介護・医療現場で起こる悩みにこたえていく、成年後見について|おおさか法務事務所①
成年後見制度とは。「お金は一体誰のもの?」
ーー法務事務所さんということで、企業法務や遺産などお金に関することをお仕事とされているかと思うのですが、「後見サポート」ではどんなことをされているのですか?
坂西さん(以下、「坂西」):後見サポートは、簡単にいいますと、介護や医療の現場で出てくるお悩みを専門家と話しながら、主に「成年後見人」を使って対応していくような仕事です。
成年後見人は適正な財産管理をご本人のかわりにきっちりと行います。
ーー2000年からということですが、比較的新しい制度なのですね。成年後見制度について詳しく教えてください。
坂西:私たちは、介護・医療の現場の方にセミナーなども実施しているのですが、その時にこんなクイズを出します。
「子どもであれば両親のお金を、当人がいなくても銀行から引き出せると思いますか?」
どうでしょうか?
ーー印鑑とか、証明とかあればご本人がいなくても引き出せる⋯⋯?
坂西:実はそれは違います。結構な割合で、「引き出せる」と思っておられる方がいらっしゃいます。勿論、暗証番号や通帳があれば別ですが。
子どもや妻/夫であれば親または夫婦のお金を、本人がいなくても、なんとか引き出してもらえるんじゃないかっていう感覚が多くの方にあるんですね。
例えば、本人が脳梗塞で倒れ、銀行に行くことができず、字も書けない場合。本人の妻である証明として、戸籍謄本や、家族全員が了承している、合意書みたいなものを作り、銀行に持って行く。家族であれば銀行もなんとか対応してくるだろうと多くの方が思われていますが、実はそうじゃなくなってきています。
本人確認と意思確認が、外部的な要因から求められるようになってきています。その事実をセミナーの最初にお伝えすると、驚かれる方も多くいらっしゃいます。
成年後見制度は、介護保険と同時に2000年の4月から始まりましたが、お金に関することや施設への入居等の契約について、一人ひとりが「契約」の当事者になるんだってことを認識してもらって、制度が始まっていきます。
ーーお金のことだけじゃなくて、施設への入居にも成年後見制度は関わってくるのですか?
坂西:介護保険制度が整う2000年以前は、社会福祉に関する制度や個人のお金の取り扱いなども今ほどきちんと決められておらず、また厳しくもなかったので、施設側が通帳やお金を預かっていたこともあったようです。
預かっていると、家族の方から、「家の修繕が必要なんで100万円ちょっと出しくれないかな?」とか「経済的に困ってるから、お金払ってくれないかな?」といった相談が施設に来ちゃうんですよね。
預金には何百万、何千万円と貯まっていたりもするので、本人が「うん」と言ってくれる方であれば、了承していたんです。でも、認知症になるとその判断能力・理解することができなくなってきて、施設側が悩むような事例も増えていました。
ーー認知能力が低下してること自体を、判断するのも難しいですよね。
坂西:特別養護老人ホームなどへ入居される方は、日常の簡単な会話はできても、お金についての判断は難しい状況です。なので、施設が家庭内のお金の問題に巻き込まれることもありました。
今まで、通帳を預かる施設は沢山あったと思いますが、やはり2000年が1つの分岐点でしたね。
しっかりと法的に権限のある者がお金の管理をして、施設は介護のサービスを提供するという棲み分けをする。本来の形にしていかないとダメだという介護業界の認識が、介護保険制度が始まった2000年から出始めました。
ーー2000年が分岐点ですか⋯⋯。