葬儀はなぜするのか、そこに僧侶はなぜいるのか│佐藤葬祭<後編>
何のために葬儀をするのか
――葬儀会社という立場から見て、葬儀は何のためにすると考えておられますか?また今後葬儀はどうなっていくと思いますか?
佐藤:前の話と矛盾するかもしれませんが、「葬儀はなぜするのか」についての僕の考えは、何かのため以前に、人間みんな絶対死ぬでしょ?遺体が出るでしょ?じゃあ何とかしなきゃいけないでしょ?ということなんです。具体的に言うと、遺体の処理。火葬や埋葬ですね。そのときにただ焼くだけ、埋めるだけじゃ素っ気ないしかわいそうだからお坊さんにお経をあげてもらう。
これは何かのために始まり、続いてきたことではなくて、必然を繰り返しているだけなんですよ。その過程で時代や生活に合わせて変化することもありますが、基本は必然の繰り返し。経験則で成り立ってきたと僕は考えています。
お経も必要です。お坊さんが称える南無阿弥陀仏でも南無妙法蓮華経でも、座禅でもいい。お坊さんでなくても神父さんや神主さんでもいい。宗教の専門の人が弔ってくれると安心するんです。
――葬儀は故人や遺族など誰かのためにするものである前に、必然的にやらなければならないもの、ということですね。消防士が、何のために火を消すのか考えるより先に火を消さなければならないというようなイメージでしょうか。
佐藤:そうですね。〇〇のためにするという目的があると、それが達成できたか達成できなかったかの問題になってしまうんです。葬儀で唯一達成されることは、ご遺体を処理することだけです。そこにプラスアルファ、その時々で必要だと思われるものが足されていって今の葬儀のかたちがあります。でもそのプラスアルファがなくても良し、ただあることによって一心に弔うことができるんです。
――「一心に弔う」とはどういうことでしょうか?
佐藤:「一心に弔う」というのは、没頭するみたいな感じです。お金がなくていろんなものが足りていないお別れ、ご遺体が綺麗な状態でないお別れもありますが、それでも皆さんできるだけのことはしたいと思いますよね。そういった想いのもと、そこに安心材料が一つでもあると集中してお弔いができる。するとその葬儀が、良かったかどうかじゃなくて、「やってくれてありがとう」になります。
ただ、どんなお別れであっても葬儀自体はできます。何かが足りない、状態が綺麗ではないお別れだからといって、決してだめな葬儀ではないんです。
――「葬儀はこうあるべき」という気持ちがあると葬儀に没頭することができなくなる。その点で言えば、形式より没頭という想いを大事にしたほうがいいということですね。
佐藤信顕さん(佐藤さんご提供)
今後の佐藤葬祭
――今後の展望を教えていただけますか?
佐藤:新型感染症の影響で葬儀も少人数化しているなかで、できることの範囲が限られてきています。とはいえ会社の方は無事に運営できればそれでいいですし、YouTubeはみんなの苦しみがちょっとでも減ればいいと思っているので、これからも続けていきます。
――YouTubeは佐藤葬祭に欠かせないものとなっていますよね。葬儀会社の仕事も時代に合わせて変化しなければならない部分もあるのでしょうか?
佐藤:一時期、葬儀会社の仕事ってなんだろうと悩んでいたこともありました。グリーフケア的なところに力を入れ、その場の決断を大切にするべきか。それとも段取りをきちんと立ててその通りするべきか。
でも実際皆さんが望んでいることは、「何とかしてほしい」なんです。
「何とかする」というのは、やることをちゃんとやって、安心のかたちをつくることです。そのために、段取りをしっかり立てて不安をなくすことが葬儀会社の仕事だと思っています。当たり前ですが、次に何をするかがわかるように知識が多くあると安心しますよね。YouTubeはその安心の足しになればいいなと思っています。
――佐藤さん、ありがとうございました。
<編集後記>
葬儀は遺体が処理されれば達成されるものでも、そこには人間のさまざまな想いがともないます。その想いにつき動かされて、人は集まり、それぞれのやり方で故人を弔います。
佐藤さんは、宗教は「花」だとおっしゃいます。
「花」は、一万年以上にわたって弔う人の心を慰めてきました。
宗教は、それこそ弔いをする人の心に咲く、精いっぱいの「花」なのかもしれません。
葬儀には僧侶に重い責任がありますが、一方で最後の佐藤さんの言葉からは僧侶への信頼が感じられました。改めて僧侶の役割を考え、弔う人たちにとっての「花」となれるように努力を積み重ねていきたいと思います。
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