注目されますが、この譲渡会の本当のメッセージは、こちらではないでしょうか。
譲渡会を通して、単に犬や猫と触れ合うだけではなく、残酷な現実が今だに残っていることを改めて知る。そこに、今回の譲渡会が持つ大きな意味があるのです。
 
写真展の他にも、犬や猫のグッズ販売(利益は全て動物福祉活動で使用)、関連書籍の展示が行われています。「一匹でも多くのいのちが大切にされて欲しい」。保護動物の譲渡会「いぬとねこ」は、そんな暖かな想いを持った方々がお寺に集うイベントでした。
 
一念寺 保護動物譲渡会「いぬとねこ」の詳細はこちら
 
次回記事では、イベントの主催者である「Pawer.」代表の大西結衣さんにインタビュー。イベントを始められたきっかけや、一念寺さんとのご縁、そして動物の保護活動についてお話ししていただきました。
 
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「殺処分ゼロ」は課題の通過点。動物福祉活動を通して見えてきた現実とは|Pawer.代表 大西さんへインタビュー

   

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掲載日: 2020.11.22

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