介護・医療現場で起こる悩みにこたえていく、成年後見について|おおさか法務事務所①
「措置から契約へ」
坂西:介護保険制度が始まった時に、「措置から契約へ」という標語がありました。
介護保険制度が整う2000年以前は、「措置」として、行政が身寄りのない方や一人暮らしで認知症で困ってらっしゃる方に積極的に関わって、施設に入所してもらっていました。
行政が、地域に困っている方がいらっしゃることを把握して、その方の行末を行政で、ある程度の道筋を立てて、この方にはこういう生活をしてもらいましょう、というような感じです。
ーー行政の方はそういう人をどうやって見つけられていたのですか?
坂西:民生委員さんや、地域の方、警察の情報提供ですかね。
今でこそ「認知症」と言われ、世間的に一つの症状として捉えられるようになりましたが、当時は「ボケ」といった言葉でくくられていました。他にも「徘徊」と言われることや、「ゴミ屋敷」と呼ばれることもありました。
そういう情報が行政に入ると、行政の方がご本人のところに行かれてお話を聞いていました。そして、お話を聞いてご本人が自宅では生活できない、と判断されれば、「措置」として施設に入所してもらっていました。半強制的に入ってもらうケースもあったみたいですね。
ただ、全て行政的な対応をすると、マンパワーの限界を迎えてしまうということで、2000年の介護保険を皮切りに、「措置」ではなく「契約」として、ご本人が介護の契約を全て自分でしてもらうことになりました。
自分の必要なものを自分で判断する。こんな介護を自宅で受けたいとか、どの施設に入りたいかを判断してもらい、そこに適正な対価を払ってもらう。
そこから、ご自身で介護サービスを契約していくんですが、認知症になってしまった方は契約ができないじゃないかっていう考えになるんですね。
そこを補完したり、社会保障の給付のあり方が大きく転換した中で、成年後見制度ができてきました。
ーー施設に入る時に、認知能力が落ちた人は、基本的には後見人をつけてくれ、という話なんですね。
坂西:施設の入所に関してはまだまだそこまで厳密ではないです。
ただお金、特に金融機関に関しては、かなりシビアになってきています。認知症になると、金融機関や不動産では、本当にその方が、認知症なのか、みきわめを求められるケースが増えてきていますね。
ーー施設に入る際は「後見人をつけてください」とそこまで強く求められたりはしないということでしょうか?
坂西:そうですね。もしその方にご家族がいれば、本人が認知症であっても「後見人をつけてください」ということまではあまり言われないです。
ただ、子どものいない方や兄弟はいるけど疎遠で、ご本人に認知症が出ているのであれば、成年後見人がいないと施設では受け入れられないといったこともあり⋯⋯。本当にいろんなケースがあります。