知っておいて。誰かをサポートするとき、自分だけで解決しなくていい|株式会社LITALICO<中編>
ーーLITALICOワークスさんの提供するプログラムの内容を具体的に教えていただけますか?
田中:まずは生活リズムを整えていったり、シフトを自分で決めて組み立てることができるようにしたりしながら、自己分析もしていきます。
ある程度通うことに慣れてきたら、さらに実務的な段階に入ります。履歴書の作成などですね。あと、自分の障害ともう一度向き合って、何が得意で何が苦手なのかを見直したりもします。
また、最初にお話したように施設の外での実習にも入っていきます。企業様でのインターンをすることで実際の職場で自分の強みや弱みの発見をしていただいて、自分の就職活動の方向性を徐々に心に定めていく期間です。
ーーそれらの段階を経て実際の就職活動に入っていくんですね。就職活動はどのようにして進めていくんでしょうか?
田中:たとえば就職活動は、ご本人にハローワークや求人サイトに登録していただいて、自分で求人を見つけて応募してっていうフローでされる方もいらっしゃいます。
ご本人が見つけてきた求人に対して、僕らが直接企業様にお電話をして、「こういう方がいらっしゃって、こういう背景をお持ちなのですが、事前にお話だけでもお伺いすることはできませんか?」というかたちで推薦させていただくこともあります。
ーー採用までのサポートはしっかりしていくということですね。
田中:はい。LITALICOワークスを経て就職に至った方がいる企業様から「LITALICOワークスさんの方からまた何人か雇用に繋げたいんだけど」ってご相談をいただくこともあるんですけど、そういう場合でも京都では一度ハローワークに求人を出してもらってそこから応募して面接へという手順を踏みます。
ーー面接へは同行されるのでしょうか?
田中:ご本人と企業様がオッケーしてくだされば一緒に行きます。基本的にはご本人がお話するんですが、場合によっては僕たちが主導になることもあります。それはお相手の方の様子をみながら臨機応変に対応しているところです。
ーー就職先の業界や職種はどういったものが多いんですか?
田中:あまり特定の業界はないんです。ただ、職種は事務職が半数近くになりますね。どの企業様も一般事務の業務を切り出して、そこを割り当てるかたちで求人を出される所が多いので、業界は違えど実際の作業は似てきます。データ入力とか、封入作業とか。
でも、その他にもその会社ならではの業務や、システム関係の専門職やサービス業などへの就職もあります。
LITALICOワークスHPより引用
ーー就職が決まってからも、ご本人の体調や様子の変化を定期的に確認するなどのサポートが続いていくというお話は先ほども伺いましたが、他にはどういった支援が就職にあたって必要になってくるんですか?
田中:まず就職前には、ご本人のことについて企業様と話し合いの場を持って、「この方は、こういうところが強みで、こんな場面ではしんどくなってしまう場合があるので、こういう配慮をお願いしたい」といったすり合わせを行います。
そして就職後も定期的に企業様へ訪問して、会社のなかでの様子やをヒアリングしたり、三者面談(ご本人、企業様、LITALICOワークス支援者)をしたりします。
ーー企業側からも相談があるでしょうか?
田中:はい。たとえば、ご本人に対してどこまで言って良いのかわからないというご相談はありますね。この言葉を言ってしまったら明日から来られなくなってしまうのではないかと不安を感じてらっしゃるんです。その場合は、こういう言葉がけだったらすんなり受け入れることができますよ、とか逆にこういう形になってしまうと敏感なので避けていただいた方がいい、といったことをお話します。
一方で、前向きなご相談なんかもいただくんですよ。
とても良く働いてくださるので、この方をキャリアアップさせたいという相談や、今はパートで入ってもらってるけど、正式に契約を結ぶのに電話対応も覚えてもらいたいけどどう指導すれば良いですか?とか。
ーーそうなんですね!企業側が障害者の方を雇用することで、ポジティブな意味での気づきが生まれることもあるのでしょうか?
田中:そうですね……。社内の制度が整理されたという声を聞くことはあります。たとえば発達障害の方で、物事を複数指示されると混乱してしまうという方がいらっしゃったんです。それで、この方が作業しやすいように可視化したマニュアルを社内で作ったら、それが中途採用や新入社員の教育にも応用できて、以前よりも効果的な教育システムが出来上がっていったんだそうです。
あとは、どうしても定期通院が必要な方を採用したことで、気軽にお休みがとれるようフレックスで働けるようにならないかと社内の制度から検討してくださる会社もありました。
ーー多様に受け入れるなかでノウハウもしっかり蓄積されていくのは良い循環ですよね。では、ネガティブな相談はありますか?
田中:あります、あります。
先ほど申し上げた、「どう関わって良いかわからない」というのも一つですが、他にもご本人が働き始めてから一生懸命やってしまってその反動でお休みしがちになってしまうことがあるんです。そうなると他の方へ業務のしわ寄せがくるので困っていますというご相談はいただきますね。
こういう場合に僕らが仲介に入る場合ももちろんあるんですが、最終的には直接言えるような関係性を築いていくことが大事なので、そういう体制づくりのサポートという意識でやっています。
うまく伝えられたり、関係性を築けたらそれは企業様にとっても成功体験になります。いずれはLITALICOワークスがいなくてもうちは大丈夫だから、と言ってもらえたら嬉しいですよね。
ーーLITALICOのビジョンは、障害は社会の側にあるんだからその社会を変えていかなければってところにあるんですね。
田中:誰かが働くうえで障害に感じることに向き合い、解決していこうとすることが、また他の境遇の誰かの働きやすさに繋がっていく。こんな営みが当たり前にある社会が実現すれば良いですよね。
LITALICO のHPより引用
ーーLITALICOワークスさんの支援の姿勢からは、学ぶべきことがたくさんあるように思います。
それぞれの機関がそれぞれの役割を全うするだけでなく、繋がりあっていくことで、支援をされる側にも支援する側にもより良い環境が整っていく。それは支援の現場ばかりではなく、いろんな現場で実現されていくべきあり方なのかもしれないですね。
次回は、これからの「働く」について、田中さんと一緒に考えていきたいと思います。
他者との関わり方がわからない。それでも人間は関係性に生きている|株式会社LITALICO<後編>
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